映画『ベルリンファイル』映画作りの極意から本作に込めた思いを大いに語るリュ・スンワン監督来日イベント
韓国で今年1月29日に公開されるや、緻密に仕立てられたプロット、強烈で緊迫したアクション、破滅的なロマンスが話題となり、“映画史上最高の完成度”との評価を受け、700万人以上を動員したハイブリットスパイアクション『ベルリンファイル』がいよいよ7月13日(土)より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほかにて公開となります。
この度、本作プロモーションのために、リュ・スンワン監督が約7年ぶりに公式来日し、17日(月)にはクリエイターや俳優を目指す映画製作の歴史ある「映画美学校」において特別講義を実施。
また18日(火)には、ジャーナリストの黒井文太郎氏、木村元彦氏とともに、映画『ベルリンファイル』の魅力や本作から見る真実の朝鮮半島の内情などについて熱く語るトークイベントを実施しました!
6月17日(月) 『ベルリンファイル』公開記念特別講義 @渋谷・映画美学校1F教室
特別講師:リュ・スンワン監督 司会進行:篠崎誠監督
17日(月)は、渋谷・映画美学校にて、リュ・スンワン監督が映画製作や俳優を志す生徒を前に約1時間にわたって特別講義を実施。
まず、司会を務めた篠崎誠監督から、映画監督になった経緯を質問されると「父と叔父が映画好きで、映画館によく連れて行ってもらい、特に香港の武術映画が大好きな子供だった。その後漠然と映画を作りたいと思っていたが、学校の成績も悪く、大学受験は落ちてしまったので、働きながらフィルムワークショップに通い始め、そこで現在の妻や、師匠でもあるパク・チャヌク監督と出会った」と語り、「自分はデビューまでに11本のシナリオを描いたが、コンペには一本もひっかからず、でも諦められずに他の監督から余ったフィルムをもらって、カメラを無断拝借して短編を撮影し、それが運よく映画祭で賞をもらうことになった」といった当時の苦労話を話し、
また、「良い映画をなるべくたくさんみようと、映画誌に投稿していたパク・チャヌク監督の映画評を読むことで映画を観る目を養い、またパク監督に勧められて観た鈴木清順監督が大好きで、『東京流れ者』は自身のコメディー映画のお手本にもなった」というエピソードも披露した。
そして、『ベルリンファイル』を試写で鑑賞している生徒たちからも質問が相次ぎ、「ベルリンがあるドイツは冷戦時代を象徴する場所であり、また全世界的に見ても、一番大きな北朝鮮大使館があることなど、ベルリンという都市がもつ象徴的な意味が私にとって大きかった」と舞台をベルリンにした理由を語ったリュ・スンワン監督。
この巧妙で複雑なストーリーをどうやって作りだしたのか、という質問には、当時を思い出し苦笑いも浮かべつつ「作った当時のすべて思い出したくないほど大変な作業だった。シノプシスには1年くらい費やし、第三国で南北の人物が出会うためには、どういう事件を背景にすればよいのか取材を重ねた」といい、「事件の構造を最初に作るのではなく、私がこの映画で必要とする人物のタイプを数人作って、その人物がどんな行動をとるか、どのように人物同士が衝突し、別れていくかを整理して考えていった。」とシナリオ作りの極意を披露、絶賛されているアクションシーンについても「アクションを展開するにあたっては、どんな人物かによって戦い方違うため、人物把握が非常に大切で、この空間で、この人物がアクションすることが自然なことか念入りに考える。でも、実際にロケハンに行ってみると印象が違うこともよくあるので、ロケハンには、美術監督、アクション監督を一緒に連れて行って、アクション場所をみて検討し、最終シナリオにその時に見た印象を反映するようにしている」といったこだわりまで、一つ一つの質問に非常に丁寧に答える姿が印象的だった。
最後に、「現在韓国で映画をとろうとしている世代は、作りたい映画があるから映画監督になるのではなく、監督になるために映画を撮る、という風になってきている気がする。映画を作ることは、法則などなく、これが成功、これは失敗といった基準はない、望む映画がとれた瞬間が、偉大であり成功した瞬間です」と生徒たちにエールを贈った。