5月14日に発売されるドラマ「なぞの転校生」ブルーレイ&DVD発売記念オールナイトイベントが9日深夜、
TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、岩井俊二プロデューサー、長澤雅彦監督、俳優の高野浩幸がトークショーを行いました。

 映画監督の岩井俊二が企画・プロデュース・脚本を手がけた注目のドラマをイッキ見できる機会ということで、チケットは早々に売り切れ。会場は満席となりました。昨日、アメリカから帰ったばかりだという岩井プロデューサーは「時差ボケでいつまで起きていられるか自信がないです」と冗談交じりに切り出しつつも、「最初、企画だけをやっていたんですが、だんだんプロデュースもやるようになり、終わってみたら脚本も書いていました。これは長澤監督と二人三脚で作った作品です」とあいさつを行いました。

 本作のオファーを受けたときについて「岩井さんが『すごいんだよ。12話あるから、6時間の映画だよ』といったことを言うので、てっきり岩井さんがやるんだと思って、『面白いですね。ぜひやるべきですよ』と返したら、いつの間にか僕が監督することになった。岩井さんには借りがあるものですから、断れずにやらざるをえなくて」と切り出した長澤監督は、「みんなが岩井ワールドを期待しているからクオリティは落とせない。とにかくプレッシャーでした」と振り返ります。

 全12話で放送された「なぞの転校生」ですが、もともと最終回(第12話)は前後編の2本に分けて撮影されました。諸般の事情により、最終回放送時には前後編が1本に短縮されて放送となりましたが、ブルーレイには「岩井俊二監修 最終話完全版 前編・後編」として、本来の最終回を復活。この日の上映会では、ブルーレイに収録された「最終話完全版」を合わせた「特別版」として、本来の形となる全13話がスクリーン上映されました。

 そもそもこの最終回が長くなってしまったのは、最終回の台本を見た高野が「最終回に(父親役の)自分が出てこなくてさみしいので、『図書館に行ってくるよ』とか一言でいいからセリフが欲しいな」と長澤監督に何げなく話したことがきっかけになったと言います。「今まで何かが足りないと思っていたけど、その話をスタッフから聞いて、最後のピースがカチッとはまったような気がした」という岩井プロデューサーは、最終回に高野が意外な形で登場する、奇想天外なクライマックスを思い浮かべました。「それでようやく、この作品はこういう物語だったんだと分かった。そのアイディアをもとに最後の脚本を書き直して、喜びいさんで、現場に持って行ったんだけど、意外にみんな固まってしまって」と笑いながら振り返る岩井監督。

 とはいえ、その話を聞いた長澤監督たちスタッフは、書き直された岩井プロデューサーの脚本を前にし、「脚本は面白いよね。でもどうする?」と悩んでいたと言います。だが結局、スケジュールは変わることないのに、それでいて撮影量は倍増する、という選択肢を受け入れることになったそう。だが、当の高野は、「1カットだけいいですかねと言ったのがきっかけで、大どんでん返しとなり、撮影現場は大変でした。メイクさんや衣装さんも僕に冷たかったしね」とボヤく高野の言葉に会場は笑いに包まれました。

第1話〜5話の上映後に行われた第2部トークショーには、なぞの転校生である山沢典夫役の本郷が合流。満席の会場内を見渡し、「夜分遅くまでありがたいですね」と感激の表情を見せた本郷は、「やはり『なぞの転校生』はすばらしい作品だからこそ皆さんが集まっていただけたんだと思います。朝まで寝ずに観ていただけたら」とあいさつ。そんな彼には大きな拍手が寄せられました。

 「なぞの転校生」として不思議な存在感を見せつけた典夫の演技について「自分の中のルールに従って動いていて、感情で熱くなるような役ではなかったので、演じるのは大変ではなかった」という本郷は、「典夫の(この世界にやってきた)目的が見えてきたときからが、ドラマの見どころだと思うので、ブルーレイでひとつの物語としてまとめて観るのはとてもいいと思います」と付け加える。

 一方の高野は、本郷の演技について「この世界に来たばかりで、(この世界の人間のルールが分かっていない)“インストール前”の状態の、変な動きをする芝居が特にすばらしかった」と絶賛。それに対して本郷は「そのシーンのちょっと前に、(本ドラマの)オープニング映像を撮ったんですが、そこには岩井さんがいて。『(ドロドロっとした液体をかぶりながら)気持ち悪く動いてほしい』と。どうやればいいんだろうと思っていたら、岩井さんが実演してくれて。その動きがさぞ気持ち悪かったんです。“インストール前”の動きはこういうことなんだと思って、ヒントにさせてもらいました」と笑いながら振り返った。

 さらに「セリフは多かったですが、現場の雰囲気も良かったし、早いうちにノリをつかめたので大変ではなかった」と語る本郷に対し、長澤監督は「あるとき、長めのセリフが追加になったシーンがあったんですが、手違いがあって本郷君にそのことが伝わっていなかったことがあったんですよ。どうしようかなと思ったんですが、あっという間にセリフを覚えたんで本当にビックリました」と本郷を絶賛しました。

 そして最後に本郷は「いちファンとしても本当にすごく大好きな話ですし、『なぞの転校生』に出させてもらったからこそ、次につながった部分もあります。皆さんもこの作品を好きでいてください」と会場に呼びかけ、会場を後にしました。