イランの鬼才アミール・ナデリ監督が『ある過去の行方』を大胆解説 日本映画へのリスペクトを熱く語る
前作『別離』で2011年度アカデミー賞外国語映画賞、ベルリン国際映画祭金熊賞をはじめ90冠以上の映画賞を総なめにしたアスガー・ファルハディ監督の最新作『ある過去の行方』(配給:ドマ、スターサンズ)が現在、Bunkamuraル・シネマ、新宿シネマカリテほかにて全国順次、大好評公開中となっております。
この度、公開中イベントとして、5月3日(土)に公開劇場である新宿シネマカリテにてスペシャルイベントを開催!特別ゲストとして、本作アスガー・ファルハディ監督の大先輩に当たるイラン映画の鬼才、アミール・ナデリ監督を迎え、トークショーを実施しました。
アミール・ナデリ監督は、71年の映画監督デビュー以来、オリジナル脚本による映画制作を続け、現在はNYを拠点に作品を発表し続けています。日本映画にも造詣が深く、2011年、脚本・監督を務めた、日本映画「CUT」(西島秀俊主演)を発表し、スマッシュヒットを記録したことは、日本の映画ファンの記憶にも新しいところ。今回は、そんなナデリ監督が久々に日本の映画ファンの前に登場、ファルハディ監督とのエピソードや日本映画への熱いリスペクトを交えつつ、本作『ある過去の行方』の大胆解説を披露してくれました。
2008年の出会い以来、親子ほど歳の離れたナデリ監督に「あなたの作った道を歩いていきたい」と熱烈なリスペクトを寄せている『ある過去の行方』ファルハディ監督。実はこのイベント前夜にも電話をかけてきて『ある過去の行方』の感想をナデリ監督にせがんだそう。ナデリ監督は、「まだ本人にも伝えていないんだけど…」と前置きをしたうえで「彼は私が教えた以上に、素晴らしい作品を作った。カメラの位置も的確だし、セリフのリズムが素晴らしいので音楽がいらない。セリフの間(ま)が音楽の代わりになっている。そしてイラン人の監督が撮ったとは思えないほど、まるでフランス映画のように演出されていたことにも驚いた。」「イラン映画は歴史が深く、40年前、僕と僕の仲間が今のイラン映画の始まりを作ったけれど、現在後に続いてくれる彼のような若手がいてくれることが本当にうれしい」と率直に語った。
そして今も躍進を続けるイラン映画界について「イランでは次の世代に自分の知識や経験を全て伝えるが、僕たちの世代に全てを与えてくれたのは日本映画だった」「ファルハディ監督の世代にまで伝わる、雄弁過ぎないカメラワークや、セリフ回し、観客に解釈をゆだねる演出は、全て日本映画から僕らが学んだものなのです」と日本映画への飽くなきリスペクトを語ると、会場からは大きな拍手が。最後に「カァット!!」と撮影現場さながらの大きな声を残し、この熱いトークイベントは幕となった。
トーク中、ファルハディ監督への惜しみない賛辞や日本映画へのリスペクトに加え、日本の観客にも厚い信頼を示してくれたナデリ監督は、イベント終了後も、劇場の外でファンの方へのサインや写真撮影に快く応えてくれていました。そんな監督のホスピタビリティで、終始笑顔あふれるトークイベントとなりました。