映画祭も後半戦に突入した7日目の21日(火)、本日も晴れ! “コンペティション”部門では、スティーブン・ソダーバーグ監督の『ビハインド・ザ・キャンデラブラ』とイタリアのパオロ・ソレンティーノ監督の『ザ・グレート・ビューティー』が正式上映され、“ある視点”部門には、フランスのベテラン女性監督クレール・ドゥニによる『バスターズ』など3作品が登場。“カンヌ・クラシック”部門では、ハル・アシュビー監督の『さらば冬のかもめ』(1973年)、ジョゼフ・L・マンキウィッツ監督の『クレオパトラ』(1963年)とドキュメンタリー2本が上映されている。“シネマ・ドゥ・ラ・プラージュ”には、スティーヴン・スピルバーグ監督の大ヒット作『ジョーズ』が登場!


◆マイケル・ダグラスとマット・デイモンの共演で実話を映画化した『ビハインド・ザ・キャンデラブラ』

 1989年の監督デビュー作『セックスと嘘とビデオテープ』でいきなりパルムドール(史上最年少受賞!)に輝いた後、三大映画祭の常連となり、オスカーも獲得したアメリカの売れっ子監督スティーヴン・ソダーバーグ。カンヌのコンペ参戦は前述の『セックスと嘘とビデオテープ』、『わが街 セントルイス』(1993年)、2部作『チェ28歳の革命』『チェ39歳 別れの手紙』(2008年:ベニチオ・デル・トロが男優賞を受賞)に続き、今回で4度目となる。
 『ビハインド・ザ・キャンデラブラ』は、ド派手なキンキラ衣装とパフォーマンスで一世を風靡し、悪趣味の代名詞とも言われたアメリカの天才人気ピアニスト、リベラーチェ(1919〜1987)と、年下のゲイの愛人スコット・ソーソンの6年間の愛憎関係を描写したHBOのTV映画で、原作はスコット・ソーソンの同名回想録。
 特筆すべきは、齢68歳の名優マイケル・ダグラスの弾けっぷりだ! 喉頭ガンの闘病後にもかかわらず、大胆な同性愛シーンもあるリスキーな役柄に果敢に挑んだ彼の気概に圧倒される傑作で、愛人役のマット・デイモンの演技もあっぱれだ。

 11時から始まった本作の公式記者会見には、スティーヴン・ソダーバーグ監督、製作総指揮のジェリー・ワイントローブ、脚本家のリチャード・ラグラヴェネーズ、リベラーチェを熱演したマイケル・ダグラス、スコット・ソーソン役のマット・デイモンが登壇。
 希代のエンターテイナーであったリベラーチェについてマイケル・ダグラスは、「12歳の時、パームスプリングスで彼本人とすれ違ったことがある。私は父(カーク・ダグラス)と一緒にいたんだが、彼は宝石類を山のように着けていたので、太陽の下で光り輝いていたよ。彼はエルトン・ジョンのようなスターの先駆けだったんだ」と述べ、さらには「リベラーチェを演じてみたらと初めてソダーバーグ監督に言われたのは、『トラフィック』(2000年)の撮影中。それから7年ほどして、監督が原作本を見つけ、脚本家を雇った。今、こうやって実現したのは、僕にとって最高のプレゼントだ」とコメントし、彼のガン治療を待っていてくれた監督に感謝したマイケル・ダグラスは思わず涙ぐみ、声を詰まらせた。
 ソダーバーグ監督と組むのは今回で7度目となるマット・デイモンだが、彼の母親はピアノ演奏が得意でリベラーチェのファンだったそう。ダグラスとの濃厚なラブ&キスシーンについては、「これでシャロン・ストーン、グレン・クローズ、デミ・ムーアらとの共通点ができたよ(笑)。出演作を決める時は、いつだって100%監督で決めるんだ。脚本もないのに、その監督を信頼しているから出たことさえある。今回は監督がスティーヴンだし、脚本も素晴らしかった。抵抗なんて何もなかったね」と語り、さらには「テクノロジーの進化はすごいね。サイトが立ち上げられ、子供を寝かしつけた後に今日撮った分をiPadでチェックできるんだから。俳優として、これらの情報にアクセスできて本当に助かったよ」とコメント。
 一方、売れっ子ながら今年のベルリン国際映画祭に出品した『サイド・エフェクト』を最後に劇場映画監督の引退をするとの噂があるソダーバーグ監督は、「この後は長い休暇を取るつもりでいるんだ。いつまで休むかは決めていない。24年前にここに来た時は、まだ髪があった(笑)。そこから今までの道のりは、素敵だったよ。あの映画は、2人の登場人物が同じ部屋にいる話で、今作もそうだ。スタイルは幾らか進歩したと思う。演出も当時と比べてより明確でより直接的になった。本作が僕の最後の作品になったとしても満足だし、大きな誇りを感じているよ」と語った。


◆自伝色の濃い『ア・キャッスル・イン・イタリー』でコンペに参戦したヴァレリア・ブルーニ・テデスキ!

 昨日、正式上映された『ア・キャッスル・イン・イタリー』の公式記者会見が12時半から行われた。本作はイタリアで出会った男女のラブストーリーに、崩壊していくブルジョワ家族の運命を絡めてコミカルに描き出した人間くさいドラマだ。
 公式記者会見にはヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、プロデューサー、2人の共同脚本家ノエミ・ルヴォフスキーとアニエス・ドゥ・サシー、そして共演者のルイ・ガレル、フィリッポ・ティーミ、グザヴィエ・ボーヴォワ、マリサ・ブルーニが登壇。
 ヴァレリア・ブルーニ・テデスキは自ら演じた不器用なヒロインについて「私自身、不器用な人生を送ってきましたし、アンバランスな感覚を持っています。演技の授業で、片方だけの足を洗うことで、面白い動きになること、アンバランスさを感じさせてくれたことを思い出します。アンバランスがショーを作るのです」とコメント。
 兄役を演じたフィリッポ・ティーミが「ヴァレリアは天分のある監督です。彼女は見たくないものや忘れたくないものに怖れることなく導いてくれるのです」と述べると、女優としても知られるノエミ・ルヴォフスキーは、脚本の変更について「ヴァレリアは常に書き続けています。フィリッポ・ティーミが演じた人物は、自分の周りにいる女性たち皆と肉体関係を持っていますが、これは、当初にはなかったもので、後に膨らませたイメージなのです」とコメント。
 かつてヴァレリアと実際に恋仲で、自身とかぶる役柄を演じたルイ・ガレルは「脚本を読んだ時、これは自分たちの話ではないなと思いました、僕達は自らを演じるのではなく、別の場所で起こることを演じています。ヴァレリアの初監督作を見た時、まだ彼女を知りませんでしたが、それでよかったと思っています。僕は宝探しゲームのように考え、誰の人生なんだろう、誰が作ったのだろうと思い巡らせました。長い間において、もし、映画が少しも自伝的要素を含んでいなければ面白いと感じ無かったでしょう。この映画の中に生きたい、部屋から出たいと思わせて欲しいのです。すごく不自然だと、不安になりますしね」と語った。
(記事構成:Y. KIKKA)