(規模の大きなプロジェクトだと思うのですが、さすがに映画の中で、これは大きいなと思った事はありますか?)
堺:さすがにここで、僕が頂いたギャラの事はお教えするわけにはいかないですが・・・
菅野:言っちゃえ!言っちゃえ!(笑)
堺:言っちゃいましょうか?映画(2010年公開『大奥』)⇒テレビ(TBSドラマ「大奥〜誕生[有功・家光篇]」⇒映画(『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』という大きなプロジェクトなんですが、僕が参加させていただいたドラマと映画の時点では、既に、前作の映画があり、大きな流れが動き始めていた最中ですので、聞いてるときからワクワクするような、何しろプロデューサーのワクワクに乗せられて、現場に入りました。原作がなにより今でも続いている、『大奥』サーガと言われてもいいぐらいの壮大な物語ですので、原作読んだ時には、あまりのスケールの大きさに、身震いしたというか、本当に面白い物語だなと思ったので、原作の大きさが一番印象に残っております。
菅野:衣装合わせとか現場に入った時とか「あれ、自分が思ってる時よりも大がかりなんじゃないか?」と思いました。
自分の事では、久しぶりの京都の撮影所での撮影で必死だったので、シーンの写真を見せて頂いた時に、西田敏行さんと堺正章さんのシーンがあるんですけど、お二人のシーンを光明寺で撮影されていて、光明寺の飾りの豪華さにこれ大作だと気づきました。自分の撮影ではお鈴廊下も今までで一番長い廊下だったそうなのですが、そこも気づかず、飾りを見て、大作と感じました!!
堺:内掛けも豪華で、お鈴廊下も豪華絢爛で、とても似合ってらっしゃって、あまりにも必死で覚えてらっしゃらなかったと思いますが、下から控えてる人間としてはとても素敵な上様でしたので、付け加えさせていただきました。

(男女逆転といわれても男性らしい部分/女性らしい部分がありましたが、演じ分けされましたでしょうか?)
堺:右衛門佐は男らしい男で、権力志向上昇志向がある、たまたま入った先が、男女逆転した世界ということだったんですが、今、ドラマで演じている有功は矛盾も含めて飲みこんで、噛み砕くというある意味女性的な人物でしたので、男性的な右衛門佐/女性的な有功という風になんとなくのイメージをしました。
菅野:表で仕事している時は男性的で、ときめく人がいる時は、女性的で、一つのキャラクターで相反する要素をどうやって演じたらまとまりのあるキャラクターで演じられるのかなと思ったのですが、原作で、天真爛漫で支離滅裂みたいな危うい女性の中でも相反するところがあったので、いつでも反対側の要素をなんとなく、意識の中に残して演じる様にしております。

(堺さんはストイックにされるというお話を聞いて、動物の走り方を研究したりといった役作りなどをされた事があるとお伺いしたのですが、今回役作りはされたのですか?)
堺:動物の走り方は参考にはなりませんでした・・・(笑)。原作が面白いので、この面白さをそのままお伝えしたい、遜色ない物を作れたらという思いがありまして、右衛門佐は水無瀬というお公家さんの家なんです。水無瀬神宮というゆかりの場所が撮影中に行く機会がありまして、郡司さんでありお公家さんとお話する機会がございました。水無瀬という持っている歴史をお話をしていただき、少しイメージが固まり、有意義な時間が過ごせました。水のおいしい神社で有名なのですが、テレビドラマの際も何度か伺うぐらい素敵な神社でした。
菅野:女性で将軍の役をやらせていただけるなんて、一生に一度の機会だなと思ったいたのですが、どうやって、将軍家に生まれたかを想像しようかと思ったのですが、それは無理だと理解しようとする役作りではなく、この人はこういう世界で生きている人なんだと自分とは別だと思うようにしました。同性として、子を失った悲しみとか自分の人生が崩れて行くってところは理解しやすかったですし、あとは共演者のみなさまが素敵な方たちだったので目を見て、精一杯やるという感じでした。

(共演される前の印象と後の印象をお聞かせください。)
堺:何作か作品を拝見していて、何を考えているかわからない怖い女優さんのイメージで、作品によって、全然違うイメージでそれぞれの役を本当に素がこの人なんじゃないかぐらい演じられているので、大竹しのぶさんと舞台で御一緒させていただいた時、しのぶさんの天真爛漫さと違う憑依する感じ、あんまり近づかない方がいいのかなと思う感じだったのですが、今回ご一緒させていただいて、すごく捉えどころがないと言うか、右衛門佐がなんとか綱吉に爪痕を残そうとして、一本の矢の様に深く深く突き刺すようなお芝居の連続なのですが、いくら突き刺しても、菅野さんに突き刺さらない様な気がしてですね、それは結果的に見てみたら、菅野さんの役作りだったんですが、ふところが深くて、どんな言葉をなげかけても、深い淵に小石を投げ込んだように動かない様な気がして、大丈夫なのかなと思っていたのですが、ラストシーンで全て届いてたことが分かりました。まるごと、役ごと飲みこまれてしまったような、本当によくわからない人だなと思いました。
菅野:どの役をやられている時も、ご自身の中でテーマがあって、役作りへの意識の高さが、役の後ろから滲みでているような方だなと思っていて、あとは、草食系のイメージだったんですけど、植物というような感じの人でした。
研究熱心だなってのは、私が思っていた以上で、右衛門佐の期間中は、研究が進み過ぎて、江戸時代のお話なのに鎌倉時代までいきまして、役のルーツとかそういうところから、流れにもどすようなことをします。
監督がすごく困っていて、「俺、堺さんに質問されても困っちゃうよー」って言ってました。
ドラマの時はお手柔らかにって言っておきました。
穏やかな中にもきびきびとした情熱がある俳優さんだなと思いました。時代劇だと着物だったり所作は、心情を演じようと思うと枷に感じる時もあるんですが、そういうところもきっちりとノルマじゃなく、能動的にやっている感じがしまして、素晴らしいなと思いました。

(この作品からどんなメッセージを受け取ってほしいですか?)
堺:男女逆転という特殊な状況を描いた作品ではあるんですけど、出来上がったものをみてみると、本格的な普通の時代劇になっております。京都の伝統あるスタッフの方々が丹精こめて作った作品で、東京ではなく、京都で作った意味がある作品であります。なるべく色んな方に見ていただきたですし、テレビシリーズをご覧になっていらっしゃらない方も、男女逆転ということを頭に入れていただければ、楽しめる作品です。原作もお読みになっていない方も楽しめますので、どこにだしても恥ずかしくない恋愛映画が出来上がっております。
菅野:元禄時代のお話なので、セットもそうなんですが、それぞれのキャラクターの着物が美しくて、男性の着物に色があるというのは男女逆転ならではのものだと思っております。見ごたえのある場所、世界遺産だったり、名所での撮影も多かったので、色んな意味で見ごたえがあります。原作の素晴らしさはもちろんですが、出演されている方の演技が素晴らしかったので、逆に気軽に映画館に来て下さい。