カナダはモントリオール出身、24歳気鋭の映画監督グザヴィエ・ドランによる『わたしはロランス』が9月の劇場公開に先駆け、6月21日より開催中のフランス映画祭にて上映されました。

映画祭の団長を務め、『わたしはロランス』では主人公の母役を演じたフランス映画界きっての大女優ナタリー・バイによるトークイベントが本作上映に合わせて開催されました。

フランソワ・トリュフォー監督『アメリカの夜』、ジャン=リュック・ゴダール監督『勝手に逃げろ/人生』などヌーヴェルヴァーグの時代を代表する女優の一人であるナタリー・バイは、今作で主人公のメルヴィル・プポー演じる、女性になりたいと悩む教師ロランスの母親ジュリエンヌ役を演じている。彼女はドラン監督について「彼が私に与えてくれた役柄は、とても強い決断力を持った女性です。彼はシナリオの中身を細かく書いていました。撮影前の打ち合わせの時に、色々な質問を投げかけましたが、シンプルかつ知的な回答が返ってきましたよ」と語った。

そして「本作撮影中に監督は23歳の誕生日を迎えました。とても若い映画監督ですが、年齢や経験に関係なく彼は天才です」と若き才能ドラン監督を絶賛。「この映画の中で彼は監督、脚本、さらには衣装までを手がける多彩ぶりです。彼は80年代の衣装をバービー人形のように着せてくれました」と撮影時のエピソードを披露した。

さらに「第1作『マイ・マザー/青春の傷口』(2009年)第2作『HEARTBEATS』(2010年)では俳優としても出演しています。監督のなかには、技術者としての経験を活かす方もいますが、私は、ゴダール、トリュフォー、シャブロルのような、飛んで行くような感覚を持った方と仕事がしたい。彼もその一人、次回作に呼ばれたらすぐにオッケーを出しますよ」と賛辞を惜しまなかった。

また、本作のテーマとなっているセクシャルマイノリティや性同一性障害の問題の、現在のフランスでの関心について質問を向けられると、「昔に比べると、今の考え方はわりとオープンにはなっているけれど、私の表現で言えばまだ“シャイ”な状態かしら。タブー視されていないものの、多くの人々には不都合な状態が続いています。私にはセクシャルマイノリティの友人が多くいます。彼らの中には家族の中で病気扱いされることを恐れて、そのことを隠したまま生きている人たちもいました。だんだんと明らかになって、ロランスのように本当のことを語れる状況になったら良いと思います」と述べた。

数々の巨匠たちを魅了する女優ナタリー・バイが全幅の信頼を寄せ、その才能を認めるグザヴィエ・ドラン監督の『わたしはロランス』は9月、シネマカリテほか全国順次公開される。