7月26日(金) 、日本大学芸術学部で映画を学ぶ学生の200人と、映画『凶悪』（9月21日全国公開）の白石監督によるティーチイン付き特別試写会を実施した。人間の善悪にメスを入れる映画『凶悪』を題材に、監督VS学生の映画愛に満ちた激論トーク”真剣20代しゃべり場”を開催！定員オーバー、立ち見も出るほど熱気に溢れた会場で作品に関する率直な感想、意見を監督本人と交わしながら、熱いトークバトルが繰り広げられた！

【日程】7月26日(金)
【場所】日本大学藝術学部　映画学科・江古田校舎
【登壇者】白石和彌監督、古賀太教授、学生の皆さん

【学生とのQ&A】
古賀教授：山田孝之さん、ピエール瀧さん、リリー・フランキーさんの3人の配役を抜擢された経緯は？
白石監督：まず、脚本段階で、男くさい映画なので色気のある男性がほしいという話をしていたところ、リリーさんの名前が上がりました。そこから、（首謀者の木村は）リリーさんを想定して脚本を書きました。山田さんはコメディな作品が多かったのですが、『ミロクローゼ』で一人3役というパフォーマンスが素晴らしく、ドンと腰を据えて主演をはるものがないなと思い。瀧さんは「あまちゃん」の寿司屋などいい役や多いんですよね。どう見ても怖い顔してるのに(笑)。誰もやらないなら自分がやろうと。まずは3人とも脚本を読んでいただいてオファーしたら快諾していただけたんです。リリーさんや瀧さんには現場では自由にやってもらいましたね。

学生：すごすぎて混乱しています。瀧さんの「ブッこんでやる！」がアクセントになり、かっこいいなと思ったのですが、意図的なものですか？
白石監督：この映画には原作があって、実際の事件を扱っているのですが、原作者の宮本さんと死刑囚の須藤のキーワードが「ブッこんでやる！」だったと思うんです。自分も普段使わない言葉だったので面白いし、フィーチャーしたのはありますね。

学生：ここ最近観た中で一番面白かったです！ノンフィクションは気分が落ち込むほどどれも現実では考えられない話で、これを映画化したなんてすごいです！とういう経緯で映画化になったのでしょう？
白石監督：2000年ぐらいに事件があり、2004，2005年に須藤が告発したというニュースを見ました。その時はそれだけでしたが、プロデューサーから読んでほしいと小説を渡され、すごい話だと思い企画がスタートしました。

学生：凄まじい作品でした！藤井が殺人たちとどうかしていったように感じたのですが、どういう視点を持っていたのですか？モチーフとしたものはありますか？
白石監督：モチーフとした作品はないです。この事件そのものが面白いけど、面白がってはいけない。事件はメディアで取り上げる際には、面白く記事にしなければということに疑問を感じていました。しかし、映画を作る際自分も面白くしなければいけない。そこで矛盾が起こりました。自分を藤井に重ねたんです。殺人者だけでなく、それを見ている自分たちも凶悪なんじゃないか。社会全体が凶悪かしているんじゃないかと。ラストシーンは自分に向けてのことでもあるんです。お前はこの題材を持って面白く取ってるじゃねーかと。

学生：生まれながらにしての悪人と、まったくの正義を持って調べると悪の闇にのまれるという作品だと思いました。監督が考える悪とは？
白石監督：社会に対して見て見ぬふりをしている人が多いです。それが悪だと思います。

学生：私は女性なので池脇さんの目線で見てしまい、「死んだ人ではなく生きた人のことを考えないといけない」という言葉が印象的でした。監督は、善悪の問題を描きたかったのか？それとも生死をテーマに描きたかったのか、どちらでしょう？
白石監督：両方ですね。生きる死ぬのテーマには善と悪は切り離せない。もう一つのテーマは家族というコミュニケィです。家族は一番小さな社会のコミュニティで、藤井の家庭問題も描いています。さらに、一番意識したのは、凶悪な二人が疑似家族を作っていくということ。これは、今の日本の社会のあり方じゃないかと思うんです。

学生：気持ち悪いけど、この映画を見て楽しんでいる私も凶悪だなと思いました。ご飯のシーンが多いと感じましたが、これは生へのこだわりでしょうか？
白石監督：そうですね。生きていくことは食べることです。象徴させているつもりはないけど分かりやすいので入れています。

学生：アップめの画が多く、緊張感がありました。ラストのカットがすごく印象的です。カメラワークのこだわりは？
白石監督：テーマとしては軽く撮りたくないと思い、重量感ある絵を取りたかったんです。それでカメラマンから、重いカメラを使った方がいいとアドバイスをもらいました。そこで汗かかないとこうならないんです。ラストのカットは自分もすごい好きで、観てる観客はそこから抜け出せないようにしたかったんです。

学生：面白くてもわもわした感じです。山田さんと池脇さんが主体となるっていて二人の夫婦関係は想像できるのですが、瀧さんとリリーさんの世界はまったく分からない世界だと思います。リアリティを出すためにどう演出したのですか？
白石監督：僕も経験はないのですが(笑)Vシネマの助監督をやっていた時に、実際にヤクザがヤクザ映画をとっていた経験があったのと、映画を見たりましたね。瀧さんが電気グルーヴをやる前、20歳ぐらいからリリーさんとは知り合いでした。必然的に関係ができていたのだと思いますね。

学生：ピエールさんがおちゃめで、クリスマスの楽しいそうなシーンが入っていたり、ブラックユーモアが入っていましたが、なぜ入れたのでしょうか？
白石監督：滑稽にしたかったんです。ひどいことをひどいだけで終わるとしんどいなと思ったんです。

【白石監督からメッセージ】日本での映画の売り上げは2000億円で、そのうち6割が邦画と言われて非常に盛り上がっているように見えますが、実は映画監督含め、邦画は絶滅業種です。ここで多くのことを学び、社会に出たときに、一緒に日本映画を盛り上げていきましょう！！！！！