5月10日より公開の『ヴィオレッタ』は2011年のカンヌ国際映画祭 批評家週間50周年記念映画として上映され話題となった作品。1977年、母親が実の娘のヌードを撮るという反道徳的なテーマで、フランスのみならずヨーロッパや日本でも大きな議論を呼んだ写真集「エヴァ(発売当時は「鏡の神殿」)」が発表された。それから34年を経て、被写体だった娘のエヴァ自身が監督となり、自身の体験を元に生粋の“芸術家”である母親と“普通”に生きたい娘の母娘関係を描いた作品。

この度、本作のテーマとなっている”母と娘”という特別な関係性について、カウンセラー 信田さよ子さんと、”ポイズンママ”著者 小川雅代さんによるトークイベントを行いました。

●日時:5月21日 ●場所:シアター・イメージフォーラム●ゲスト:信田さよ子  小川雅代

Q映画をご覧になってのご感想はいかがでしょうか?

信田「本日二回目で新たな発見があった。 お母さんの服装やメイクの仕方がこの人事態が近親相姦の犠牲者で、女であることをすごく意識していて、女性嫌悪、自分が女であるのも嫌だし、娘もいやだし、という想いが強い女性なんだなと思いました。ここで描かれている“母娘”関係ってとても異常に思えますが、倍率の問題で、2倍3倍に薄めると日本で私のカウンセリングにいらっしゃる方々と同じだなと思いました。本当によくできた映画だなと。」
小川「他人事ではないなと思いました。 ケースは違いますが、エキセントリックなエピソードと強烈さはすごくかぶる。 イザベル・ユペールのちょっとした狂気をやらせたらフランスでは右にでる役者はいないだろといわれている女優さんの“ヴィオレッタ”をどんどん追い詰めていくのがとても怖くて。芸術がネックになっていて、“いいじゃないか、これだけステキな写真集になって、時代もよくて、非日常の世界なんだから”と言うひとが多くて、こういったケースも似ています。
2回目観たときくらいから、うちの母親と劇中の母親“アンナ”と本当にかぶりました。二人の“異常”さ、のめり込んでいく感じがとても似ていました。」

Q母との関係に悩む女性はどのようなタイプの方が多いのでしょうか?

信田「ある時期までとてもお母さん想いで、お母さんのためならなんでもする、お母さんは私のために人生を尽くしてくれていると思っている子たちが、魔法がとけるように、これってなんだったの?と娘が気付くんですよね。母の顔みたくない、でも逃げることもできないというぎりぎりのところの人が多いですね。」
小川「私は徐々に気が付いていったんですけど、小学校高学年、中学年になって友達の家にいくと、
母親と同じようなことをしている人はいないから、私のお母さんっておかしいのかな?と思うけど今みたいに客観性がないからすごく困惑して。女優さんだからちょっと変でもしょうがないとかそういう事を言って気付こうとしているのに周りにおさえられたりもしましたね。」

Q現在こういった問題に悩まれている女性の方にアドバイスなどございますか?

信田「メディアがすごく豊かになってきているから、マジョリティが広がるには絶対ネットが必要だと思うんです。どんなツールでもいいから、自分と同じ人が少なくとも10人くらいはいるっていうことを知るのが、とても大切。同類がいるっていうのがどれくらい心強いかということを知って欲しいです。」
小川「声をあげにくい問題ですが、ネットの普及によってコミュニティとかみつけやすくなったと思うので、それと同時によくわからずお前の甘えだなんていう人もいますが、仲間がいると強くなれると思うので、そういった仲間をまず見つけるのが第一歩かなと。」