5月10日(土)より全国310スクリーンで公開を開始した、矢口史靖監督最新作「WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜」。初日舞台挨拶では、林業を扱いその振興に寄与した作品だとして、本作製作陣に対し、林芳正農林水産大臣より『緑の特命大使』の任命状が贈られました。

さらにこの度、文部科学省からも、「キャリア教育推進への貢献」に対する感謝状が授与されることとなり、5月22日(木)、文部科学省大臣室にて、下村博文大臣との対談及び感謝状授与式が行われました。
文部科学省では現在、『社会を生き抜く力』の一態様として、子供・若者が社会的・職業的自立に必要となる基礎能力や態度を身に付け、職業を通じて社会の一員として役割を果たすことの意義について理解し、勤労観・職業観等の価値観を自ら形成・確立できるようなキャリア教育の啓蒙のため、様々な取り組みを行っています。
映画「WOOD JOB!(ウッジョブ)」は、自分の将来を決めきれない主人公が、慣れない環境で、厳しく温かい周囲の人間たちと働く中で悩み、成長する姿を描いた点において、キャリア教育の普及啓蒙の趣旨に沿っているとして、タイアップが実現。文部科学省とのタイアップポスターを作成し、全国の国公私立高校の約1万箇所に掲示を行っていました。今回、それらの取り組みを通じて、キャリア教育の普及・啓発へ貢献したとして、大臣より矢口監督に感謝状が贈呈されました。

さらに、下村大臣と矢口監督による対談が行われ、映画の内容や将来に「夢」や「展望」を持つことの大切さや、仕事に向かう際に必要となってくる理解や経験などについて、有意義な意見交換の場がもうけられました。

矢口監督
高校を出てやることもなく、完全に宙に浮いた状態のチャランポランな男の子、勇気くんがこの映画の主人公です。その子が不意に選んだ林業の世界にお客さんも一緒に飛び込む構造で映画はスタートします。短パンにバスケットシューズを履いて、いわば山をなめた格好で、虫除けスプレーを振りまきながら山に入っていく、いい加減な若者が、村の人達と交流したり、林業の仕事を少しずつ覚えていくことによって、いつの間にか自立の道を模索するようになっていく、というお話をつくりました。ただこのチャランポランな男の子というのが、お客さんから見て荒唐無稽な人であってはいけない。身近にいそうな、あるいは自分かもしれないというくらいリアルな感じを出したかった。勇気くんは、何度も脱走を試みて失敗したからこそ村に居続けることになり、時間をかけて馴染んでいくことが可能でしたが、山の暮らしや林業というのは、非常に過酷で厳しい環境の中でのことです。肉体労働の中でも相当…。この映画を観て多くの若者に「林業最高! 村の暮らしやってみれば」というつもりは全くありません。そこにはかなりの覚悟と、慣れるための時間が必要だし、その先にようやく豊かさが味わえるようになるかもしれないけれど、そこに到達するのもなかなか大変なんですよ、ということを描かないと、きっと間違いだし失礼にあたると思ってこんな映画になりました。

下村大臣
研修というのがいいですよね。いきなり仕事として就き、この先ずっと田舎暮らしをするということだったら行きづらくても、1年間の研修であればチャレンジの機会が得やすい。キャリア教育というものを文部科学省は進めていますけれど、「経験する」ということが何より大切で、たとえ一年でも、途中で失敗したとしてもいいと思う。都会で育った子たちにとっては、田舎暮らしの良さや人と人との関係、自然の中で生きることの素晴らしさも、苦しさも大変さも、体験して初めて分かることだと思う。人工的な世界から離れ、数ヶ月でも体験すれば人生への見方が変わるのではないか、生きることに対して強くなるのではないかと思います。

矢口監督
おそらくその適性の有無は都会にいただけじゃ分からないと思います。『緑の雇用制度』を使って研修生として1年2年残っていけた子は、もしかしたら一生の仕事にするかもしれない。

下村大臣
職業の中でも林業従事者の平均年齢はとても高い。こういう映画を通して1人でも2人でも関心を持ってくれたらいいと思います。映画の効果はすごいのではないでしょうか。

矢口監督
勇気くんが駅に着いてすぐスマートフォンをダメにしてしまうところから物語が始まるのですが、情報ツールと情報がたくさんあるということが都会生活の基本ですよね。それを全部失わせたことで、主人公が裸一貫で何ができるかというストーリーがわかりやすくなりました。時々、多すぎる情報が人生の邪魔をしているんじゃないかと、ふと考えることがあります。というのは、色々な選択肢があるのに、先人の口コミや情報などをすべて調べて、今の自分に100%向いているものだけをチョイスしようとすることで、前に進む力に足かせをはめているのではないか。若いのであれば、向こうみずに、よく知らない世界に飛び込んでみて、とりあえずやってみたら自分に向いていたと後々気づくことってあると思うんです。時間をかけて実際に人と交流するなかで見つかることってたくさんあると思います。

下村大臣
文部科学省でも、私が大臣になってから47項目の改革を進めているんですよ。その中で取り組んでいるものとして「ギャップターム」があります。それは大学に、4月入学だけでなく、9月入学も導入し、高校卒業から大学入学までの半年間空白期間を設けるというものです。その間に、自然体験や職業研修、留学などの体験をすることで、次の人生選択や、勉強や学問への向き合い方が変わってくるかもしれない。それまで小さなコミュニティで過ごしていた世界から一旦離れ、新しい世界に出ることで、若者が鍛えられることを期待した改革です。

矢口監督
独立したらどんな気分になるか、という疑似体験だったり、あるいは何でも手に入る便利な環境ではない場所で暮らすことによって、生命力が鍛えられる大事な時間を過ごすことができますよね。

《最後に、全国の皆さんとインターンシップなどキャリア教育に取り組む高等学校や高校生に向けて》
矢口監督
「WOOD JOB!(ウッジョブ)」は高校を卒業していきなり社会に放り出された男の子が主人公です。その子が選んだ先がこの映画の場合林業だったということなんですけど、林業に関わらず、学校や家庭から一旦飛び出してみる、ちょっと向こうみずでもいいから全く新しいものにチャレンジしてみるというのは、人生を広げることにつながってくると思います。この映画を観ると、新しい世界って、ほんのちょっと先に広がっているんだな、という発見があると思います。自分が今住んでいる場所だけじゃなくて、その外にも無限に世界が広がっているということを知ってほしい、と思います。

下村大臣
是非この「WOOD JOB!(ウッジョブ)」を観て、チャレンジする思いをもってほしい。文部科学省はそういう人たちをバックアップしていきたいと思います。