7月6日(土)にポレポレ東中野にてドキュメンタリー映画『台湾アイデンティティー』の初日トークイベントが行われました。本作は戦後70年近く長い年月が過ぎ、日本語世代と呼ばれる人々は少なくなってきている中、彼らの今の姿に迫り、日台の歴史を紐解くドキュメンタリー映画です。この日はとても暑い中、多くのお客様にお越しいただき会場は満員となりました。トークイベントには酒井充子監督と出演者の呉正男さんが登壇し、監督は公開を迎えた喜び、呉さんはシベリア抑留などの自身が経験した壮絶な歴史を語ってくれました。

酒井充子監督(以下監督):本日はお越しいただきましてありがとうございます。初日を迎えることが出来てとても嬉しいです。最後までご覧いただき誠にありがとうございました!

呉正男さん(呉さん):本日は多くの方にお越しいただき非常にうれしく思います。皆さんどうか『台湾アイデンティティー』をよろしくお願いいたします。

監督:呉さんとは前作『台湾人生』の取材中の2007年からのお付き合いでして、『台湾アイデンティティー』の撮影を始めた2012年に改めて本作への出演をお願いしました。私が聞くのもおかしいかもしれないですが(笑)、なぜ出演を承諾して下さったのですか?

呉さん:監督と知り合ってから『台湾人生』は日本語世代の声を記した非常に希少な作品だと思っておりまして、オファーを頂いたときは、「おっ、来たな」という感じで驚くこともなく承諾しましたね。

監督:呉さんから戦前の話もたくさん伺っている中で「自分が一番輝いていた時代は戦前だった」とおっしゃっていましたが、具体的にはどの辺の時代のことを指していたのですか?

呉さん:それは僕が飛行機に乗っていた時代です。中学3年生の時に悩むことなく陸軍に志願して、選ばれ抜かれて飛行機部隊に所属することになりました。北朝鮮での作戦には航空通信士として参加していまして、その時は常に死と対決していました。その時代はとても充実した時期でしたね。戦い抜いた自分を褒めてあげたいと思います(笑)。

監督:呉さんは日本国籍をお持ちでないがために、シベリア特措法が適応されないという立場にあります。しかし、その特捜法の中には「日本政府はシベリア抑留の真実を解明する」とも述べられていますが、未だにその真実は解明されないままの状態が続いていますね。

呉さん:「シベリア抑留者は戦死者ではない」という扱いを受けているんですよ。戦死者として扱われている人たちには日本政府からの補償金が出るわけですが、抑留者にはそういった対応がなされていないのです。60万人の抑留者のうち、戻ってこられた50万人に対して補償金が発生しなかったということについて、私は未だに「おかしな話だな」と思います。

司会:そろそろ時間が迫って参りましたので、最後に監督と呉さんから一言ずつ頂きたいと思います。

監督:本日は本当にありがとうございました。今を生きている台湾の日本語世代の人たちはどんどん少なくなってきています。少しでも多くの方に、この映画を通して彼らの声を届けることが出来ればと思っています。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。

呉さん:皆さん、帰らずにこのトークショーまで残っていただきありがとうございます。本日は素晴らしい時間を過ごさせて頂きました。本当にありがとうございます。