この度、舩橋淳(ふなはし・あつし)監督最新作『桜並木の満開の下に』が、4月13日(土)テアトル新宿ほか全国順次公開となりました。公開記念トークショー第一弾として、6月に新作公開を控えた映画監督の黒沢清氏をお迎えし、舩橋淳監督とのトークショーを行いました。

本作は、震災後の茨城県日立市を舞台に、突然の事故で最愛の夫を失いながらも、その悲しみを乗り越えようとするヒロインの心の葛藤を美しい桜並木を背景に描いたラブストーリーです。第63回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門で上映されたことで、舩橋淳監督は『BIG RIVER』(06)『谷中暮色』(09)『フタバから遠く離れ』(12)に続き、4作品連続招待という快挙を成し遂げました。

日程:4月24日(水)20:40〜21:00
場所:テアトル新宿
登壇:黒沢清監督×舩橋淳監督 / 司会 市山尚三(本作プロデューサー)

公開を記念して黒沢清監督にお越しいただいた本日は、雨にも関わらず多くの観客で埋め尽くされた。
黒沢監督は本作の感想を求められると「映画ってこんなシンプルで良かったのだと、心洗われる気がしました」と述べ、「奥に深い重たいものが敷かれていて、それがストレートに伝わってくる不思議さがあった。物語の想定よりも主演の2人(臼田あさ美・三浦貴大)が若いので、重い抽象的なドラマであるにも関わらず、青春っぽさがある。だからこそ、理屈を越えた清々しさや明るさも持ち合わせていて、若さ故、この難局を乗り越えられるのではないかという印象を受けた」と説明。そして、最も印象に残ったものは“映像の暗さ”であるとし、これから夜になる前の夕方の暗さなのか、これから朝になる前の夜の暗さなのか、その暗さの狙いについて舩橋監督に質問すると、舩橋監督は「60年代の小津や成瀬に代表するような心理劇、70年代のコッポラが描くアメリカ映画の心理劇など、昔から心理劇は非常に身近な人間同士の間で起きるシンプルなものを描いていた。それを表現したいと思ったときに、暗さは必要だと思った」と答えた。

また、地方を舞台に撮影をするときに“土地が背負う時代性”を描くのが面白いという考えも語り、震災後の日本人の心理も活かさなければいけないと思ったことも明かした。夫を亡くした栞の空虚感は、何か大切な大きなものを失ってしまった震災後の日本人にも通じるものがあるのではないかと語った。