刑務所の面会室へと向かう人々の心の軌跡を描いた『愛について、ある土曜日の面会室』。
12/15(土)の公開を記念して、12/4(火)にトークショー付き一般試写会を開催致しました。

本作には、殺された息子の死の真相を探りに祖国アルジェリアからフランスへと渡る母親ゾラが登場します。彼女は、息子を殺した青年の姉セリーヌと接触し交流を深めてゆきます。
そこで浮き彫りになるのは、被害者家族と同様に苦しむ加害者家族の姿です。「もっと自分に何かできたのではないか…」と自分を責める家族の姿は、愛する家族をもつすべての人にとって、決して他人事ではないのではないでしょうか。
今回は、日本で唯一の加害者家族支援をしていらっしゃる阿部恭子さん(NPO法人World Open Heart理事長)にご登壇いただき、加害者家族の実情などを語って頂きました。

【トークショー実施概要】 

■ゲスト/阿部恭子さん(NPO法人World Open Heart理事長)
■日時/12月4日(火) 21:00〜(本編上映後)
■会場/シネマート六本木 スクリーン4

<阿部恭子さんプロフィール>
1977年宮城県生まれ。10代前半より、社会的少数者や弱者の権利擁護や生活を支援する活動に参加。2008年8月、東北大学大学院在学中に自ら発起人となり同級生らと人権問題を調査研究するための団体World Open Heartを設立。これまで見過ごされてきた「犯罪加害者家族」という問題に気がつき、仙台市を拠点として当事者に必要な支援活動を開始。全国的な支援体制の構築に向けて東京、大阪でも活動を展開している。近年、再犯防止教育の一環として受刑者らに加害者家族の現状を伝える活動にも力を入れている。

——本作をご覧になってのご感想を教えてください。
私は第一回目のマスコミ試写会に駆けつけてこの映画を観たのですが、刑務所の面会室で語られる雰囲気は映画を見ているという気がしなくて、仕事をしているときのようなリアルさがありました。

——具体的にどのあたりがリアルだと感じられたのですか。
日本では土曜日に面会はできない、面会室で触れ合ったりできないなど、面会のシステムがフランスとは違うのですが、刑務所は遠い所にあったり、仕事を休んで面会に行くなど、時間もお金もかかって大変なことだというのは同じだと思います。
面会は30分位の時間の中でお話をするわけですが、外から来る人と中にいる人との感情のギャップがとてもあります。中にいる人は「待ってたのに今頃来たのか!」
という想いがあり、一方家族たちは「やっと来れたのよ!」という想いでいます。
映画の中に映る感情は、現実のものととても似ていました。

——阿部さんの活動について、具体的に教えてください。
あまり考えたくないことではありますが、潜在的に誰もが加害者の家族になる可能性を持っています。交通事故なども含めると、家族がなにか罪を犯してしまうことを避けるのは不可能なので…。
私たちは突然加害者になってしまった人が家族の中にいる方のために、離婚など様々な手続きのための情報提供や、面会室や裁判所に付き添ったり、
という活動をしています。一番需要が多いのは転居の手続きです。

——面会室に付き添いで行かれるそうですが、どんな様子なんでしょうか。
日本の家族独特なのかもしれませんが、照れくさい、気まずいという感情がお互いにあるようです。なかなか本音を伝えられずにいるので、「本当は早く顔を見たいとお母さんは思っていたけど、面会室に来るのになかなか仕事も休めなくて大変だったんだよ」など、本人では伝えられないことを伝えるメッセンジャーのような役割を担っています。

——最後に一言お願い致します。
言葉では説明できないことを感じられるのが映画だと思います。
家族が罪を犯してしまうということは、あまり想像したくないことではありますが、私は愛する大切な人のために闘う人たちを応援したいと思っていますので、ぜひ一人でも多くの人に映画を観て頂いて、この映画をきっかけに塀の中の人のことも考えてもらえればと思います。