映画『GF*BF』もっともっと観たくなる&知りたくなる!!台湾通が語る、今最もアツい台湾映画の魅力
本日、映画『GF*BF』が公開初日を迎え、映画ライター・よしひろまさみち氏、日本大学文理学部中国語中国文化学科教授・三澤真美恵氏をお招きしトークショーを行いました。
日時:6月7日(水) トークイベント13:05〜 場 所:シネマート六本木 スクリーン1
登壇者:よしひろまさみち、三澤真美恵
MC:お二人の本作との出会いを教えて下さい。
よしひろまさみち(以下よしひろ):香港に遊びに行った時に友達からこの作品の評判を教えてもらったのがきっかけで現地盤のDVDを購入したのが初めです。帰って観てみたら、あら素敵で。昨日台湾の友達に聞いてみたのですが、現地でも普段映画を観ない若い人たちが沢山観に行っていたそうです。
三澤真美恵(以下三澤):私も台湾に行くたびに、最近面白い映画ない?って聞いてみるのですが、この映画は若い人たち、高校生達が映画館に駆けつけるっていう形で話題になっていると聞きました。若い人たちが自分たちの映画をちゃんと観るというのは、2008年に台湾で公開された『海角七号』が始まりで、映画館に中学生、高校生が沢山いたのを覚えています。
2000年から2008年の間に民進党政権に変わり、もっと民主的になったと思っていたにも関わらず、非常に腐敗が目立ってしまったのですね。せっかく自分たちで民主化したのに何でこうなってしまったのだろうと人々の気持ちが落ち込んでいた時期でした。そんな中で、民主化の1つの確かな成果として、多元主義という色んな価値を認め合うということが『海角七号』の中で描かれていて、民主化のおかげで社会にそういった文化が定着したということに人々が元気づけられて、それが若者たちにまで波及したという流れがあると思います。
MC:キャストについてはいかがでしたか?
よしひろ:グイ・ルンメイは『藍色夏恋』という2002年に公開された素晴らしい青春映画がありますが、あの頃から変わらない!アラサーが高校生役ですよ。映像もアップも多かったですが、30過ぎて皺が目立たない女子は本当に稀だと思います。瑞々しいという言葉は彼女のためにあると思います。
MC:台湾の女性の美容意識というのはどうなのですか?
三澤:基本的にはノーメークですよね。塗ってもサンスクリーンくらいで。気温が暑くてお化粧をしてもすぐに落ちてしまうというのもあると思いますが。
よしひろ:日本の観光客の女の子が歩いてきたら、フルメイクだから100メートル先でも分かりますよね(笑)。ここ数年台湾にはオーガニックブームが起きていて、環境問題への意識も高いですね。食べ物も地元の物を使ってなるべく輸入物を使わないという事が定着して来ていますね。
MC:劇中では切ない三角関係が描かれていますが、お二人はそういう経験はありますか?
よしひろ:ねーよ(笑)。私は学生の頃からカミングアウトしていたので、敢えて挑んでくるような女子はいませんでした(笑)。
三澤:やっぱり現実になかなか有り得ないから映画として成立するのだと思います。
MC:台湾は同性婚制定が一番近い国だと言われていて、本作でも新しい家族の形がナチュラルに描かれていますが、実際はどうなのですか?
よしひろ:セクシュアルマイノリティーの観点ですと、台湾は2003年から台北でゲイパレードが始まって、最初から3千人が集まりました。一昨年には6万5千人が集まって、これは東京で昨年開催されたパレードの人数の約10倍です。ゲイカルチャーやLGBTの運動が盛んだと言われる所以はそこにあります。東アジアにおいては一番だと思います。
三澤:台湾におけるLGBT運動は、民主化の流れの元、貧困や障害、女性運動などさまざまな権利獲得運動が幅広く受け入れられている中で、これは取り返すべき権利の一つなのだと横並びで見てもらえる土台があるのが大きいと思います。
よしひろ:台湾には、学校でほぼ100パーセントと言っていいほどいじめが起きないと聞きました。個々を受け入れるという文化があるので、人と違うという理由でいじめが起きないのだそうです。それは素晴らしい事だなと思います。外見が違う、セクシュアリティーが違うとかその程度のことは全部受け入れられるのですよ。だから人権運動と一緒にLBGT運動が受け入れられたというのも納得ですね。あと、助け合いの精神がありますよね。電車で、おじいさんが入ってくると若者たちが「俺のところに座ってくれ」って席の譲り合いで喧嘩になるっていう(笑)、ばかばかしいような感じもしますけど、南国らしくて大好きですね。
MC:最後に、そういった背景を持っている台湾の青春映画の魅力について教えてください。
よしひろ:ホウ・シャオシェンという巨匠が作った一次ブームがすぐ下火になってしまったのですが、2000年代に入ってからその土壌で育った人たちが青春映画に活路を見出した。彼らは親の世代が日本による統治時代の話をちゃんと聞かせてあげていて、日本の文化を受け入れて育っているのですね。日本の文化のいいところをピックアップして自分たちのいいところと合わせてくれているので、受け入れやすく、見ていてノスタルジーがあるのですよね。『九月に降る風』や『あの頃、君を追いかけた』といった近頃の青春映画の佳作も、日本の漫画やドラマが劇中に普通に登場するので、日本の人たちが見ても親近感が湧くと思います。
三澤:私が魅力的に感じるのは、等身大の人間が描かれていて、自分たちのどんな過去でも受け入れて大切に表現されているところですね。
台湾文化に精通するお二人によるさまざまな切り口からの台湾映画談議に、あいにくの雨にもかかわらず集まった観客たちは熱心に耳を傾け、イベントは盛況のうちに終了した。