27日に行われました宮地昌幸監督と脚本家の大河内一楼さんのスペシャルトークショーが執り行われました。

日時:10月27日(土)20:30〜  場所:テアトル新宿  司会:藤津亮太
  
MC: まずは、大河内さん、完成したものをご覧になっていかがでしたか?

大河内:初めて出来上がったものを観た時の印象は、エネルギッシュなものになったなと思いました。僕の中で脚本はすごく少女漫画っぽいというかメロウな印象があったのですが、完成した作品は、ふくよかで、ビビッドで、華やかなになったと思います。監督のキャラクターに似た感じに出来上がっていると思いました。

監督:何かこの距離感でこういう話を聞くのは恥ずかしいですね(笑)
   ありがとうございます!

MC: 大河内さんが原作の文庫本で書かれている解説に、宮地監督が吉祥寺のハモニカ横町に大河内さんを呼んでこの企画やりませんか?と誘ったのが今回のきっかけだった、とありましたが。

宮地:はい。そうです。前回の作品では気のあった仲間が集まり、仕事をしていましたが、今回はあえてまったく違ったタイプの人達とやってみたらいいかと思い挑戦してみました。
少女漫画の女の子を主人公にする事に精通している人がいいと思っていて、大河内さんが元々持っている雅さや少女漫画的な感覚を出してもらえたらと思いお願いしました。

MC:原作は、3部構成になっていて映像化となるとかなり難しそうな印象がありますが、どうでしたか?

大河内:まず分量が多く、要素もいっぱいあるので、これは100分ぐらいのものにまとめるのは難しいなと思いました。ただ、宮地さんと話した時に浜路と信乃の話にしよう、とお互いの意見が合致したので、そこから、何を削るか話をしていきました。

監督:僕が初めて原作を読んだ時はまだ連載中のもので、3部構成の真ん中の部分だけだったんです。これは難しいとプロデューサーに話をしていたところ、書籍になるにあたり、浜路と信乃の話が頭の部分と後半に出てくると聞き、以前から自分の中で少女を主人公にしたものをやってみたいという思いがあったので、挑戦してみました。

MC:浜路はどんな女の子だと思いますか?

大河内:一言で言うのはすごく難しいですが、何もないところからどんどん色が付いていく女の子なんだろうなと思いました。

宮地:自分の事を「俺」と呼び、山でおじいちゃんに育てられた少女が田舎から出てくる、「おしん」みたいな話なんです。最後は信乃から吉原でもらった着物を着て鉄砲を背負って助けに行くんですが、大事にとっていた着物を戦闘服にするというアイデアは大河内さんから頂いて、すごくいいなと思いました。浜路の成長していく様を(男でも女でもないところから始まって)ハイスピードカメラで花が咲いていく迄を撮っているように表現できたらいいなと思い作りました。

MC:大河内さん、原作は時代ものですが、どのあたりを意識して作られましたか?

大河内:時代ものとしては、意識せず、むしろ、江戸の町が舞台というところを意識しました。ロケハンに行った時、江戸の町って意外にも川の町だったんだ、ということを再認識し、脚本段階で、登場人物が川沿いに住んでた方が良いね、と話しました。移動も船だったり、積極的に水辺を意識して作りました。

MC:基本的には、ロケハンでアイディアが出てきたりしたんですか?

大河内:はい。最後の花火のシーンとお祭りのシーンが橋のあたりで行われたりするのは、博物館に行った時に当時のその画がすごく良かったんですよね。その流れで脚本を書いていきました。

宮地:原作を見ていたら深川とその周辺が多く出てきたので、大河内さん曰く“ヴェネチア”じゃないですけど、少しロマンチックな川沿いの暮らしが描けたらな、と考えました。江戸時代にしてしまうと土と木と・・・どんどん色味も暗い感じになってしまうので、少女の物語にはヴェネチアだって言った方が乙女チックに描けると思いました。

MC:観た人の感想を聞いてもやはり、美術がすごくて、色味が鮮やかでキレイだったって言う感想が多かったんですが、宮地さん自身は本物の江戸を表現する気はなかったんですよね?

宮地:でも、最初は史実に基づいて色々と本をみたり、研究しました。ただ、江戸を史実通りに再現しようとすると過去に名を残している方たちがやっている中で自分はその人達に到底かなわないと思いやめました。

MC:冥土のキャラクターについてですが・・・

大河内:浜路が江戸に来て必要なのは、友達だろうというところから始まり、でもそれはイケメンの男の子ではなく、女の子だろうという事で冥土が誕生しました。

宮地:色々ストーリーを考えていく中で女の子だとつじつまが合うというか・・・信乃に神社で冷たくされ、家に帰りたくない時・・・すこし恥ずかしいけど、仲良くなった冥土の家に行くっていうところも設定にぴったりはまった感じがしました。
主人公の少女が大人になっていく物語全体の流れに、女の子の冥土がどう作用するのか、ということをすごく考え、いろんな場面をシミュレーションした結果、うまくハマる部分が多かったので、桜庭先生にも相談して許諾を頂きました。

MC:今回映画化をするにあたり大変だった事はありましたか?

大河内:一番最初の時ですね。どこをどう削るか、原作が面白かっただけにその未練を断ち切る事が難しかったです。

宮地:色々やりたい事はありましたが、一番はアニメーションにする意味を考えました。アニメーションを見て楽しんでもらい、そのあとに小説を読んでもらい、互いに違うけど、それぞれ面白かったって言うのが理想的ですね。例で言うと、信乃の苦しみながら変身していくというのは、すごくアニメ的なんですね。
プラス、セクシャルに描けるという要素があったのでアニメに向いてると思いました。

MC:声については?

宮地:長屋のメンバーはすごかったですね。一緒に集まって一気に収録できたのはすごく有意義で良かったです。寿さんは、昔、僕がよく聞いてた日高のりこさんのような正当派の声優さんだと思いました。少しこんな感じにして下さいってお願いした時の反応もすごく良かったです。
宮野さんは、声を入れる時とそうじゃない時のON/OFFがはっきりしていてすごいと思いました。

MC:宮野さん、思ったよりもすごく少年ぽい感じだった気がしたんですが・・・

宮地:多分、それは宮野さんが寿さんの声とあわせた時に少し寂しげな感じをご自身の感覚で瞬時にこうしようと思ったんじゃないでしょうか。家定と対決する時もす「こうしたい」っていう意見を言ってくれたり、嬉しかったです。すごく引き出しの多い声優さんでした。

MC:大河内さんは、聞いてて印象的な声はありましたか?

大河内:僕は冥土ちゃんですね。僕はすごく冥土ちゃんのキャラクターが好きです。

MC:皆さんへメッセージ

大河内:僕は実は完成した本編を観たのが2回目だったのですが、今回は、凍鶴のシーンがすごく泣けてきたんです。1回目は浜路と信乃を追って観ていたので、そこに気づかなかったんですが。そんなこともあって、この作品は出来れば、2回以上観て欲しいと思いました。

宮地:浜田真理子さんの挿入歌が流れてくるシーンがありますが、あのシーンの絵コンテを描いていた時にちょうど震災が起きました。信乃と浜路には絶対結ばれない溝があって、それは、同じく人間と伏、物語の世界の人と現実の世界の人、死んだ世界の人とこちら側の生きている人っていう関係性みたいなものへと拡張して観てもらえたらいいなとも思っています。
「生き残った事をうしろめたく思わないで」という台詞があるんですが、寿さんに何度か、「映画を観ている人達にも届くように言って下さい」と伝えて録り直させてもらいました。2012年の今を振り返ってもらえるようになっていると思うので、そんな部分も感じてもらえたら嬉しいです。

この日は、トークショーの後、宮地昌幸監督と大河内一楼二人によるサイン会も開催され、会場ロビーは大混雑、その列は階段の上まで続き、イベント終了後も多くのファンの熱気で包まれました。

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