10月20日(土)公開の園子温監督最新作『希望の国』に出演している村上淳が、10月12日(金)にシネマート六本木にてトークイベントを行いました。

登場するやいなや「写真もいくら撮ってもいいですよ」と気さくな人柄でなごませながら、イベントは始まり、『希望の国』や俳優という仕事に対する、村上淳の真摯で熱い思いがあふれたトークに会場を埋めた観客たちは大きくうなずきながら聞きいっていた。

「3・11に僕は映画館にいたのですが、人間として、俳優として何ができるのか、どちらが先なのか悩みました。エンターテインメント業界にいる人は全員考えたと思います。(この仕事が)何の役にも立たないし、こんな時に歯もたたないのではないかと…。そして僕はただ待つことにしました。」と冒頭に東日本大震災後の思いを語った。「園監督がこの映画を撮ろうと思ったとき、まっすぐに非難を受け止めるつもりだったと思うし、その覚悟は生半可なものではなかったと思います。観た方から『この映画良かった』という感想が強ければ強いほど、当人たちは複雑な気持ちにもなるような映画ですからね。僕は初めてこの映画を観た時に何も手がつかなかったし、どうすればいいか分からなかったんです。そしてもう一度観て理解していったという感じです。こんなすごいショットが撮られていたんだという驚きがとても多い映画でしたが、それは園監督の熱量や誠実さからなんだと思いますね。それに日本はとても美しい国なんだと改めて思いました、これは映像詩です。そして、園監督の映画の現場には映画の神がいるんです。園子温監督が神がかる瞬間があるんですね。そうするとそのエネルギーが僕らにも回ってきて気がついたら本気になっている。園監督の現場は不思議なんですよ。今回みたいに被災地にカメラを持ち込んだり、監督が攻めたり、切実に作りたい! と思ったときに僕は『大丈夫! ここに俳優がいますから』って言えるようでいたいですね。本当にそう思います。身を削っている監督は信頼できますし、僕も俳優として何かできる時にはやる、という覚悟で毎日腹をくくっています」

父親役で共演した夏八木勲について「40歳を前にして夏八木さんと共演できたことは、僕の今後の俳優人生に影響してくると思います。現場でも絶対に台本は読まないし、長いセリフも大丈夫。リハーサルでもテストでも一切手を抜かない本気なんです。僕が父親からビンタされるというシーンがあったのですが、テストを入れると10回以上本気で叩かれました。それが嬉しかったんです。映画ってやっぱりそうだよな、と思って。夏八木さんは、いつでもピッとなさっていて、とても大きな人なんです。どういう仕事のアプローチをしていけばこんなスケールの大きな俳優になれるんだろうと考えます」と名優の姿勢を見て大きな影響を受けたことを語った。
いよいよ10月20日より全国で公開される『希望の国』──。

「この映画は観たというだけでも意義があると思うんです。長い時間ずっと上映されるといいなと思っています。こういうバトンは常に誰かが受け継いで、風化させちゃいけない。本当にこの作品が封切られて、2番館、3番館でも上映されて、もう次からはかからないだろうっていうところまでいかないと僕は落ち着かないくらいです。」