7月20日(土)の公開以来、公開約1か月過ぎて早くも観客動員万人640万人、興行収入80億円を突破し、日本全国でブームを巻き起こしている『風立ちぬ』。イタリア現地時間9月1日(日)13:00から、公式記者会見が行われ、スタジオジブリから星野康二代表取締役社長(57)、『風立ちぬ』でヒロイン・菜穂子の声を演じた瀧本美織(21)が出席しました。

 日本から唯一のコンペティション部門出品作で、世界中に愛されている宮崎駿監督作ということもあり、記者席約270席ある公式会見場Palazzo  del  Casinò(パラッツォ・デル・カジノ)は、各国ジャーナリストも集まり大盛況となりました。会見は、「リドはとても好きなところで、今回ご招待頂いたのに(行けなくて)残念です。みなさんにくれぐれもよろしく」という、宮崎駿監督からのメッセージを星野社長が報告するかたちでスタートしました。

星野康二社長(57)

今回の作品は『崖の上のポニョ』から5年ぶりの作品で、日本で成功をおさめ(その勢いは)現在も続いています。“堀越二郎”について宮崎駿は若いころから研究をしていましたし、長い間彼の中で温めていたひとつのテーマだったのだと思います。ただ、本作をアニメーションにするという事に関して、決断に時間がかかりました。「アニメーションは子供も楽しめるもの」と思っていることが大きかったのです。改めて今回つくるのであれば、30年、40年と長い時間を描くことに挑戦してほしかった。大きな挑戦の作品だったのです。そして今回の挑戦は、ノンフィクションとして描くのではなく、一人の若者に光を当てて描くことになりました。震災・戦争・結核を描きながら、その当時どういうラブストーリーが菜穂子との間に生まれたのか。そのすべてが一人の若者に焦点を当てることにより描かれた映画になったと思います。ターゲットは、宮崎の場合は目の前にいる人全員だということは間違いない。ただ、2011年には震災がありました。景気も悪いです。過去の事を語るというよりは、その映画の中でどう現代と向き合っていけばいいか?本当のターゲットというのであれば若い人に向けた作品です。監督本人は、(「創造的人生の持ち時間は10年だ」という劇中の)台詞に関しては「ピークは10年間に違いない。だから自分の場合、そのピークの10年間はずいぶん前に終わったんだ」と言って、「ハハハ」と笑っていました。『ポニョ』『ハウル』『風立ちぬ』と、宮崎監督のエネルギーは、その泉はまだまだ枯れないな、というのが個人的な感想です。

瀧本美織(21)

 ボンジョルノ。ピアチェーレ(はじめまして)。イオ・ソーノ・ミオリ・タキモト。この挨拶がどうしても言いたかったんです(笑)。宮崎監督は世界中から愛されていて、会えるだけでうれしかったのですが、菜穂子という役を頂き全力で演じました。昔の日本の時代描かれていて知らないことも多いので、鈴木プロデューサーから勧められて『キューポラのある町』などを参考にしました。映像、台本を見て、生きるのにつらい時代なのに、二郎さん、菜穂子さん、登場人物がつらい時代なのにいきいきと生きている人の姿に同じ日本人として勇気をもらえました。

なお、会見最後、星野社長から宮崎駿監督の進退について以下発表がありました。
「ベネチア映画祭には過去に何度も招待して頂きました。宮崎駿はリド島がとても好きです。世界に大変友人の多い宮崎駿に関しての発表をこの場でさせて頂きます。『風立ちぬ』を最後に、宮崎駿監督は引退することを決めました。来週、宮崎駿本人による記者会見を東京で開きます。したがいまして、引退に関する質問は一切受けるできないことを了承頂ければと思います。くれぐれも皆さんによろしくということです。」