映画と中目黒をもっと好きになっていただくために生まれた、無料の映画&トークイベント「ナカメキノ」。“中目黒の街”を舞台に、月に1度、素敵なゲストをお招きして無料の映画&トークイベントを実施、映画と中目黒をより楽しく体験いただける場をご提供しています。
 9回目を迎えたナカメキノ。今回の上映作品は、原作が1999年に刊行され、あの「ライ麦畑でつかまえて」の再来と絶賛、全米で社会現象にもなった青春小説の映画化作品=『ウォールフラワー』です。『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』のローガン・ラーマン、『ハリー・ポッター』のハーマイオニー役を演じたエマ・ワトソン、『少年は残酷な弓を射る』の衝撃的な演技で話題沸騰のエズラ・ミラーら、ハリウッドが注目する最旬の若手スターたちが終結した、青春映画の傑作。11/22(金)の公開に先駆けて、「ナカメキノ」にやってきました。
 そして今回のナカメキノはいつもの開催地「中目黒」を飛び出して、二子玉川のアートイベント「二子玉川アートデポ」(公式サイトhttp://futakotamagawabiennale.com/)にて出張開催いたしました。昨年の「二子玉川ビエンナーレ」から生まれたこの「二子玉川アートデポ」は、二子玉川ライズで2日間に渡って開催される参加型のアートイベント。「未完成の魅力」をテーマにした本イベントにて、不完全で未完成だった青春時代を描いた『ウォールフラワー』をご覧いただくのは、ナカメキノが目指す地域に根ざした「映画“体験”の場」として、より多くの方の思い出に残る機会を創出できるのでは?という想いから、今回のこのコラボレーションが実現しました。また毎回大好評をいただいている上映前後のトークイベントには、松江哲明(映画監督『フラッシュバックメモリーズ3D』他)、花くまゆうさく(イラストレーター、漫画家)、山内マリコ(作家)、中井圭(映画解説者)と多彩なゲストが登場しました。

二子玉川ビエンナーレ実行委員会 代表 中田綾さんコメント 「二子玉川ビエンナーレのコンセプトは「子供のココロに芸術を」です。子どもたちにアートを身近に感じてほしいという思いと、イベントを通して子どもと地域社会がつながり、引き出しの豊かさにつながってほしいとの思いでスタートしています。今回のアートデポは幅広い世代に向けて発信する新たな試みとなります。 私たちの活動は「アート」を軸としていますが、ナカメキノが映画を愛し、地域をつなぐ活動に共感したところから今回ご一緒するきっかけとなりました。」

【上映前トークショー】
松江:僕はエマ・ワトソンが好きで。すごく綺麗になりましたよね。ドイツや韓国に行った時に向こうの映画館で上映されていて、早く観たいなと期待が高まっていたときに試写状が来たんですが、期待以上の作品でした。この作品は映画人の中でも期待でザワつかれていましたよね。今日はこんな特殊な環境で観られるなんて、なかなかないですよね!
花くま:リアルタイムで名作誕生に立会っている!という気持ちで観ていました。僕は40歳を越えましたが、もし高校生のときにこの映画を観ていたら、影響されてその後行動して大やけどしてただろうな、と。山本太郎みたいに突然手紙を渡して好きな人に告白しちゃうみたいな。(笑)
松江:人生において、何かしたいという映画ですよね。
山内:女子はエマ・ワトソンが可愛いかどうかというより、エズラ・ミラー目的で観る子も多いのかな、と。私は「男の子の青春」から年々遠ざかっているので、(エズラ・ミラーの劇中の苦悩に)「そんなの知らないよ!」と思って観ていましたけど。(笑)
花くま:映画のタイトル『ウォールフラワー』の由来と同じで、若い時にパーティーで踊れなかった僕達のような人種が、一歩勇気を踏み出すところにジーンときました。僕もあの頃勇気を出せば…と。
山内:「壁際の花」って女性に使う言葉だと思っていたんですけど、本作の監督(男性)の実際の話を脚本にして自分で映画を撮っている、という渾身の一本なんですよね。
中井:『建築学概論』や『あの頃君を追いかけた』のような、青春映画が今年は何本も上映されて「あの頃ブーム」だった中で、『ウォールフラワー』は今年を締めくくる「あの頃映画」かな、と。何かしらあの頃の自分を想い出す部分が出てくると思いますので、自分を重ねて観てほしいですね。あと音楽もすごく良いので聞いてほしいです。
花くま:過去に何かがあって引きずっている人が、今映画をつくれる人になってこうして映画をつくり、あの頃の想いを浄化しているんですよね。後悔を乗り越えたその先を描いている作品。あと、良いダンスシーンがある映画は良い映画ですよね!そこも必見!!
松江:ダンスシーンはすごく大事ですよね。過去、自分は出来なかったけど、映画の中では上手くやるんだ!ということですからね。

【上映後トークショー】
花くま:やはり自分から行動を起こすことが大事ですよね。生まれ変わったら自分から一歩踏み出す勇気が持てたらな…。映画のような充実した高校生活をおくりたかったですね。
山内:「リアルな17歳」って恥ずかしいし、惨めだし、一歩踏み出せない。でも、しょぼくてイケてなくても、それが本来の青春のあるべき姿。だから『ウォールフラワー』は大人が「こうだったら良かったのに、、」という世界が描かれているなと感じました。一方でこの映画の原作は監督が書いた自伝ということで、監督に実際にあったことを文章でも映画でも再現したんですよね。すごく楽しかった気持ちをもう一度再現したかったんだろうな。いわゆる監督はこの青春の囚人なんですね。
花くま:やっぱり「一歩踏み出さなきゃ」というメッセージだよね。リアルな青春真っ盛りの若者は一歩踏み出せないことが多いから。
中井:自分が思い描いている過去はファンタジー化されていることが多くて、この映画はそんな描かれ方かなと。監督が十何年経ってから自伝的物語を監督するというのは、結局自分自身で消化しなきゃいけないと思ったんだと思います。あと、やはり音楽の使い方は上手ですよね!ザ・スミスの「アスリープ」という曲は「僕はもう独りじゃいられない」という孤独を延々と歌っている曲だったり、デヴィッド・ボウイの「ヒーローズ」は流れる歌詞を良く観てみると「僕たちは一日でも一緒にいればヒーローになれる」と歌われていたり、歌の流れと一緒に映画がつくられているんですよね。文学では出来ない、映像ならではの作り方ですね。
松江:僕は、何で女の子ってこんな男と付き合っちゃうの?と思うことがあるけど、、そんな過去を想い出しました。(笑)「こんなに良い子なのになんでこんな男の子と付き合うの?」とか、「そういう子って何でたまに優しいの?」みたいなこととか。
山内:エマ・ワトソンのファム・ファタールぶりもスゴかったですね!女の人って男の子とか気持ちが沈んでる子を励ますのが好きなんですよ。でも手を差し伸べると、男の子達は「俺のこと好きなのかな?」と青春になってることありますよね。劇中では、エズラ・ミラーが顔や声の良さだけじゃなくて、ヘビーな想いをしている青春の葛藤が伝わってきてすごく良かった。学ランを着た男の子達に観て欲しいですよね。青春で一番美味しい想い出を味わった人は大人になったら辛いけど、でもこの映画を作れたのだから良かった。
花くま:行動しないでネットだけで色々と書いてるキーボードウォリアーじゃダメなんです!
松江:前半はチャーリーが一歩踏み出して周りを救い、後半はチャーリーが救われるというお話で、「人と関わる」というテーマは普遍的で良いなと思いました。
中井:最初はチャーリーに欠けているものがあって、何か欠落しているという見え方なんだけれど、作品が進行するにつれて、恵まれている周りの人も実は欠落している部分があるということ。人はだれでも欠落していて、お互いを支えていくことで欠落を埋めていくことは素晴らしいことなんだ、と描いていますよね。
松江:そうそう。女の子の気持ちが嘘だから悲しい、じゃなくて嘘で良いんですよね。
中井:その現実を良く分かっている。これがファンタジーであることが分かっていて、それを肯定しているんですよね。
松江:日本映画はストレートだけど、引いている視点がこの映画にはあるんですよね。トラウマを描いてチャーリーがどうやって乗り越えるかという映画じゃなくて、キラキラして3人の関係が描かれる、そういう作品で良いかな、と思います。この映画は年代によって見方が変わるし、10代、20代、30代、初めて観た年齢でどういう出逢い方するのかで、この映画の感想が変わると思いますね。今日は野外上映というこんな素晴らしいこの映画との出逢いがあった。今度は映画館やDVDで観て、また人に勧めて、そんな風に広がると良いなと思います。みんなが感動した、泣いたというよりも、自分が感動したものが少しずつ広がると良いですよね。
山内:少年に対して厳しくなっているので(笑)もう少し心広くもとうと反省しました。リアルにイケてない男の子がこの映画に出逢って救われたら良いですね。10代の子に観て欲しい。一歩踏み出して勇気をもらうこの映画の正しい在り方かなと思います。
花くま:何もしないよりは失敗しても良いんですよね。僕は、踊れるようになります!
中井:エマ・ワトソン史上、一番可愛いです!