いまや人気絶頂の綾野剛と若手実力派No.1の黒木華の共演、そして鬼才・石井岳龍監督最新作として早くも話題の映画『シャニダールの花』。7月20日の公開に先駆け、本日、石井岳龍監督と花文化研究者・川崎景介さんとの対談イベントを、松屋銀座 8Fイベントスクエア(中央区銀座3-6-1)にて実施致しました。

 人の胸に咲く美しい花をモチーフに世界の新たな見方を大胆に表現した石井岳龍監督と、日本で最も長い歴史をもつフラワーデザインの学校・マミフラワーデザインスクールの校長であり、世界中でも数少ない花文化研究者として活躍する川崎景介による対談では、人間と花との関係性、花文化の歴史背景、そして独創的な本作が生まれるに至った経緯や、撮影中の綾野剛さんのキャスティングについても語って頂きました。
 
■今作は花をモチーフにされた映画ですが、本日、会場をご覧になって頂いていかがでしょうか。
石井監督「生活に花がある、取り入れる工夫というものが凄く豊かなものを生み出すというのを感じました。そんなに詳しくはないのですが、高山植物とか南国植物とか好きです。」

■花文化を研究しているので映画を鑑賞して非常に素晴らしいと感じました。
石井監督「シャニダールというのは、ネアンデルタール人の化石が発見された遺跡の名前なんです。そこでネアンデルタール人の化石が発見されたときに花の化石もあったそうなんです。この野蛮だったと言われているネアンデルタール人も死者を悼み、花を捧げていたという話にインスピレーションをうけて、映画を制作しました。」

■主演の綾野剛さんは劇中でも非常にかっこいい方ですね。作品も非常に素晴らしかったです。
石井監督「綾野君演じる大瀧という植物学者は、非常に繊細で神秘的で、どこか強い役でもあるので、危うさであるとかそういう危険性も含めて、何かそのへんの揺らぎ、綾野君は“静かな狂気”と言ってましたが、私は、“揺らぎ”を表現しました。核心的なことを言いますが、花は神様からの贈り物なのか、そうじゃないのか、という点での“揺らぎ”です。花は薬でもあるけれど毒にもなりうるんですね。昔の方は僕ら人類は進化したと思っているけど、私達は何か進化を手に入れる度に何かを無くしていると思うのですね。文明の発達や、進化の可能性はもちろん素晴らしいですが、同時に危険性も感じる。」

■なぜ今作の主演に綾野剛さんをご起用されたのですか?
石井監督「タイミングですね。カーネーションで綾野君を見て、それまで彼は髪を長髪にしていてい怪しい感じがしていたんですね。僕の作品はロックでとんがっているものが多いのですが、今回は恋愛の要素が多くて、まずは“人の胸に花が咲く”という点を観客には信じてもらわないといけない。その為には、地に足の着いた人がよかったんです。それで、カーネーションでの綾野君を見た時に、髪を短く切って、地に足がついた、普通っぽい、日常にいる人に見えたんですね。その日常性がとても良かったんです。もともと綾野君は前から気になってはいたんですが、調べると、彼と自分は共通が多いことも分かったんです。」

■監督と綾野さん演じる大瀧は同じだったりしますか!?
石井監督「綾野君は演じるときに、僕を参考に大瀧を演じていたって言ってましたが・・・
最近の映画作りにおいて自分は、俳優さんには自分の中にあるものを出してほしいと思っています。綾野君にも“人ではなくて自分の中にある大瀧賢治を発見してほしい”と現場で伝えました。初めて仕事をするので、彼にも不安があったと思うので、一緒に飲みに行ったりして自分をさらけだしていろんな話をしましたね。」

■最後に観客へのメッセージをお願いします。
石井監督「花の事をもっと知りたくなる、いつも隣にある花が、この映画を観た後に少し違って見えるような視点を伝えられればと思っています。難しい映画ではないので、男女の違いなどにも注目して見て頂けたらと思います。」