映画『東京家族』初の一般試写会にて、山田洋次監督から熱いメッセージ!山田洋次監督 舞台挨拶
『家族』、『幸福の黄色いハンカチ』、『息子』、『学校』シリーズ、『おとうと』、そして『男はつらいよ』シリーズで、その時代、時代の家族を見つめ続けてきた山田洋次監督。
監督作81作目となる新作は、日本映画界の巨匠、小津安二郎監督に捧げる作品。
家族の絆と喪失を描いた『東京物語』から60年—。
山田洋次監督が映画『東京家族』で、今の日本、そして私たち家族の物語を描きます。本作は、2013年1月19日(土)に公開いたします。
現在、京都四條南座では、本年8月18日より、山田洋次 監督生活50周年記念イベントとして、『山田洋次の軌跡』が開催されており、いよいよその第二部が10月6日よりスタート。これまで、第一部では『男はつらいよ』シリーズや『家族』『学校』など数々の作品が上映され、連日大盛況となりました。
監督作全80本がフィルムにて上映される本イベントですが、会期中より受け付けたリクエスト投票により、最終日10月24日には、『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』と『幸福の黄色いハンカチ』が選ばれ、ラストを飾る上映作品に決定いたしました。
その京都四條南座にて、監督にとって81本目となる最新作『東京家族』の特別試写会を、35mmフィルム上映にて開催。会場は3年ぶりの山田洋次監督作品を待ち望んでいた500人の観客で溢れました。今回の上映が、一般のお客様に披露される初めての試写会となったこともあり、舞台挨拶にかけつけた山田監督からは、本作にかける熱い想いが語られました。
【舞台挨拶概要】
●山田監督
この作品は、2011年4月にクランクインの予定でした。ところが、3月11日を迎えてしまいました。最初は茫然として、これから一体どうなっていくのかという思いだけでした。その次に原発のメルトダウンという事態となり、原発というものの認識が足りなかったと思いました。
この時点で、このまま撮影に入るのはやめるべきではないかという考えが起こりました。撮影を中止するということは、経済的にも、集まったスタッフを解散するという人的問題もあるのですが、会社と話し、一旦中止し時間をおいて考えてみようという結論に至ったのです。
1年後、今年の3月1日にあらためてクランクインし、8月にようやく完成しました。スタッフ、関係者試写は数回実施しましたが、一般の方にご覧いただく試写は、今日が全国で初めてです。
ですので、今日は、皆様がどういう風にこの映画を感じるか、判決を待つ被告のような気持ちでおります。
●司会
先日、世界の映画監督が投票で決める映画史上最も優れた作品に、小津安二郎監督の『東京物語』が選ばれました。
『東京家族』も『東京物語』を下敷きとして製作されていますが、小津監督が描いた、この家族の物語が世界中で不朽の名作として愛されている理由を監督はどうお考えでしょうか。
●山田監督
英国映画協会のトップ10は10年ごとにおこなわれます。
権威のあるトップ10に連なるということは世界に認められたということです。
今年は「市民ケーン」が2位。あの「市民ケーン」を抜いて1位になったと世界中で話題になりました。
時を越えて、国を越えても「家族というものは、やっかいなもんだ」という世界中の人が悩みを共有できる、そういうところが評価されたということでしょうか。
●司会
本日上映いたします『東京家族』はフィルム上映で、二階席に設置してあります大きな映写機で上映します。
最近はデジタル上映が中心ですので、映写機の音を聞きながら映画を観る貴重な機会ですね。
●山田監督
映画もフィルムとともに110年の歴史ですが、今、まさにそのフィルムがなくなろうとしています。場内が暗くなり、映写機を通じて明かりが出て、そして映し出される画像は独特の味わいがあるものです。
そういう意味でも今日の上映会は大事な上映会です。
明かりが消え、暗くなり、カタカタとフィルムが回りだす…・・・。
そういう雰囲気での映画を楽しんでいただければと思います。
【京都四條南座「山田洋次の軌跡」最終日10月24日(水)の上映作品決定!】
「山田洋次の軌跡」大千穐楽にあたる10月24日の上映作品につきましてはお昼11時上映分を「男はつらいよ」シリーズより、夕方16時上映分をそれ以外の山田監督の作品より、リクエストを募っておりましたが、これまでの投票を持ちまして、それぞれの上映作品が決定いたしました!
11時からは、「男はつらいよ」のシリーズ第25作「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」を、16時からは、「幸福の黄色いハンカチ」を上映いたします。
「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」は、歴代のマドンナの中でも屈指の人気を誇る、浅丘ルリ子扮するリリー3度目の出演作品で、美しい沖縄の自然のもと、寅さんとリリーとの大人の恋が繰り広げられます。
最後には爽快なラストシーンも。
「幸福の黄色いハンカチ」は、第1回日本アカデミー賞作品賞、キネマ旬報ベスト1など、数々の映画賞を独占しました。今では、胸躍るラストと共に、日本映画史に残る不朽の名作として語り継がれています。
主演は高倉健。共演は、倍賞千恵子、桃井かおり、武田鉄矢、渥美清。
いずれも山田監督の代表作といえる人気作品で、まさにこのイベントの掉尾を飾るにふさわしいものとなりました。
「山田洋次の軌跡」最終日、心温まる名作をたっぷりとご堪能ください。
大勢のお越しをお待ちしております!
<多くのリクエストを集めた作品>
■11時分
1作目「男はつらいよ」15作目「寅次郎相合い傘」
17作目「寅次郎夕焼け小焼け」38作目「知床慕情」
48作目「寅次郎紅の花」
■16時分
「家族」「息子」「たそがれ清兵衛」「武士の一分」