現在、全国80館と公開規模拡大中の「凶悪」が、先週末に興行収入1.6億円を突破。日本社会の暗部を真正面から描いた作品が、若い世代を筆頭にきちんと鑑賞され支持されているこの状況は、もはや映画界におこった”事件”といえる。そんな映画「凶悪」を陰ながら支えた方を招くトークイベント第2回目のゲストは、ピエール瀧演じる須藤の舎弟・五十嵐役を演じた小林且弥。小林は、白石監督1作目の「ロストパラダイス・イン・トーキョー」で主演を務めている。白石監督と本作を絶賛するドキュメンタリー映像作家の松江哲明監督を交え、熱いトークを繰り広げた。

【日程】10月18日(金)
【場所】新宿ピカデリー
【登壇者】小林且弥、松江哲明監督、白石和彌監督

小林は、「現場では笑いが絶えなかったですね。瀧さんとリリーさんが2人で”どうぶつの森”というゲームをしていて楽しそうでした」と振り返るも、「(撮影内容は)酒を飲ませたり、叩いたり、味噌汁ぶっかけたりと、感覚が狂う感じでした」と楽しいに相反して狂気づいていたことを明かした。原作も何度も読んでいた松江監督から、「五十嵐は原作と映画で一番変わっていますね」との質問が投げかけられると、「原作では何人も舎弟がいたのですべてを描くと収拾がつかなくなると思い、五十嵐に統合しました。須藤の復讐を煽るためには五十嵐が必要だった」と白石監督は小林演じる五十嵐のキャラクターの立ち上がりと重要性を説いた。さらに、「ロストパラダイス・イン・トーキョー」の打ち上げの際に、「監督は男くさい映画をとるべき!最近、『殺人の追憶』のような、何が起こっているんだろう?と覗き見したくなるようなエンターテインメントが少なくなってきている。白石監督ならそういう作品が撮れるのではと思ったんです」との小林の言葉が白石監督の背中を押したことを明かした。そして、その重要な役割を任された小林は、「役者は整合性を求めるんですが、この映画は何を正解とするのかが難しく、白石監督にはそれが見えていた」と、白石監督に信頼を寄せて演じ切ったという。本作は”映画関係者ですら気軽におすすめできない映画”として話題になっていた通り、息抜きすることができない内容となっている。そんな中、小林演じる五十嵐と酒を飲まされ殺される電気屋の牛場とが釣堀するシーンに「ほっとする。キャラクターが膨らみますよね」と、松江監督は五十嵐の出演シーンの重要性を語った。

最後に、「『凶悪』は日本映画が得意とすること、懐かしい匂いがしていい意味で歴史を引きずっている面白い映画です。役者さんが本当に面白い。その力を発揮出来る場であり、役者さん自身がこういう作品に出たいと思っているのではというのが作品を観て伝わってきました。そして、きちんとヒットしていることが素晴らしい」と松江監督は絶賛。それを受け、「こういう映画がヒットしなければ、日本映画は枯渇していく一方です。今後も『凶悪』の応援を宜しくお願いします」(小林)、「ヒットしたことが日本の映画業界を盛り上げられたら」(白石監督)と、日本映画業界の未来を背負った映画をつくりあげたことをを自負していた。