映画祭2日目の16日(木)。朝は激しい雨が降って寒かったが、のちに晴れ。その後に小雨模様となった本日、“コンペティション”部門で正式上映されたのは、フランスのフランソワ・オゾン監督の『ヤング&ビューティフル』と、メキシコのアマト・エスカランテ監督の『エリ』の2作品。“カンヌ・クラシック”部門には、カトリーヌ・ドヌーヴ主演&ジャック・ドゥミ監督の『シェルブールの雨傘』(1964年)とクリス・マルケル&ピエール・ロム監督の『美しき五月』(1962年)が登場した。


◆フランスの実力派監督フランソワ・オゾン監督の『ヤング&ビューティフル』は新星マリーヌ・ヴァクトに注目!

 2003年の『スイミング・プール』以来10年ぶり、2度目のカンヌ映画祭コンペ選出となったフランスの異才フランソワ・オゾン監督。彼が監督&脚本した『ヤング&ビューティフル』は、快楽を求めて売春婦になった17歳の少女の春夏秋冬(1年)をポートレート風に描いた青春映画。タイトル通りの若くて美しいヒロイン、イザベル役に抜擢され、10代の売春婦を体当たりで熱演したマリーヌ・ヴァクトは、イヴ・サンローランの香水のCMで注目されたモデルで、現在は22歳。映画出演は本作で4本目となるフランス期待の新星だ。
 朝の8時半からの上映に続き、11時から行われた本作の公式記者会見には、フランソワ・オゾン監督、主演のマリーヌ・ヴァクトの他、共演したジェラルディン・ペラス、フレデリック・ピエロ、ファンタン・ラヴァ、そしてプロデューサー2人が登壇した。
 「世界中で製作される映画の中で、しばしば思春期は美化され、理想化されている。僕の思春期に対する思い出は、どちらかといえば辛く苦しいものだった。なので、その”思春期“を距離をおいて、別の形で語りたいと思った」というフランソワ・オゾン監督は、マリーヌ・ヴァクトの起用について「マリーヌを見た時、演技に現実感がある他の女優たちとはどこか違うなと感じた。彼女は、何か異なるものを持っていたんだ。その瞳の中に、内なる世界や神秘的なものを秘めており、それこそが僕がこの映画において求めていたものだったのさ」とコメント。
 監督の期待に見事に応え、ヒロインの繊細な感情の揺れを如実に漂わせて好演したマリーヌ・ヴァクトは、モデルから映画女優への転身について「確かに私はモデルでしたが、これまで自分のことをモデルという枠組みの中で捉えたことはありませんでした。モデルや、女優といった肩書きは好きじゃありません。私は自分の好きなことをやってきて、今回はフランソワと一緒に仕事が出来て本当に楽しかったですね。今後も私がやりたいと思うプロジェクトを続けていきたいと思っています。今回の映画出演は、転身というほど単純なものではありません」と主張した。


◆“ある視点”部門の開幕作品は、ソフィア・コッポラ監督が実在の事件をベースにして描いた『ザ・ブリング・リング』

 15時からは、今晩の正式上映に先駆けて行われた“ある視点”部門の開幕作品『ザ・ブリング・リング』(12月公開予定)の公式記者会見に出席。
 本作は米雑誌「ヴァニティ・フェア」で紹介された実際の事件をベースにした作品で、ソフィア・コッポラ監督が自ら脚本を手掛けて映画化した異色の青春映画だ。
 事件は、ハリウッドスターに憧れて窃盗団を結成したティーンエイジャーたちが、ゲーム感覚でセレブの豪邸に忍び込み、総額300万ドルにもおよぶジュエリーやブランドものの洋服を盗んでいたというもので、タイトルは事件当時、メディアを騒がせた彼女たちへの呼称であった“キラキラした奴ら”という意味合い。実際の被害者の1人であり、本作にカメオ出演もしたパリス・ヒルトンの邸宅でロケ撮影を敢行したことも大きな話題になっている。
 公式記者会見に登壇したのは、ソフィア・コッポラ監督とプロデューサー、そして窃盗団一味を演じたエマ・ワトソン、ケイティ・チャン、タイッサ・ファーミガ、クレア・ジュリアン、イズラエル・ブルサールの7名。
 実際の犯人一味の2、3人に会って話を聞いたというソフィア・コッポラ監督だが、舞台となったロサンジェルスがについて「ロサンジェルスはアメリカ文化の中心です。そして、そこにセレブの世界があります。この映画で描いたのは、その世界です。この物語は他の場所では表現できませんね。何故なら子供たちはこうしたスターの近くに住んでいるからです」とコメント。
 俳優陣において、最も質問が集中したエマ・ワトソンは、『ハリー・ポッター』シリーズの優等生ハーマイオニー・グレンジャー役のイメージを覆す本作での役柄を、「異なるキャラクターを演じることを楽しめて、私はとてもラッキーです」とコメントし、本作で新境地を拓いたとの自負をのぞかせた。
(記事構成:Y. KIKKA)