映画と中目黒をもっと好きになっていただくために生まれた、無料の映画&トークイベント「ナカメキノ」。“中目黒の街”を舞台に、月に1度、素敵なゲストをお招きして無料の映画&トークイベントを実施、映画と中目黒をより楽しく体験いただける場を提供しています。

第5回となった6月2日(日)には、世界中に熱狂的ファンをもつ感動のロックコメディ映画『スクール・オブ・ロック』の上映およびトークイベントを開催致しました。本作は、コメディの帝王ジャック・ブラックと名匠リチャード・リンクレイター監督によるロックをテーマにしたファミリーコメディで、音楽好きにはたまらない往年のロックの名曲が作中に目白押し。偽教師を演じるジャック・ブラックのコミカルな演技に笑い転げながらも、気がついたら感動に涙しているコメディ映画の傑作です。

今回「ナカメキノ」では、100名様限定で、大きなスクリーンと音響をご用意。映画館に近い空間で本作の上映を実施するとともに、上映前後には映画のみならず音楽にも詳しい添野知生さん(映画評論家)、松崎健夫さん(映画文筆家)、中井圭さん(映画解説者)によるトークイベントを行いしました。

会場には20代の男女が多く見られ、中にはロックTシャツに身を包んだ方も。上映前トークでは、映画ファンの中で人気の作品でありながら、実は映画館で観た方は少ない点に触れられ、実際にいらっしゃったお客様にも伺うと、既にご覧になった方々もDVD鑑賞の方ばかり。お客様にはまさに映画館のような空間で本作を体感していただき、上映後には映画論から音楽論まで、ゲスト陣による熱いトークが繰り広げられました。

日時 :6月2日(日)
場所 :バンタンゲームアカデミー
ゲスト:添野知生(映画評論家)、松崎健夫(映画文筆家)、中井圭(映画解説者)

《上映前トーク》
添野:今日は映画王子(中井圭)と映画王(松崎健夫)に呼んでいただけて光栄です(笑)。映画も好きですが音楽も大好きなので、今日は音楽面での話もたくさんしたいです。よろしくお願いします。小学生の頃SFにハマり、今は映画評論家としてすべてのジャンルを網羅しています。音楽については、自分が好きな分野のみ「好きで知っている」という感じの、あくまでファンです。

中井:『スクール・オブ・ロック』はずっと好きで、いつかナカメキノで上映したいと思っていて…ついに今回決めました。

添野:ちょっと意外でしたね。

中井:ちなみに映画館でご覧になった方はどのくらいでしょう?(会場挙手、僅か)そうなんです、名前は知られているのに、劇場で観た人となると少ないんですよね。この映画は大きいスクリーンと大きい音響という環境で観て、体感すべき映画。これまでナカメキノはどちらかというとパンチの効いた作品をセレクトしていたけれど、だいぶ認知もされてきたので、このタイミングで王道の『スクール・オブ・ロック』を出そうかと。

松崎:ブルーレイもDVDも持ってますよ。
添野:僕ももちろん大好きですよ。本作公開時、映画秘宝では69本の映画をセレクトする特集を企画したのですが、これまで自分が参加した特集の中でいちばん胸を張れる特集ですね。

中井:今日は何かしらしばりを設けようと3人でロックTシャツを着てきました。アンガス・ヤングはもともと主人公のモチーフになっているんですよね。制服を着てロックするというのが。ところでなぜ松崎さんは何故AC/DCが好きに??

松崎:どの音楽を聴いても同じに聞こえるところですね(会場笑)。何も変わらないけどあの愚直にやっている感じがたまらないんですよ。ちなみに僕が着ているのはピンクフロイドのTシャツです。

添野:僕はTシャツ重ね着して来ましたよ。レッド・クロス、その下にザ・フー、これは初単独来日の時に買ったTシャツです(会場:おおー)。更にその下にはピンクフロイド「原子心母」の3枚重ね着です(笑)。中高のときは理屈っぽい嫌な音楽好きで、プログレ聴いてたんです。

中井:僕はど真ん中のテネイシャスDのTシャツにしてきました。ジャック・ブラックがやっているバンドですね。
添野:テネイシャスDを観ると、何故かブルース・ブラザーズ思い出すんですよねー。雰囲気とか太っているのに身軽なところとか。
中井:確かに。その視点はなかった。テネイシャスDのPVもかなり面白いんで、ぜひ観ていただきたいですね。
さて、『スクール・オブ・ロック』はエンターテインメント作品として誰でも楽しめるのは間違いないです。音楽好きな人はにやりとする場面はたくさんあると思いますし、音楽を知らなくても十分に楽しめる作品になっていますので、どうぞお楽しみください。

《上映後トーク》

中井:ありがとうございました。(会場拍手)

松崎:努力って嫌だけれどやっぱり大事で、それを説教くさくなく、いつの間にか子どもたちが実践して、いつのまにか成長していくところが良いですよね。

添野:音楽を中心につくられているんですよね。でもいわゆる映画音楽は使われていない。繋ぐような映画音楽を使っていないので、ロック映画の割に実は沈黙の部分も多いんですよ。楽曲を大切にするというところに力が置かれているんですね。撮り方も長回しにしていたり、ズームに迫っていったりと、映画の力と技術を感じます。

中井:リチャード・リンクレイターの技というところですかね。

松崎:“映像美”と言うと、すごく壮大な大自然を描いて…というのが分かりやすいのだけれど、実はこの映画はその面でも秀逸なんです。ステディカムを使っているんですが、それをあまり感じさせない。被写体をずっと追っているけれど観客は酔わないし、学校の中でぐるっと回るシーンなど物語に即して動かしているのだけれど的確に撮られているんですね。他にも玄関から出て行くデューイ(ジャック・ブラック)にピントを合わせながら、次に出てくるネッド(マイク・ホワイト)の彼女をカットを割らずに撮っている。一見なんてことないことだけれど、しっかりとした技術でもってきちんと撮る。この映画の優れた技巧、素晴らしいですね。