映画と中目黒をもっと好きに── 
映画館のない中目黒に生まれた、無料の映画上映プロジェクト「中目黒シネマズ」が2013年1月よりスタートします!

今回、来年2013年1月の本格開始に向け、11月24日(土)にプレイベントとして小規模な無料上映を実施いたしました。開場1時間前からお客様が並び始め、5分前には定員数に。満員御礼の中、ウディ・アレン監督の傑作『アニー・ホール』の上映、そして上映前後には松崎健夫(映画文筆家)氏&中井圭(映画解説者)氏による作品解説トークショーを行いました。
 壁一面を覆う巨大スクリーン、そして通常の映画館の客席とは違い、アンティークなソファや椅子、また前方ではラグを敷いた床に座る映画鑑賞スタイルをご提供し、非日常的かつ、新たな“映画体験”を楽しんでいただきました。

 今回のプレイベントに寄せられたご意見・リクエスト・アドバイスを反映させ、12月下旬(予定)には第二回目のプレイベントを、そして2013年1月より本格的にプロジェクトスタートを迎えます。「中目黒シネマズ」の今後に、ぜひご注目ください!

【松崎健夫(映画文筆家)&中井圭(映画解説者)による作品解説トークショー】
「初めてでもわかるウディ・アレン論」

中井:「中目黒シネマズ」プレ開催にたくさんの方が集まってくれて嬉しいです。開催告知後にものすごい反響をいただいて、みなさん本当にありがとうございました。2013年1月に「中目黒シネマズ」は本格始動いたしますが、記念すべき今回の第一回目プレイベントがウディ・アレンの『アニー・ホール』となりました。本日は「初めてでもわかるウディ・アレン論」ということで、映画の魅力を多くの人に気付いてほしいというコンセプトの元、進めていきたいと思います。

『アニー・ホール』とウディ・アレンについて
松崎:『アニー・ホール』は1977年のアカデミー賞「作品賞」他、様々な部門で賞を穫った作品。同じ1977年に公開された『スターウォーズ』がアカデミー賞を穫るか!?と思われたが、『アニー・ホール』が受賞。昔のスペースオペラを復活させたものではなく、芸術性の高いものがアカデミー賞に選ばれたところが良いですね。名作中の名作です。

中井:「ウディ・アレンは世界中の映画ファンから愛され、色々な賞でノミネートされたり受賞したりしている。そもそも何故こんなに世界的に愛されているのでしょうか?」

松崎:ウディ・アレンはもともとギャグライターでコメディアンになった人で、映画を目指して作っていた訳ではないんです。彼の作る作品には「こんな映画の手法があるのか?」と思わせるところがあり色んな人が注目しました。当時ウディ・アレンはメジャーの資本を使わず、自主制作に近い形でNYで映画を撮っていました。

俳優にとってみれば、ハリウッドの形が決まったものではなく、自由なものに出演出来ることが魅力。安定したお金のためにシリーズものをやらねばならないなど、本人の意志ではなくエージェントの思惑が渦巻く中、ある種、自主製作のウディ・アレンのところにいけば自由に、そして芸術に貢献出来るかも、という期待があるのです。だから小振りなウディ・アレンの作品にでも有名スターが出ていることがありますね。その面で世界中の役者から評価が高いのです。

中井:メジャーから一歩距離を置いているところで独自に挑戦出来るそ ところに色んな人が集まるんですね。

松崎:また、ウディ・アレンは評論家からも評価が高いですね。彼の映画にはユングや、精神論、などトリビアみたいに出てくるんです。それが評論家からすると語りたい点となる。

『アニー・ホール』以前のウディ・アレン
松崎:ギャグライターをやっていたこともあって、最初はお笑い映画が中心でした。しかし『アニー・ホール』を機転にして、シニカルな面でもう少し人間をみていこうとなったのです。ウディ・アレンはそのころ鬱になり、人間は何故悩むのだ?と考え、人間の多面性を理解した、と。鬱になった原因として彼の女性が強く、女性に虐げられた家庭環境や過去を思い出したのです。彼はモテる顔じゃないけれど、どうしたら自分が良い男になれるか、と考え、人間は外見じゃない面もあると気付きました。『アニー・ホール』を観れば分かりますが、男女の関係は外見だけじゃない結びつきがあると気付いたんですね。ちなみにアニー・ホールを演じているダイアン・キートンはウディ・アレンの元カノなんですが、別れた後に元カノを主演に迎えている不思議な関係。そこも観てみると面白いですよ。

中井:ウディ・アレン作品において、自分が主演で出ているときは自己投影していると思います。
松崎:『アニー・ホール』はかなりその要素があると思います。鬱になって、自分の本心を映画で明かすことによって、自分が鬱を乗り越える自身のセラピーになっていますね。『アニー・ホール』は元々殺人事件の話だったが、彼の当時の精神状態から、男女の関係だけを抜いて作った作品です。元カノとこんなシーンを撮っている…、セリフから何故この二人は別れたのだろう..と「実生活で別れた二人」という結果を知って『アニー・ホール』を観るのも面白いですよ。

『アニー・ホール』以降のウディ・アレン
中井:『アニー・ホール』が注目を浴び、初期のコメディ・タッチから変わり、作風を保ちながらもここ最近2000年代NYを離れて彼は世界中で映画を撮っていますが心理的な変化はあったのでしょうか?

松崎:NY生まれでNYが好きだったのでしょう。映画監督は老齢になった時、いろんな作品を残したいと思うようになる。黒澤明でも、5年に1本のペースで撮っていたのが、『夢』以降は2年に1本というスゴいペースになっていたほど。ウディ・アレンにとってNYで撮る、ということが足かせになっていたのではないかと思います。また、彼は『アニー・ホール』でアカデミー賞を受賞した際、NYのバーでクラリネットを吹いていて、受賞式に出席していません。しかし、9.11の事件があったとき、「NYがんばれ」というメッセージを伝えるために1度だけ出席しています。あのころくらいから、彼の作風が変わってきていると思います。色々な題材や場所で撮り始めるきっかけになったのではないかと。自分自身もあまり出演しなくなりました。最近の彼の作品は、今のうちにいろいろと撮っておきたいという自由な発想で撮っている感じがしますね。『ミッドナイト・イン・パリ』が大絶賛されたのは、『アニー・ホール』のころのような、アートに関するトリビアや芸術性が戻って来た、そしてオーウェン・ウィルソンがウディ・アレンのように演じていた、と再評価されたところですね。最高の興行成績を出しました。

中井:ウディ・アレンが40年近くアメリカ、ハリウッドに君臨していながら、その芸術性が証明されましたね。彼が新作をたくさん撮っていることをマーティン・スコセッシがこう称しています。作品の善し悪しはどうでもよく、ウディ・アレンの人生を追いかけることに意味がある、と語ってます。彼は多才で、今、ウディ・アレンが何を考えているのか、が投影されているのが彼の作品なのです。

松崎:監督・脚本・主演を継続して40年もやり続けている人は本当に希有で、世界的にウディ・アレンだけなのです。「あの人は何故作り続けていられるのだろうか?」と、今映画監督を目指す若い人にもそのヒントを彼の映画から盗んでほしい。低予算でNYで映画を撮り続けるという、その「ポジション」を築くことが大事。映画作りはお金がかかります。自分の作りたいものを作る土壌をつくりながら、信奉を集める映画作り。ウディ・アレンはそういう作り方をしていると思います。彼くらいの才能があれば超大作は撮れるが制作しない。それは自分の立ち位置を明確にしているからでしょう。

中井:ずっと映画を作り続けていきたいのでしょうね。映画づくりが仕事だけど趣味である。
松崎:そうですね。そして『アニー・ホール』はそんな彼の本当に代表的作品であると思います。

「中目黒シネマズ」
♦公式サイト:http://nakamegurocinemas.jp
♦公式Facebook: http://www.facebook.com/NAKAMEGUROCINEMAS  
♦公式Twitter:https://twitter.com/nkmcnms

「中目黒シネマズ」プレイベントvol.1
『アニー・ホール』〈ウディ・アレン作品一挙20タイトル・リリース記念上映〉
♦場所:目黒区青少年プラザ7F レクリエーションホール(65名まで入場可)
♦作品:『アニー・ホール』(ウディ・アレン監督作、ブルーレイ上映)
♦松崎健夫(映画文筆家)&中井圭(映画解説者)による作品解説トークショー
「初めてでもわかるウディ・アレン論」
♦入場無料(満席の場合は入場不可)♦同時開催:中目黒村マルシェ URL: http://www.nakameguromura.jp/

「中目黒シネマズ」プレイベントvol.2  12月下旬を予定。作品選定中。
第1回「中目黒シネマズ」  2013年1月下旬、本開催を予定。(イベント詳細は近日公式サイト、公式Twitter、公式Facebookにて発表)