第66回カンヌ国際映画祭が、現地時間の5月15日(水)、風光明媚な南仏の高級リゾート地で開幕した。初日の今日は、ぐずついた空模様。薄ら寒くもあり、昨年の嫌な思い出が甦ってくる。昨日はとても天気が良く、こりゃ幸先がいいぞと思ったばかりなのに残念だ。特に夕方からは土砂降りの雨となり、正装でオープニング・セレモニー(セレモニーの司会を務めたのはフランス女優オドレイ・トトゥ)に臨んだ人々が濡れそぼってしまい、実に気の毒であった。

◆今年のオープニング作品は、偉才バズ・ラーマン監督のゴージャスな3D映画『華麗なるギャツビー』!

 映画祭の開幕作品に選ばれたのは、アメリカの作家F・スコット・フィッツジェラルドの同名小説を『ロミオ+ジュリエット』のオーストラリア出身の鬼才監督バズ・ラーマン&主演レオナルド・ディカプリオが再びタッグを組んで映画化した『華麗なるギャツビー』(コンペ外招待作品)。
 物語は、第一次世界大戦後の狂騒の1920年代のNY、ロングアイランドを舞台に、快楽的な生活を送る謎の富豪ギャツビーの意外な素性と思惑を、ある女性との悲恋を絡めながら豪華絢爛なビジュアルで幻惑的に描写したもので(日本は6月公開)、共演者も英国出身のキャリー・マリガン(ギャツビーが一途に愛する運命の女性デイジー役)、レオナルド・ディカプリオの朋友としても知られるトビー・マグワイア(ギャツビーの隣人でデイジーの従兄弟でもある物語の語り手ニック・キャラウェイ役)と若手演技派揃い。  
 原作は何度も映画化されている名作だが、なかでも有名なロバート・レッドフォード主演作(1974年)と比べると、本作はより原作に忠実に描かれており、バズ・ラーマン監督は製作と共同脚本も兼務。アールデコ全盛当時のファッションを見事に再現した豪華な衣装や宝飾品、建物のセット、音楽なども大きく注目されている超話題作だ。

 映画祭のオープニング・セレモニーは宵の19時15分からのスタートで、本作『華麗なるギャツビー』は、そのセレモニー後に正式上映(ドレスコードのあるソワレ上映)が2回、行われるのだが、我ら報道陣はその上映に先立ち午前中からの始動となる。まずは10時からの本作のプレス向け試写を鑑賞後、13時から行われた公式記者会見に参加した。
 登壇者はバズ・ラーマン監督、クレイグ・ピアース(共同脚本家)、キャサリン・マーティン(製作・美術・衣装)、俳優のレオナルド・ディカプリオ、キャリー・マリガン、トビー・マグワイア、ジョエル・エドガートン、エリザベス・デビッキ、アイラ・フィッシャー、アミターブ・バッチャン。
 シベリア鉄道に乗車した際、この原作本を読んで虜になったと言うバズ・ラーマン監督は、映画化にいたった道のりを述べ、「我々はギャツビーの物語に刺激を受けずにいられないのです」とコメント。タイトルロールを演じたレオナルド・ディカプリオも「教科書に取り上げられるほどの小説に書かれた役柄に取り組むことは実に興味深かった」と語った。

◆長編コンペティション部門の審査員を務めるのは、巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督(審査委員長)以下、総勢9名!

 映画祭初日は、オープニング上映作『華麗なるギャツビー』の公式記者会見に続いて、14時半からは、映画祭の柱である“長編コンペティション”部門の審査員全員が登壇する審査員会見に出席! 
 今年の審査委員長をハリウッドの大御所プロデューサー&監督のスティーヴン・スピルバーグが務めるとあってニュースバリューが例年以上に高いため、先に行われた『華麗なるギャツビー』の会見と同様、記者が殺到。入場できずにあぶれた記者たちが会見場前のモニターに群がるほどのヒートぶりとなった。 
 スティーヴン・スピルバーグが率いる審査員8名の顔ぶれは、国際的に活躍する人気俳優のニコール・キッドマン(オーストラリア出身)とクリストフ・ヴァルツ(オーストリア出身)、インドの女優ヴィデヤ・バラン、フランスの男優&監督のダニエル・オートゥイユ、英国の女性監督リン・ラムジー、台湾のアン・リー監督、ルーマニアのクリスティアン・ムンギウ監督、河?直美監督で、このうち4名がオスカー受賞者(スピルバーグ、キッドマン、リー、ヴァルツ)という錚々たる顔ぶれだ。
 その審査員会見上でスティーヴン・スピルバーグ監督は、審査することに関して、「率直にいえば、私たちはいつもジャッジしています。常に映画館で観る作品をジャッジし、評価し、根本的に何が新しいのか見きわめようとします。映画はいつも観客の注意を引こうとお互い競っているのです」と語り、残る8人もの審査に対するそれぞれの心構えを神妙に述べている。
(記事構成:Y. KIKKA)