26日は『マッド』の公式記者会見の後、16時半から映画祭のクロージング作品である『テレーズ・デスケルウ』のプレス向け試写を鑑賞。今年の4月4日に急逝したクロード・ミレール監督(享年70歳)の遺作でもある『テレーズ・デスケルウ』は、フランソワ・モーリアックの同名小説の2度目の映画化で、主演はオドレイ・トトゥ。1920年代を舞台に、不幸な結婚をし、夫を毒殺しようとしたブルジョワ階級の女性テレーズの葛藤と悲劇をミステリアスに描いた作品だ。
 また、併行部門の“監督週間”と公式部門第2カテゴリーの“ある視点”部門が本日で閉幕となり、国際批評家連盟賞も発表された。

●国際批評家連盟賞(FIPRESCI)受賞作:
『イン・ザ・フォッグ』(コンペティション部門)/『ビースツ・オブ・ザ・サウザン・ワイルド』(ある視点部門)/『ホールドバック』(監督週間上映作:監督&批評家週間部門)

◆ある視点部門のクロージング上映作は、印象派の偉大な画家の晩年の姿に迫ったフランス映画『ルノワール』!

 今回、全20作品が上映された“ある視点”部門のアワード・セレモニーが、ドビュッシー・ホールで19時15分から行われた。この部門の審査員を務めたのは、英国の演技派俳優&監督であるティム・ロス(審査委員長)、フランスの女優レイラ・ベクティら総勢5名。授賞式の司会者は映画祭ディレクターのティエリー・フレモーで、今年はメキシコ映画の『アフター・ルチア』が作品賞を受賞。また、監督賞に代わり、女優賞をダブルで授与する結果となった。ところで、登壇した審査員を紹介し、各賞を発表した審査委員長ティム・ロスのテンションが異様に高く、舞台上を所狭しと動いては、はしゃぎ回っていた姿が強く印象に残った。授賞式の後には、クロージング作品『ルノワール』のジル・ブルド監督がスタッフ&キャストを率いて登壇。監督が舞台挨拶した後、『ルノワール』の上映が行われた。
 ロマン・デュリスが主演した前作『メッセージ そして、愛が残る』が日本でも公開されたフランスのジル・ブルド監督の長編4作目となる『ルノワール』は、印象派絵画の巨匠ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841年2月25日〜1919年12月3日)の晩年の姿を描いた作品で、高名な画家に扮した仏映画界の重鎮ミシェル・ブーケのソックリぶりも話題となった家族ドラマだ。
 1915年、南仏コートダジュール。前世紀末に海辺の街カーニュ・シュル・メールの土地を買い、“コレット荘”に移り住んでいた画家のルノワールは、妻アリーヌを失った悲しみ、持病リューマチの痛み、戦場から届いた次男ジャンの負傷の知らせに苦しんでいたが、彼の最後のミューズとなる若くて美しい赤毛の娘アンドレと出会い、彼女をモデルにして創作意欲を燃やしていく。やがて、自宅療養するために家に戻ったジャンが、父の意に反して、アンドレに夢中になり……。後に有名な映画監督となる息子のジャン役は子役出身のヴァンサン・ロティエ。後にジャンと結婚し、女優となるカトリーヌ・エスラン(アンドレは愛称)役はクリスタ・テレ。そして画家の三男クロード(愛称ココ)役は、ダルデンヌ兄弟の『少年と自転車』で天才的な演技を見せたトマ・ドレが演じている。“ある視点”部門の受賞結果は以下の通り。
(記事構成:Y. KIKKA)

●ある視点賞
『アフター・ルチア』:マイケル・フランコ監督(メキシコ)
●審査員賞
『ル・グラン・ソワール』:ブノワ・デレピーヌ&ギュスターヴ・ケルヴェルン監督(フランス/ベルギー)
●女優賞
エミリー・デュケンヌ:『アペルデュ・ラ・レゾン』ヨハヒム・ラフォース監督(ベルギー/フランス/スイス)
シュザンヌ・クレモン:『ロランス、エニウェイズ』グザヴィエ・ドラン監督(フランス/カナダ)
●スペシャル・メンション
『チルドレン・オブ・サラエボ』:アイダ・ベジック監督(ボスニア・ヘルツェコビナ/ドイツ/フランス/トルコ)