快晴となるも強風が吹き荒れた23日、“カンヌ・クラシック”部門では、小津安二郎監督の『秋刀魚の味』(1962年)、ジャン・コクトー監督の『美女と野獣』(1946年)、そしてコクトーにオマージュを捧げた仏女優アリエル・ドンバールの監督作が上映されている。


◆『隕石とインポテンツ』が短編コンペティション部門に選出され、正式上映を明後日に控えた佐々木想監督

 一昨年、日本映画としては46年ぶりに短編コンペティション部門に選出された田崎恵美監督の『ふたつのウーテル』に続き、今回、この部門に参加することになったのが佐々木想監督の『隕石とインポテンツ』(英語タイトル「Meteorite + lmpotence」)だ。昨年の夏に構想し始めたという本作は、経産省の人材育成プロジェクトに企画を提出し、助成を受けた作品で、製作費は150万円、2日間で撮り上げた。
 2013年、地球に異常接近した超巨大隕石が不可解な滞空を続けていた。男はもう、何年も妻を抱くことができなかった。完全に自信喪失した男は、再び立ち上がることができるのだろうか……。本作で脚本&編集も兼務した佐々木想監督は、1978年、山口県生まれ。早稲田大学在学中に、流山児祥の劇団で役者となり、2004年から自主制作映画を撮り始めた。これまでの作品には、ぴあフィルムフェスティバルに入選した「LEFT OUT ぴゅーりたん」(2009年)、カナダで撮影を敢行した「A Biginning はじまり」(2011年)などがある。
 奇想天外な設定も韻を踏んだタイトルも実にインパクトがある『隕石とインポテンツ』は、震災を隕石に象徴させ、現代日本の状況を描いたという。主演は佐々木監督と同様、流山児祥に師事した筑波竜一が務めている。世界から10作品が選ばれた短編コンペティション部門の正式上映は25日だ。


◆デジタル・リマスター化した小津安二郎監督の名作『秋刀魚の味』が、“カンヌ・クラシック”部門で上映!

 過去の名作の再発見、修復された偉大な作品のお披露目などを目的とし、2004年より設置された“カンヌ・クラシック”部門は、文化遺産としての“映画”のショーケース(昨年は、この部門で木下惠介監督の『楢山節考』が上映されて大好評だった)となっている。今年は、小津安二郎監督の名作にして遺作となった『秋刀魚の味』(1962年製作)のデジタル・リマスター版のワールド・プレミア上映が、16時半からパレ・デ・フェスティバル内にある中規模会場ブニュエルで行われた。
 本作は、男手一つで育て上げた愛娘を嫁に出す父親(笠智衆)と嫁いでいく娘(岩下志麻)の心情を細やかに描き出した情感あふれる家族ドラマで、共演は佐田啓二、岡田茉莉子、東野英治郎、杉村春子、加東大介ら。
 その上映前には、本映画祭ディレクターのティエリー・フレモーの挨拶に続き、小津映画の大ファンだという2監督、ジャ・ジャンクー監督と是枝裕和監督(ともにコンペに参戦!)が登壇。短い時間ながら、ともに敬愛する小津安二郎と監督作品、そして本作に対する想いを語った。なお、4枚目にアップされている写真は、『秋刀魚の味』の上映前に行われた日本人記者向け懇談会の時の模様(左からジャ・ジャンクー監督、ティエリー・フレモー、是枝裕和監督、ジャ・ジャンクーの妻でもある中国の女優チャオ・タオ)。
(記事構成:Y. KIKKA)