■セリフについて

監督「全員本気!太郎さんの演技見たら、皆泣くよ!(姪のお見舞いに行く病室のシーンだとか、)スタッフが泣きながら撮影していました。どういう思いでやっていたんですか?」

山本「予算が少ないギリギリの映画で、思いのあるスタッフが結集した。『お金じゃないんだ。これがやりたいんだ』と。そして、地元・湖西の方々がバックアップして下さって、なんとか成立した映画。

他の作品であれば、新たに役作りがどうのこうのというようなことが発生するのかもしれないですけれど、普段自分が思っていたりだとか、本当に心から伝えたいメッセージの連続が台本に書いてあった。気持ちとしてはそのまんま。」

監督「前の日に、『監督、セリフ増やしてもいいですか?これです』って見せてもらったら、どわーって倍くらい書いてあって、『この人、本当に真剣にやってくれてるな』と思った。」

山本「『朝日のあたる家』がどういう映画かわかって見に来てくださっている方々には、人と人との人間ドラマというのは、映画のストーリーだから、予測がつかないけれど、情報・ンフォメーションとしては、基本情報として僕が言っていることは、皆さんが重々ご存知のことだと思うんですけれど、国から発表された情報しか知らない、誘われて来た人たちに対しても、映画の中から伝えられるメッセージがあるんだろうなと思って、『これはもう、セリフを付け加えなくてはあかんな』と思った。
『これ書き過ぎたかな?』って思ったんですけど、『どうぞ』って監督がOK出してくれて。でも、共演者の方(並樹史朗さん)がどう思うかなと思ったんですけれど、受け入れて下さいました。」

監督「『いや、構いません。』って。やっぱあの人、すごい人だなーと思った。」

山本「役者にとって、『改訂入れました』っていうのが、一番面倒くさいんですよ。深作欣二監督の『バトル・ロワイヤル』の頭に、追加のセリフでテンパって、本番でやった時には、100%の力を出せなかったんですよ。その時、監督が気づいて、カンペを書いてくれたんですよ。映画の現場で、カンペなんて使っていいの?って思うじゃないですか。でも、『恥ずかしがるな』って。『丹波哲郎だってこういうことしてたんだから』って。『どこがいいんだ?』『もうちょっと右に』なんて僕も乗っちゃって。それ位、セリフの変更っていうのは、役者にとってプレッシャーがかかるところだと思うんです。しかも、急な変更っていうことは。だから、『並樹さん、これだけ変わりました』っていうことを前日に見せたのは、結構しんどかったと思うんですよね。でもそこを対応してもらえるっていうのは、ベタランの方は違うなって思いました。」

監督「自分で前の日に書いて、倍になったものを、1回も間違えなかった。あのシーンはワンシーンワンカットなんですけれど、一発OKだったんですよ。」

山本「気持ちが高ぶるっていうところは、ワンシーンワンカットで撮ってもらえる方がありがたいんですよね。『じゃあ、またカット変えます』『ではまた変えます』って言われて、どうやって気持ち繋げていくねんって。もちろんそういう仕事だから、繋げていかなくてはいけないんですけれどね。そのテンションを保ったつもりでやらなくてはいけないんですけれど、太田監督は役者の生理というのをよくわかっていて、こういうシーンは、ワンシーンワンカットでカメラ4台で(撮って頂けました)。4台回っていれば、いろんな方向から押さえてもらっているから、いちいちカットを変える必要ないじゃないですか。撮った後に、『もう一度こちらからお願いします』って言われると、げんなりなんですよ。そういうシーンじゃないんで。そういうところの監督の気遣いが現場でも感じられました。」

■待ち時間の”山本太郎講座”について

監督「待ち時間に太郎さんが、若い子たちに、放射能講座をしていましたね。『これ食べたらあかんで』とか『これ気ぃつけな』とか。」

山本「放射性物質を取り込みやすい食品っていうのがあるじゃないですか。ちょっと話していたら、あまり情報に触れていなかったみたいで、せっかくそこで出会ったから、映画を作る以外にも何か意味があると思って、気をつけた方がいいっていうことは言いました。」

監督「若い子たちって、そういうのを知る機会がないんで、そういうのを太郎さんが言っていると、皆聞きたいと思うし、話も面白いし。『そうやったんや』って、あれからあの子たちも気をつけるようになった。危険性や原発のこともあるけれど、これからのことも、太郎さんのような人が言ってくれるとわかりやすい。」

山本「出演者の中に、ホットスポットの近くに住んでいる子がいて、『友達からメールが来てたんですよ、「鼻血が止まんなーい」とか言って』ってすごく普通のことのように言っているから、『それ普通じゃないよ』っていうところから始まっていったんですけれど。自分でケアしていかないと。国、責任取らないですもんね!?びっくりするくらい。やりっぱなしですもんね?基準だけ上げて、『OKです』とか言っているような世の中なんで。だから一人一人が生きるっていうことに対して、自分自身を守るっていうことに対して、もっと意識的にならないと危ないんだっていうことを伝えました。」

監督「太郎さん演じる伯父さんが姪を見舞いに行くシーンはすごかった。あの言葉がこの映画のテーマなんですよ。それを見事にやってくれた。」

山本「この映画の、この役のために、僕、この2年半活動していたような感じです。2年半役作りできているから。普通だったら、台本もらって1週間だとか、何日間だかわからないですけれど、仕事の入り具合によって、その役と何日間向き合えるかっていうのがあると思うんですけれど、僕の場合、2年位の期間、こういう事柄に対して自分なりにやってきたんで、自分がそこに乗っかるだけ。監督に書いて頂いたセリフに、監督が要求される演出に、僕は身を任せるだけ。何よりも、この映画、監督がいなかったら成立しなかった。こういう映画はお金が集めづらい。こういう作品を作ってしまったら、プレッシャーじゃないけれど、この次の作品難しくなるんじゃないかなとか色々考えませんでした?」

監督「いやいや、今日は監督を褒める会ではないんで。詳しくはパンフレットがあるので!」

山本「向こうで売っていますからね!お帰りの際にぜひ!」

監督「最後に一言。」

山本「嫌がられていたのに、この映画がなぜ全国18館まで広がったか。もちろん作品の出来が素晴らしいというのもありますけれど、それだけじゃなく、『この映画を上映してください』っていううねりが起こったんですね。だからこそ、ここまで広がった。このうねりっていうのは、僕たちが何かアクションを起こせば、必ず返ってくるものがあるんですよね。

今止めなくちゃいけないもの:原発。もちろんそうです。でも、全ての情報を遮断するっていう法案が秋に通るんですよ。秘密保全法。これが通っちゃったら、権力者が秘密にしたいこと、何でも秘密にできちゃうんです。これを今全国キャラバンで、北海道から沖縄まで、人が多いところでしゃべっているんです。国会の中では、決着がもうほぼついちゃっている状況です。始まる前に。これをひっくり返せるのは、一人一人が地元選出の国会議員に対して、FAX・メールで『秘密保全法反対!反対していただけなければ、次の選挙では応援できません。」“次の選挙を応援できない”と地元の有権者から言われる程辛いことはないんですよね。このマジックワードをキーワードに、みんなでプレッシャーをかけていって、国会が始まる前までに、1万、2万っていうFAX・メールが各事務所に届くようなアクション、皆さんも参加してもらえないですか?情報がないっていうのが一番恐ろしいじゃないですか。その恐ろしさを、僕たちは原発事故で知ったと思うんですよね。そして、今からこの映画を見たら、その内容がわかると思います。詳しくは、僕のホームページ『今はひとり』(http://taro-yamamoto.jp/)でこのチラシ、ダウンロードできます。そして、amebloで、『山本太郎』で検索して頂ければ、このことがざっくり書かれていますので!

“映画の宣伝に来たのに、また政治的な発言しやがって!”でお馴染みの、山本太郎でした!」