「ウォーターボーイズ」(01)「スウィングガールズ」(04)「ハッピーフライト」(08)「ロボジー」(12)と、これまでユニークなテーマに目をつけ、日本中に笑いと感動を届けてきた矢口史靖監督が次に選んだのは、なんと“林業”! 2013年度日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した「舟を編む」の原作でも注目を集めた、三浦しをんによる、シリーズ累計70万部を超えるベストセラー小説『神去なあなあ日常』(徳間書店刊)を原作にした本作「WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜」は、ひょんなことから山奥の村で林業に従事することになった都会育ちの少年が、林業の魅力や自然の素晴らしさを通して成長していく姿を描いた、誰も見たことのない、爆笑と感動と衝撃の青春エンタテインメント作品となりました!!

映画の公開に先駆けた5月4日(日)、都内・東宝本社にて『林業女子会@東京』主催による「林業女子試写会イベント」を行いました。『林業女子会』とは、2010年に京都で生まれた有志の団体です。今回主催を務める『林業女子会@東京』は2011年秋に発足。「次世代に豊かな緑と暮らしをつなぐ」という理念のもと、巷の女子会のような手軽さで「木を使う、森に行く、木を加工する」ことを身近に感じられるような活動を定期的に行っています。今回の試写会イベントの他にも林業就業体験などを企画し、山や森で働く“楽しさ”と“厳しさ”の両面を知る機会の創出を行っています。試写会に集まったのは、林業や木や森に関心の高い男女130名。映画上映後彼らに向けて、矢口史靖監督、深津智男プロデューサー、撮影でお世話になった三浦林商の三浦妃己郎さんによるトークセッションを実施しました。

《監督:矢口史靖》
この映画は景色にしても、建物にしても、生き物にしても、多くを現地調達しました。欲しいものがほとんどその場で揃うなんて今までなかったこと。ヨキの家の前は実際には荒れた土地だったのを、制作部の男の子が、いちから耕し、水をはり、苗を植えて美しい田んぼにしたりもしました。めったにないことなので、映画の撮影ってこんなことまでやるのかと、私も驚きました。その田んぼのお米はお隣のお宅が収穫してくださり、米は『神去米』と名づけて、編集中にみんなで食べました。
これまで映画をやってきて、その影響力は大きいと感じています。「WOOD JOB!(ウッジョブ)」からも少なからず影響を受けて、自分の人生の選択肢として林業を入れる若者が出てくるかもしれない。ただ、「林業に誰でもウェルカム」という映画にしてしまうのは絶対失礼だと思いました。だから映画の中では、厳しくて危険で、村の人たちとコミュニケーションをとって共同体に受け入れられる大変さもある、ということをちゃんと描きたかったんです。ただ、きっと適性がある子もいると思う。やってみなければ分からない。1年2年続けていけるような子たちが現れ、彼らの一生の仕事になる可能性だってある。「WOOD JOB!(ウッジョブ)」がきっかけでそんなことが少しでも起こったらそれはとても良いことだな、と思います。

《プロデューサー:深津智男》
企画の初期段階の2010年から三重県の美杉町で取材をし、現地の速水林業さんなどにも潜入捜査していました。映画化が決定し、監督が「ロボジー」の公開を終えられた2012年2月頃から監督とともに美杉町に入りました。三浦林商の三浦さんとの付き合いは2013年から。その年の3月からは制作部が三浦さんの家に集団で寝泊まりさせてもらいました。
最初に三重県に入った時、林業研修を受けていた人たちの中で、次の年監督と取材に行った際に残っていた人は2人でした。その2人に監督と一緒にお話を聞いたのですが、さらに翌年、彼らは林業家として、木を切るシーンの撮影のサポートに加わってくれたんです。この映画に関わってくれた人の中にそんな人たちがいるということだけでもすごいと思います。続けていくことでできることがあるということは、この映画のテーマにちょっと近いと思っています。

《林業指導&撮影サポート:三浦林商 三浦妃己郎》
美杉町に、最初にロケハンの方々がいらした時は、見慣れないナンバーの車が来ることで、地域の人たちは怪しんだりもしました。矢口監督と深津さんも最初は農協の人間と勘違いされたり…。でもその後、映画の撮影と分かり、俳優さんたちの来訪にただ騒ぐだけじゃなく、せっかくだからおもてなしさせてもらおうということで、撮影中は村でケータリングを行ったりもしました。
今の林業は機械もたくさん入っていますが、今収穫できるのはご先祖が育ててきた木で、それらをお金に変えて食べさせていただいているという思いがありますので、今回の映画の中でその部分を描いている点が一番よかった。そのことを登場人物の口から聞けた時、涙が出ました。
今まで国や地域が色々な苦労や工夫をして林業を振興しようとしてきましたが、この映画「WOOD JOB!(ウッジョブ)」にはそれを全部飛び越えるものすごい力があると思います。今年は林業界にとってのルネッサンスだ、と本気で思っています。

トークセッションの後は、都市と地域のつなぎ手3名によるパネルディスカッションを行いました。パネラーとして参加したのは、「生きるように働く」人のための求人サイト『日本仕事百貨』を運営する、『株式会社シゴトヒト』代表取締役・ナカムラケンタさん、都市域出身の顔と、課題先進地である「地域」「東北被災地」でのコトおこしに通じた顔を持つ、組織の枠を股にかけたアグリゲーター・東大史さん、森と接点の少ない人に対し、「正しさ」「楽しさ」をベースとしたプログラムを提供する『森のライフスタイル研究所』の代表理事所長・竹垣英信さん。林業や山や森への興味にとどまらず、「働くこと」ひいては「今後の生き方」について考える有意義な試写会イベントとなりました。

《株式会社シゴトヒト代表取締役・ナカムラケンタ》
フラットに観ているつもりでしたが涙してしまいました。実はもう亡くなった叔父が津市で林業をしていたんです。映画を見終わった今、仕事のことをたくさん聞いておけばよかったとすごく思いました。
この映画はいい映画であり、さらに行動したくなる映画だと思いました。

《東大史》
一番印象的だったのはクライマックスの祭りです。日本人にとってはこんな祭りもあるだろうと普通に受け止められますが、海外の方にとっては異様に見えるかもしれない。でもあれこそ日本のオリジナルの文化伝統なのではないかと思います。勇気くんがスマホをいじっているシーンなどは、10年後に見たら風化しているかもしれないですが、祭りや林業のシーンは10年後も色褪せないと思います。日本が海外に対して魅力を発信するべき宝物がつまった映画だと思いました。

《森のライフスタイル研究所代表理事所長・竹垣英信》
林業が堅苦しく語られるのではなく、エンタテインメントとして成り立っていたことが嬉しいです。
100人いたら、100通りの楽しみ方、森への見方があると思いますが、1人でも多くの人が映画をきっかけにして、都市と森のバランスをとって仲良くなってくれたら良いと思いました。