本年度のオスカーで最有力候補と見られている「ゼロ・ダーク・サーティ」のLAプレミアが、アメリカ時間10日、ハリウッドのドルビー・シアター(旧コダック・シアター)で行われた。

  オサマ・ビンラディンを探し出そうとするCIAの努力を内側から描く本作は、『ハート・ロッカー』で史上初の女性オスカー監督に輝いたキャスリン・ビグローと、同作品で脚本賞を手にしたマーク・ボールが再びタッグを組んだ意欲作。
 製作準備が大詰めを迎えた段階で、ビンラディンが殺害されたため、急遽、脚本をほとんど書き直すという、思わぬ困難にも直面したが、そこからさらにリサーチを重ねることで、10年にも渡るビンラディンの捜索、捕縛そして殺害に至るまでの真実を描いた衝撃の作品が出来上がった。長きに渡りその詳細がベールに包まれてきた上に、大統領選への影響が懸念され最近までかん口令がしかれてきた為、アメリカでも本編がお披露目されたばかりという状況にも関わらず、先週より始まっている映画賞レースで作品賞や脚本賞、主演女優賞などを続々と受賞していることもあり、期待がますます高まっている。そんな中でのプレミア実施ということもあり、世界中からマスコミが集まり、熱を帯びた取材合戦となった。

 会場には、キャスリン・ビグロー監督、マーク・ボール、ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジェームズ・ガンドルフィーニ、マーク・ストロングなどフィルムメーカーや主要出演者のほか、ミラ・ジョヴォヴィッチ&ポール・W・S・アンダーソン夫妻、アナ・ファリス、アーロン・ポールなどのセレブリティが駆けつけた。
  エリ・サーブのブルーのドレスとハリー・ウィンストンのピアスというゴージャスなスタイルで現れたジェシカ・チャステインは、オスカーの感触を聞かれると、「それについてはわからないわね」と謙虚にコメント。「この映画についてはずっと秘密主義を貫かなければいけなかった。語ることは許されなかったの。2週間くらい前になって、ようやく人に観てもらえるようになったと思ったら、みんながすばらしい反応をしてくれているので、本当に感激しているところなのよ。とてもうれしい!!」と語った。チャステインが演じるマヤという役は、ビンラディンを追いつめたCIA分析官の女性で、実在の人物にもとづいて描かれている。「この映画は、普通、世間から見えないところで働いている人たちの努力を描くもの。この映画を作ったことで、その人たちに感謝の気持ちを示せたような気もしている」(チャステイン。)本作で再び、脚本家およびジャーナリストとして飛び抜けた才能を証明したマーク・ボールは、「キャスリン・ビグローは才能あふれるフィルムメーカー。そんな人と僕は『ハート・ロッカー』、本作と2つも映画を作ることができた。今回も、彼女は僕の脚本をすばらしい映画に仕上げてみせてくれたよ」と、製作パートナーを誉め称えた。

  偶然にも、このプレミアが開かれたのは、毎年オスカーが開催されるのと同じ劇場だ。2ヶ月後、キャストとフィルムメーカーは、再びここで顔を合わせるだろうか? 『ゼロ・ダーク・サーティ』の日本公開は2月15日。