渋谷・アップリンクでの公開に続き12月21日(土)より、十三・第七藝術劇場にて映画『SAVE THE CLUB NOON』が公開となった。

大阪市中崎町にある老舗クラブのNOONが、風営法違反として2012年4月4日21時43分頃摘発された。
「無許可で店内にダンススペースを設け、客にダンスをさせていた」との理由だったと言う。

風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)は、1948年(施行時は風俗営業取締法という名称)に出来た法律だ。60年以上前に施行された、ダンスホールで行われる売買春や賭博の取り締まりを目的とした法律で、ダンスが出来る場所を営業することは風俗営業とされ、都道府県の公安委員会の営業許可が必要と定められている。
NOONの摘発では、この風営法違反容疑で代表の金光正年さんを含むスタッフ8人が逮捕された。

NOONを救済しようと2012年7月、4日間に渡って開催されたイベント『SAVE THE NOON』。
賛同し集まったミュージシャン達がNOONの摘発によって何を考え、これからをどう生きようとしているかを語ったインタビューとライブで構成されたドキュメンタリー映画が『SAVE THE CLUB NOON』だ。

ライブ撮影を前提としたこの企画。楽曲使用料、著作権使用料、映画の製作費、宣伝費等に300万円かかるとを試算し、モーションギャラリー(クラウドファンディングのサイト)にて支援を呼びかけた。
その結果、企画に賛同した約489人ものコレクターから、目標額を100万円以上上回る、4,034,005円が集まった。こうして映画『SAVE THE CLUB NOON』は多くの人々の力によって完成し、公開の運びとなった。

初日の上映後には宮本杜朗監督、NOON代表の金光正年さん、PIKA☆さん、佐伯慎亮さんが登壇してトークが行われた。

このドキュメンタリー映画を企画した佐伯さんは、大阪で活躍中の写真家。
NOON摘発の後、ファッション誌『カジカジ』が風営法についての特集を組むことになり、金光さんのインタビューの撮影を佐伯さんが担当。写真を撮りながら金光さんが語る摘発の経緯、風営法の問題点、関西のクラブの状況を聞き、初めて身に迫るものを感じたという。

「取材の最後に『SAVE THE NOON』のイベントを撮れる人を探していると聞き、手を挙げました。友人の宮本くんに監督を依頼し、撮影に至りました」

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■音楽を奏でる場を守ろうとする意志の神輿になった金光さん
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風営法の摘発では、通常略式起訴で罰金を支払って終わる場合が多い。
摘発を受けたNOON代表の金光さんは、警察から公判起訴になったと聞き驚いたという。

裁判は2013年10月1日にから始まり、初公判は100人ほど収容できる大法廷だった。
通常の裁判で裁判官は1人だが、NOONの裁判では憲法判断が問われるため、合議審として3人の裁判官がついた。また、通常は3、4人ほどの証人を召喚して行われる証人尋問には、18人が召喚された。来年3月に判決が出るという。

「摘発されてからの一年半はミラクルの連続ですよ。23名の弁護団が結成され、計7回の公判がありました。有識者3名がついてくれ、社会学者、刑法学者、憲法学者が風営法がおかしいと証言してくれました」
刑法学者は京大の教授で、法律を作る側に廻る立場のため、証言に立つことはあまりない。慣例を排して証言台に立ったという。

金光さんは留置場で『SAVE THE NOON』のイベント開催を知った。

「“金光イコール風営法・おかしいもの”の象徴なんです。
この象徴に対してミュージシャン、DJ、PA、佐伯くんや宮本くんたち、ハコを貸してくれたオンジェム、署名してくれた15万人、映画を見てくれた人、音楽を奏でる場を守ろうとする意志が集約されていて、僕はその神輿でしかない」

ドラマーのPIKA☆さんはどういった思いでイベント『SAVE THE NOON』に参加したのか。

「この事件があったことでその法律ってなに?って気付けました。知ったから音楽で考えて行こうというというナチュラルな動きですね。
撮影から一年半経って、自分も色々変わりました。こっちから法律にタッチしていかんと。
金光さんの言うとおり、一つのクラブが違反してどうこうという映画じゃなくて、ルールとは何って考えようという動きやと思います」

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■裁判って意外に面白い!
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裁判で一番面白かったのは、お客さんのダンスだと金光さんは語る。

「検察がお客さんに『あなたは摘発時にどういう動きをしていましたか?』
お客さんも真顔で『右足を右側に移動し、移動した右足に左足を添える。左足を左側に移動して左足に右足を添えるその繰り返しです』って答えている。
『肘はどうなってましたか?』傍聴席大爆笑です(笑)」

呆れるような展開に会場は爆笑となった。

初公判では摘発時にNOONでかかっていた曲が紹介された。

「スウェードとオアシスを14分間かけたり。弁護側が音量を上げたら裁判官に怒られました(笑)」

NOON裁判は、3月頃を予定されている判決言い渡しの前に、1月9日に論告弁論が行われ、結審する予定だ。

「大阪地裁704号法廷で、うちの主任弁護士が意見陳述をするんです。裁判の議事録に基づいてトータルして、“これはおかしいと思う”と言いながら、法廷を右に左に行き来する(笑)」

2回傍聴したという宮本監督は、ドラマで見たような場面が実際の裁判でも展開されるのに驚いた。

「僕は“異議あり!”のファンですね」

金光さんは、弁護士のパフォーマンスは傍聴席に対するサービスだと解説する。

「裁判、意外と面白いですよ。良かったら皆さん、見に来てください」

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■人間の交流があってこそのハコ
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宮本監督は、被告人尋問での金光さんの証言に感動したと言う。

「今まで“いいハコを作ろうとしてやってきて、それが出来ているのか分からなかったけど、『SAVE THE NOON』というイベントがあり、映画にもなったことで、理想としていたハコ作りが出来ていたのかなと思った”と答えているのを聞いて、うるっと来てしまいました」

インターネットで音楽配信ができる現在だからこそ、クラブやライブハウスといったリアルに音楽を聴ける場所が大事だと金光さんは語る。

「音楽を奏でる人、音楽を聴く人、そこにいる人が交流出来る場が大事だと思うんです。
東京ではチャラ箱、オト箱というふたつの分け方があるけど、NOONはオト箱といわれるのはイヤ。音だけちゃうし。クラブでやっていることは音楽はもちろん。芸術、動き、アート、人間の交流がある。それが大事」

「NOONの前身は“club DAWN”だったけど、NOONになった時に名前から“club”は外したんですよね」

佐伯さんの質問に金光さんは、

「クラブの概念も取っ払いたかった。良かったらみなさん、いかがわしいクラブにも足を運んで下さい(笑)」

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■風営法やNOONだけの問題ではない日本の在り方への問いかけ
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今の日本の危うさについて、映画の中でいとうせいこうさんは「風営法やNOONだけの問題ではない」と語っている。
12/6に特定秘密保護法案が可決されたことを例に挙げた金光さんは、

「今、国が重要視しているのは犯罪抑止、犯罪防止のキーワード。聞こえはいいけど、日本の法律は、あることをさせたくない時にざっくりと広く網をかけるやり方。アメリカの法律がしてはいけないことを定めているのとは対照的」

NOONの摘発を受けてLet’s DANCE署名推進委員会が集めた『ダンス規制の見直しを求める請願署名』は、クラブの自由解放を求めているものではないと金光さんは語る。

「暴力や騒音、薬物問題があるようなクラブは元々ある法律で摘発してほしい。全体に網をかけるために“ダンスさせたから摘発”というのはおかしいと主張してるんです」

今東京で行われている規制改革会議や『ダンス文化推進議員連盟』が中間とりまとめとしての風営法改正案は、ダンスを風営法に入れたまま、営業時間や面積の規制緩和をしようとするもの。これに金光さんは異議を唱えている。

「元々ダンスは風営法に入れるべきじゃないと思っていますが、なかなか理解されなくて。
ダンスが風俗営業法に含まれたままだと一般の人が事業に参入しない。一部の事業者が既得権益の保持のために主張しているというバカバカしい内情もあるんです。
そういう改正案にならないよう、ぜひ皆さんもご協力を!」

『SAVE THE CLUB NOON』は第七藝術劇場では2014年1月3日まで、名古屋シネマテークは1月2日から10日まで。
2月8日〜21日 京都 元・立誠小学校 特設シアター、神戸 元町映画館でも2月から上映予定となっている。

日常を取り巻く社会のあり方がどう変化しているのか、熱いライブ映像を楽しみながら考えるきっかけとして、劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。

(Report:デューイ松田)

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