●男優賞は、『ネブラスカ』でアメリカ中西部の頑固親父を見事に演じ切ったブルース・ダーンが獲得!

 男優賞は、23日(木)に正式上映されたアレクサンダー・ペイン監督のロード・ムービー『ネブラスカ』に主演したアメリカのブルース・ダーンが獲得。1936年生まれの彼は、アルフレッド・ヒッチコック監督の遺作『ファミリー・プロット』(1976年)やジョン・フランケンハイマー監督の『ブラック・サンデー』(1977年)、ハル・アシュビー監督の『帰郷』(1978年)等で知られる性格俳優で、娘は女優のローラ・ダーン。また、1974年版の『華麗なるギャツビー』では、デイジーの夫であるトム・ブキャナンを演じ、1982年の『栄光の季節』でベルリン国際映画祭銀熊賞(男優賞)に輝いている。
 今回の『ネブラスカ』でブルース・ダーンは、頑固で寡黙な老人を好演、実に味わい深い演技を披露しているが、既に帰国の途にあったため、授賞式および受賞者会見には監督のアレクサンダー・ペインが代理で登壇した。「もしブルース・ダーンがこの場にいたら『この映画でこの役を演じられたことを誇りに思う』と語ることでしょう。彼はきっと審査員と観衆に感謝し、私にもお礼を言ったでしょうね。私はこの映画を彼と一緒に取り組め、私も彼の誇りを共有します。また今年のオフィシャルセレクションに選ばれたことも私にとって大きな誇りです」とコメント。受賞者会見ではブルース・ダーンの娘ローラの携帯メールを読み上げた後、ペイン監督は「これまでに彼が演じてきた大役を私は覚えていますが、今回の役のために忘れねばなりませんでした。彼は素直に動いてくれ、私に全信頼を寄せてくれました」と述べ、ブルース・ダーンを誉め讃えた。

 “長編コンペティション部門”以外の各賞の受賞作は以下の通り。


☆短編コンペティション部門:パルムドール

『セーフ』:監督ムン・ビョンゴン(韓国)

☆短編コンペティション部門:特別表彰

『ホエール・ヴァレー』監督グドムンドル・アルナー・グドムンドソン(アイスランド)
『37°4S』監督アドリアーノ・ヴァレリオ(イタリア)

 審査員を務めたのはニュージーランドの映画監督ジェーン・カンピオン(審査委員長)以下、総勢5名で、彼らはシネフォンダシヨン部門の審査も同じく担当した。ちなみに3枚目にアップされている写真は、短編コンペティション部門の受賞者会見の登壇者3人で、左からアドリアーノ・ヴァレリオ監督、ムン・ビョンゴン監督、グドムンドル・アルナー・グドムンドソン監督。


☆カメラドール(新人監督賞)はシンガポールのアンソニー・チェン監督が『イロ・イロ』で受賞!

 オフィシャル部門、併行部門の垣根を越えて、監督処女作を対象とする“カメラドール”は、シンガポールの29歳の新鋭監督アンソニー・チェン監督が獲得した。受賞作の『イロ・イロ』は、“監督週間”部門で上映された作品で、審査員を務めたのはアニエス・ヴァルダ監督(審査委員長)以下の総勢7名。

 また、高等技術院(CST)が技術者を対象にして選出する“ヴァルカン賞”は、チャドのマハマット=サレー・ハルーン監督(2010年に審査員賞を獲得!)のコンペ作『グリグリ』のアントワーヌ・エベーレ(撮影監督)が受賞した。この他にも映画学校の学生作品を対象とするシネフォンダシヨン部門では1位〜3位までの賞が決められたほか、全キリスト教協会が選ぶエキュメニック賞なども選出された。また、併行部門の“批評家週間”と“監督週間”でも、それぞれ各賞を与えている。
(記事構成:Y. KIKKA)