約1億5千万円を投じた凱旋パレードのシーン!

 今年GWに日本公開される『セデック・バレ』の魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督のプロデュースによる台湾映画「KANO」は、現在台湾南部で撮影が進められている。
これは、1931年、日本統治時代に台湾の嘉義農林高校が甲子園に出場し、準優勝した実話を映画化したもので、『セデック・バレ』で原住民の頭目役を演じた俳優の馬志翔(マー・ジーシャン)が劇場映画初監督をつとめている。

 『セデック・バレ』で描かれた霧社事件の翌年、台湾人と日本人、そして原住民で構成された嘉義農林高校野球チームが夏の甲子園大会に出場し、なんと決勝戦まで勝ち上がった。惜しくも名門の中京商業に敗れたが、日本人、台湾人、原住民の3民族結束しての戦いぶりは見る者に感動を与えた。このひたむきに夢に向かって邁進する野球少年たちの熱い魂の物語の中で、本日メディアに公開された撮影シーンは、近藤兵太郎監督率いる嘉義農林野球部が全島優勝を勝ち取り、嘉義市で凱旋パレードが行われ、群衆から大歓迎されるシーンだ。
 1931年の嘉義市の盛況ぶりを再現するために街のセットに5000万元(約1億5千万円)を投じ、今日の撮影現場ではおよそ100名のスタッフに加えて嘉義市民を演じる300人近くのエキストラが参加。スタッフの掛け声のもと、群衆たちはKANOの旗を振りかざし、当時の大声援と大盛況ぶりが再現された。

永瀬正敏、入魂の役作り!

 本作の主役、嘉義農林野球部の魂と言われる近藤兵太郎監督を演じているのは、永瀬正敏。デビュー映画『ションベン・ライダー』から今年で30周年を迎える。1991年、山田洋次監督の『息子』では、日本アカデミー賞・ブルーリボン賞・キネマ旬報・日刊スポーツ映画大賞で助演男優賞を総ナメ。同監督の『隠し剣 鬼の爪』(2004年)、『毎日かあさん』(2011年)ほか映画を中心に活動して、ジム・ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』(1990年)や『アジアン・ビート』シリーズ(1991年)では台湾の余為彦(ユー・ウェイエン)、香港のクララ・ロウ監督をはじめ、タイ、シンガポール、マレーシアの監督とも仕事をしており、早くから国際的に活躍している。
 今回は二度目の台湾映画出演となるが、楊徳昌(エドワード・ヤン)プロデュースの『シャドー・オブ・ノクターン – アジアン・ビート 台湾篇』の頃はちょうど台湾映画が徐々に国際的に注目を浴びるようになり、永瀬は当時の勢いが受け継がれていると感じていると言う。そして、今回の『 KANO 』の大規模なセットに驚きを隠せず、今の日本映画にもなかなか無いことだと感心している。

 近藤監督はスパルタ式で嘉義農林の選手達を鍛え、1931年に夢の甲子園へ導いたが、その後さらに3度も嘉農チームに甲子園の土を踏ませた。この役を演じるにあたり、永瀬は近藤監督の教え子から近藤監督の人となりや性格、実践していた訓練方法などを聞いて役作りの参考にしている。近藤監督は「愛とムチ」の教育だったと信じている、と笑って言う。さらに「近藤監督と選手達の民族を越えたこの熱い物語を、映画を通してより多くの人々に知ってもらいたい。そして当時の民族共和を感じ取って欲しい」と語った。