映画『王様とボク』の関西公開初日舞台挨拶が9/22(土)心斎橋シネマートで行われた。

登壇したのは、映画初主演にして6歳の心を持つ18歳の青年・モリオ役に挑んだ菅田将暉さん(『仮面ライダーW(ダブル)』)。モリオとの再会で忘れかけていたピュアな感情を思い出すミキヒコ役・松坂桃李さん(ドラマ『梅ちゃん先生』映画『ツナグ』『今日、恋をはじめます』)。2人の共通の友人、トモナリ役の相葉裕樹さん(『侍戦隊シンケンジャー』)、前田哲監督(『ブタがいた教室』『猿ロック』)の4人。

トークでは、隙があればお互いに突っ込みを入れ合い、立ち見も出た観客の爆笑を呼ぶ4人。撮影現場での信頼関係が伺えるような絶妙のやりとりの数々に、観客も大いに楽しんだ様子だ。

●ハードな撮影現場について
撮影期間が短くハードな撮影だったが「毎日モリオでいられたのが楽しかった」と語る菅田将暉さん。
菅田「クリスマスに学校で撮影だったので、みんなで過ごせたのが思い出ですね。家庭科室でクリームシチューにフランスパンの食事が出て。いいですよね!」

松坂「外で食べたクリスマスケーキは美味しかったね。男同士でフライドチキン食べたり(笑)」

2人のシーンが多く共通の思い出を語る管田さんと松坂桃李さんに、「もの凄い疎外感!(笑)」と相葉裕樹さんが会場を笑わせる一幕も。

●現場の雰囲気について●
松坂「楽しかったですよ。菅田将暉とは東映時代の仕事も入れて3回目の仕事ですが、現場に入るともう6歳なんで大変でしたね。カメラが回っていないところでも6歳そのものです(笑)」

●思い出深いエピソード●
相葉「二階堂ふみちゃんとのシーンがいくつかあるんですけど、面白い子だなって。刺激をもらったし、凄く楽しい現場。短い時間だったけど楽しい発見もいっぱいあって充実した時間を過ごすことができました」

●前田監督の雰囲気づくり●
前田「3人は元々仲がいいし、撮影しやすかったですね。それぞれの持っているもの、18歳の頃感じたものや思い出を出してもらうために話をしました。ちょっと前までは18歳だったんで。今は単なるオヤジですけど」

すかさず松坂さんが「20代前半ですよ。彼に至ってはまだ10代です!(笑)」と突っ込む。前田監督の「そうなんだー」というのんびりした返しに爆笑が起こる。

●10代の頃、大人になりたかったか●
菅田「早く歳を取りたかったですね。半世紀、1世紀と生きたいなって。俺100歳だぜって自慢したい。過去に戻るよりどんどん先に行きたいなって思います」

松坂「その時は大人になりたいって思ってましたね。“大人になると分かるよ”って言われることがよくあって」

前田「大人になっても分からんよ」(笑)

松坂「撮影の現場で毎回新しい発見があるにつれて、子供みたいな好奇心を今取り戻している感覚ですね」

菅田さんから相葉さんへの「マイクが近い。ずっとキスしてる」という突っ込みに、「今日はマイクが友達だと思っているから(笑)」とやり返す相葉さん。

相葉「単純に怖かったですね。大人になることがよく分からなくて、子供のままでいたい自分がいました。今もよく分かってないけど、そういう感情を抱いていたことを忘れつつあったんです。でもこの映画でその時の記憶を取り戻しましたね。淡くて儚くて何ともいえない感情なんですけど…。今でも正直、自分が大人かどうか分からないですけど、子供心や遊び心を失いたくないというのは常に思っています」

●『王様とボク』を観る方へ●
菅田「この映画でモリオと係って、モリオに「お前は人生を楽しめよ」って言われた気がして。この半年間はすごい充実していて、失敗したこともたくさんありましたけど楽しかったですね。この物語には切ない気持ちや、人間の前に進みたいけど進めないモヤモヤした気持ちが詰まっている気がしました」

松坂「この作品を観たときに懐かしさ、自分がその年齢を過ごして来た時の流れをもの凄く感じましたね。“楽しむ”という気持ちを自分が忘れかけていたことも。観終わったみなさんの心の中に何かが残ると思います」

相葉「儚くてせつない映画になっていると思います。観る度に感想も変わるし全く違った映画に見えてくるので、それそれ楽しんでいただきたいです。自分なりの青春時代をこの映画で取り戻してくれたらいいなと思います」

前田「このタイミングでこの3人と出会えたことがラッキーでした。この作品には、この3人の思い、10代のときに感じたこと、今感じたことを出してもらえたと思っています。大人になるのはいいこともあるけど、どんどん何かを失っていくことであったり、傷ついて悲しみを知っていくことでもあります。この映画を観た後に、身近で大切な方の気持ちを思いやってもらえたらいいなと思います」

原作は1992年の発刊されたやまだないとの名作コミック『王様とボク』(イースト・プレス刊)。18歳のミキヒコは、体は大人だが心は6歳の少年のままのかつての友達モリオと再会。王様のように自由に振舞うモリオと行動を共にすることで、自分自身を見つめ直すミキヒコ。抱えてきた不安や戸惑いを乗り越え大人になることの意味を受け入れて、成長していく。
元々原作の大ファンであり、10年間に渡って実写映画化を熱望してきた前田哲を監督に迎え、原作者との共同脚本にすることで、根強い原作ファンへも配慮がなされた。ファンタジーをまとった新解釈のラストによる2012年現在の青春映画をぜひ楽しんでいただきたい。

(Report:デューイ松田)