この度、本年度最高の日本映画の呼び声も高い、映画『許されざる者』(9/13より全国公開)が、第70回ベネチア国際映画祭の特別招待作品として、現地時間9/6(金)深夜にプレミア上映さた。また、上映に先駆け行われたレッドカーペットには、主演の渡辺謙のほか、柄本明、柳楽優弥、李相日監督が登場し、作品を全世界へアピールした。

第70回ベネチア映画祭で現地時間の9月6日、アウト•オブ•コンペティションとして招待された李相日監督の『許されざる者』が上映された。レッドカーペットの入場時には、ハリウッドでも活躍する渡辺謙のファンをはじめとする見学者が並び、キャスト陣にサインをねだる姿が見られた。公式上映は夜10時からと遅い時間にも拘らず、会場には1000人以上の観客が集まり、渡辺謙と監督の名前が紹介されると場内には歓声がわき起こった。

 135分の見応えたっぷりの上映後、エンドクレジットが流れ始めると、場内はスタンディング•オベーションに。約10分間の鳴り止まない拍手のもと、キャスト陣が感無量の様子で立ち上がると、場内にはさらに大きな拍手が響いた。目を潤ませた渡辺謙は、思わず監督の手を取り、ふたりで高く手を掲げて観客の熱い拍手に応えてみせた。観客の中には涙する姿も見受けられ、「切なくも美しい映画」との一般コメントもあった。

 公式上映に先駆けて行われた記者会見では、今回の映画化の経緯や、それを日本の歴史の中にどう取り入れて脚色したのかといった点に質問が集まった。『硫黄島からの手紙』以来、クリント•イーストウッドと親交を持つ渡辺謙は、今回の映画化のきっかけについてこう語った。「映画会社から連絡を入れる以前に、まず僕から(イーストウッドのプロダクションである)エルパソにメールをして、リメイクの話があるがどう思うか、と訊きました。そうしたらとても寛大に『やってみてはどうか』という返事をもらった。その後はこちらから直接コンタクトを取ることはなかったですが、彼自身も自分が関わると作品に影響をすると思ったのか、自由にやらせてくれました」。李監督は、「日本で時代劇を作ることはチャレンジですが、サムライの文化が滅び近代化に移った時代を背景に、先住民と入植者たちの、あまり語られることのなかった歴史に光を当てることは有意義だと思いました。勧善懲悪ではなく、渾然とした人間の本質を描きたかった」と語った。オリジナルでモーガン•フリーマンが演じたキャラクターにあたる金吾役に扮した柄本明は、「モーガン•フリーマンは大好きな尊敬する俳優ですが、今回とくに参考にはせず、むしろ監督の視点と脚本から役作りをしました。撮影は大変でしたが、役者として楽しかった」とコメント。また大先輩たちとの共演について訊かれた柳楽優弥は、「最初はとてもビビっていましたが、監督から『同じ土俵にいるのだから、負けちゃだめだろう』と言われ、頑張りました。この映画を撮り終えたいまは、『世界のユーヤ・ヤギラ』と言われるような俳優になりたいと思います」と語り、会場を湧かせた。海外のジャーナリストたちのあいだでは、「リメイクに独自の視点を持たせ成功している」という声も多く聞かれ、レビューでは、「オリジナルを超えるラスト」との見出しもあった。

 一夜明けた9月7日に行われた囲み取材で、渡辺謙は上映について、「観客に届いた喜びと逆に自分自身が映画にひきずり込まれて恥ずかしかった。」と語り、柄本明は、「映画ってすごいなと思った」と語った。カンヌ映画祭以来の映画祭参加となった柳楽優弥は、「(あのときは子供だったのであまり覚えていないが、)今回は完全に記憶に残りました。あとスタンディングオベーションが長くて興奮しました。」と語り、李監督は「(一夜明けて)何か夢から覚めた感じです。」と心境を語った。