遺伝子組み換え食品と、食品の放射能汚染の危険性を描いた衝撃のドキュメンタリー映画『世界が食べられなくなる日』が6月に公開されるのに先立ち、監督のジャン=ポール・ジョー氏が来日中だ。27日には、渋谷アップリンクでトークショーが行なわれた。

本作ではまず遺伝子組み換え食品(GM食品)に関して、フランスのカーン大学で行われた実験に二年間密着。これは世界で初めて、実験用のネズミに対して長期間GM食品を与えた試みで、作中では非常に衝撃的な結果が映されている。また、合わせて原発事故後の日本でも取材を行ない、福島で農業や畜産業に携わる人々のインタビューも納められた貴重な一本だ。

トークで監督はまず、極秘で進んだという本作の制作過程を紹介。「(本作の実験を行なった)カーン大学のセラニーニ教授から、ある日”打ち明けたい秘密がある”と告げられた。極秘で遺伝仕組み換え食品をラットに二年間投与する実験を行なっているので、その様子を撮影して欲しい、ということだった」。実験が行なわれている事は論文が発表されるまで外に漏れてはいけないため、スタッフは情報を口外しないという誓約書にサインをして制作したという。

元々遺伝子組み換え食品のみを取り上げる予定だったが、撮影中に福島の原発事故が発生。監督はこの二つのテクノロジーに”共通点”を見出したという。「原発も、遺伝子組み換え食品も、一部の“捕食者”たちが人々を食い物にするテクノロジー。(GM食品会社の)モンサントや東京電力のようなものが、取り返しのつかない結果をもたらすものを蔓延させている現状に断固”NO”といわなくては、という気持ちが生まれた」と監督は述べる。

「私たちが今するべき事は何か?」と問われると、監督は二つの”武器”があると述べた。「我々は”お金をどこに使うか”を選択することができる。モンサントが大きな力を持っているのはお金を持っているから。私たちは人類の未来に対して投資をしようという人々に対してお金を払うべきだ。また、私たちには”言葉”という武器もある。日本は原発事故の後、たった一年で原発を停止させるという快挙を成し遂げた。われわれを食い物にする捕食者に対して、断固”NO”を突きつけるべきだ。”NO”といわないことは”YES”という事と同じだ」。
 
会場には、学校給食に関係する仕事をしているという客や、実際に映画にも出演した福島の農家も来場。トーク後のFAQでは、「大資本が私たちを食い物にする、というのは食品産業だけの話ではない。他の業界のことも取り上げて欲しい」という声が上がるなど、熱心に声を上げようという気運を感じる夜だった。

映画『世界が食べられなくなる日』は、6月8日より渋谷アップリンクにて公開予定。