第25回東京国際映画祭では開催に先駆け、下記の概要でApple Store, Ginzaにて2日間に渡りイベントを行いました!

「新しい才能に出会う」−東京国際映画祭の楽しみ方−
日時:10月6日(土)14:00-15:30
登壇:
矢田部吉彦(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター「コンペティション」部門担当)
石坂健治(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター「アジアの風」部門担当)
作品選定を手掛けるプログラミング・ディレクターの2人が、25回という節目の年を記念して、世界中から集まった上映作品から、「新しい才能に出会う」をキーワードとして今年度のおすすめ作品をご紹介しました。作品選定の裏話も織り交ぜつつ、部門を横断して語らいました!

1日目は「新しい才能に出会う」をテーマに 矢田部吉彦氏(以下、矢田部PD)と石坂健治氏(以下、石坂PD)によるークイベント。
コンペティション部門よりインドの天才新人監督による『テセウスの船』、アジアの風部門より韓国の同じく新人監督作品『眠れぬ夜』、日本映画・ある視点部門より新人女性監督作品『少女と夏の終わり』など、5部門より計14作品が紹介された。
映画祭の作品選定についての話になると、石坂PDは「ジャンル・監督のキャリア・地域などを考慮して全体的にバランスよくなるように気をつけています。今年は第25回目にふさわしくゆかりのある監督の作品が集まりました。数多くの作品を鑑賞するので公平に観られるように体調管理が基本です」と、
矢田部PDは「今回500本近い作品を観ました。1日10本ということも。10本も観続けると精神状態も変わってくるので、選定に影響しない様に1本目と10本目を同じ精神状態で観られるようにしなければなりませんでした。」と語った。また、「評価が定まっていない作品や監督など、新しい才能に遭遇することを楽しんでいます。それにロジャー・コーマンほか審査員の方々が、我々の選定した作品をどう観るか楽しみです。日本はアジアの中でも魅力ある映画市場です。TIFFに多くのアジア作品が集まり、アジアの映画文化を釜山国際映画祭とともに世界に発信し、ビジネスに繋げていけたら。」と今後のTIFFの展望を示した。

「インディペンデント映画を作ること・上映すること」
日時:10月8日(月・祝)14:00-15:30
登壇: 小林啓一監督(『ももいろそらを』)
矢田部吉彦(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)
第24回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門で作品賞を受賞した『ももいろそらを』小林啓一監督をお招きし、監督自らが作成したファイナルカットの映像や様々な記録写真を交えつつ、インディペンデントで映画を完成させるまでの道筋、東京国際映画祭を経て世界の映画祭を回ってきた経験、そしてロードショーを控えた心持などをお聞きしました。

2日目は「インディペンデント映画を作ること・上映すること」をテーマに、第24回東京国際映画祭、日本映画・ある視点部門 作品賞受賞『ももいろそらを』の小林啓一監督、原田博志プロデューサー、矢田部PDによるトークイベント。『ももいろそらを』をつくったきっかけ、作品が出来上がるまでの経緯、世界各国の映画祭を巡った感想などを聞いた。
小林監督は「日本のインディペンデント映画は、撮影日数を短く、ボランティアスタッフを多くしてぱっと終わらせる傾向があるが、良い映画を作るために少人数で期間を長く、各自が自分の役割を担って作っていくものづくりをしたかった。そのため、2カ月半という撮影日数をかけた。」と語る。
矢田部PDは、女子高生の会話が生き生きしていることを、一語一語が効いている見どころだとし、小林監督は「電車の中で会話を聞いたり、ステレオタイプの女子高生像を反面教師とした」と答えた。キャスティングに関しては、脚本が出来上がった時点で各プロダクションに持ち込み、おもしろいと手を挙げたところと会って、顔合わせをした。主人公のいずみ役に関しては、オーディションの時に会話がぎこちなく、ぼんやりしているところが逆になんでも吸収してくれるのではないかと感じさせたところから、池田愛に決めた。
リハーサルには2、3カ月かけ、キャストが役を掘り下げるようにした。やっていくうちに役になりきっていった。
出資者が、脚本段階でついていたが、最終的に降りてしまい、原田プロデューサーが自ら工面することとなった。
完成後、30ほどの映画祭に応募したが、なかなかノミネーションされず、小林監督が原田プロデューサーにいら立ってしまうときもあった。そんなとき矢田部PDから東京国際映画祭の「日本映画・ある視点」への出品の話があり、結果的に作品賞を受賞した。その後、サンダンス映画祭、香港国際映画祭などへの出品が決まったが、サンダンス映画祭でプロデューサーに、「ハリウッド映画以外は全部インディペンデント映画だ」と言われ、「海外で名前を売りたい。ハリウッドに挑戦したい」という意気込みを感じたと語った。
Twitterや会場から質問を受け付け、2人が答えた。
Q.モノクロの描写は、観る人にとってどのような印象を受けると考えますか?
A.違和感を感じさせつつもモノクロはぐっと画面に観客を近寄らせる効果があると思う。ひとつの武器だと思う。

Q.脚本執筆にあたって、小林監督が思い描いた女子高生像とはどのようなものですか?
A.求めるよりも与える側の人物として描こうとした。書くうちに主張する女子高生に変わってきた。

Q.映画館で見ることと、iPadやiPhoneの配信で見ることと共存すると思いますか?
A.映画館は時間を共有する、体験することだと思う。iPadで見るのとは違う行為として共存する。(小林監督)
 配信で見るのも良いと思うが、我々は大きな画面で見ることを前提で作っているので、映画館でのライブ感も楽しんでほしい。(原田プロデューサー)
 両方とも別物なので、共存できる。リュミエール兄弟が不特定多数に見せる映画を作り、エジソンが一人を対象に箱で見せる映画を作ったのを思い出させる。