この度、映画『ひろしま 石内都・遺されたものたち』の公開を記念致しまして、リンダ・ホーグランドと親交の深い阪本順治監督をお呼びし、トークショーを行いましたのでご報告させて頂きます。

●日時:7 月 22 日(月) 13:00〜
●場所:岩波ホール
●登壇:写真家・石内都さん×リンダ・ホーグランド監督

アメリカ人監督によるドキュメンタリー映画をとおして広島と長崎、そして今日の緒核と原子力の問題を考える企画として、リンダ・ホーグランド監督の『ひろしま石内都・遺されたものたち』が、岩波ホールにて公開中となっている。今年も 8 月 6 日を迎えようという中、映画で紹介されている写真を撮影した石内都さんをお迎えし、作品の世界観について女性ならではの内容で語っていただいた。
「原爆の遺品たちはモノクロのイメージの中で、すごく固く力が入ったものだと思い、広島へ行ってみたらそんなことはなかった。いわば自分はよそ者、よそ者としての目線、そして女性としての目線で遺品と向き合い写真を撮影した」と石内さん。写真展の名前を悩んだとき、最後まで「ひろしま」という4文字しかないと思ったという。平仮名は女性文字、それが女性監督であるリンダ・ホーグランド監督の映画の題名としても使われた。「ひろしま」を英語に直すこともせず、世界へ広めていきたいと石内さんは語った。
海外では美術教育がなされており、まず見せること、そして自分の力で感じ言葉に紡ぐこと、その大切さを訴え、自身の写真展では展示写真に一切のキャプションを付けず、“提示するだけ”としていることについても触れた。リンダ監督も、バンクーバーでの写真展を映画におさめたことについて、「この素晴らしいアートの体験を、80 分間一緒に体験してほしかった。それがこの作品の狙い」だと明かした。

石内さんは、「「ひろしま」の写真展は“美しすぎる”という批判もあったが、原爆が投下される前はもっと美しかったんだよ」と伝えていることを明かし「過去の時間は撮影できないけれど、遺品たちの時間は今も尚ここにあるんですよ」というリアリティを感じてほしいと話した。その“今も尚”というリアリティを保つためにも「ひろしま」はもっと新しい体験をしなければならないと語った。また、映画についても「女性性は大きいと思う」と、自身やリンダ監督、プロデューサーが女性である点にも言及した。「今までは戦場の男的な広島のイメージが強かったけれど、女性はきちんと“ひろしま”と出逢ったのかなと今作で思った。美しいものは美しいとストレートに言える、やっとそこへ辿り着いた」と石内さん。また、リンダ監督の映画は“遺品から魂を呼び戻して送り出してあげたいという祈りのようなもの、地上より遠くへ高く翔んでゆくもの”という世界観があると感想を述べた。