公式記者会見が3連発で行われた23日(水)は、11時15分からの『オン・ザ・ロード』に引き続き、12時半から行われた『ホーリー・モーターズ』の記者会見に出席。そして、学生映画を対象とする“シネフォンダシヨン”部門(審査委員長はベルギーのジャン=ピエール・ダルデンヌ監督)の〈プログラム1〉(出品作15本を4区分し、3日間に分けて上映)が、14時半から始まるため、14時からのベルナルド・ベルトルッチ監督作『ミー・アンド・ユー』の公式記者会見は泣く泣くパス。東京芸術大学大学院の昨年の卒業制作作品『理容師』が、“シネフォンダシヨン”部門に選出され、〈プログラム1〉で上映された秋野翔一監督の囲み取材へと向った。その後、19時半からはカルロス・レイガダス監督のコンペ作『ポスト・テネブラ・リュクス』(正式上映は24日)のプレス向け試写を、続いて『7デイズ・イン・ハバナ』のソワレ上映を鑑賞。

◆フランスの鬼才監督レオス・カラックスが、13年ぶりの長編映画『ホーリー・モーターズ』でコンペに参戦!

 昨晩のプレス向け試写で観た『ホーリー・モーターズ』は、長編デビュー作『ボーイ・ミーツ・ガール』を1984年の批評家週間に出品して注目を集め、1986年の2作目『汚れた血』で“ゴダールの再来”と騒がれるも、続く1991年の『ポンヌフの恋人』の興行的な失敗により長く低迷したフランスの鬼才監督レオス・カラックスが、1999年のコンペ初参戦作『ポーラX』以来、13年ぶりに撮った長編映画(ただし、2008年にミッシェル・ゴンドリー、ポン・ジュノと1話ずつを担当した短編オムニバス『TOKTO!』で“ある視点”部門に登場)だ。
 寡作な映画作家レオス・カラックスの長編5作目にして、まさしく復活作となった本作は、過去の自作に対するノスタルジー(『ポンヌフの恋人』に登場したサマリテーヌ百貨店の巨大な廃墟を舞台の1つにしたり、『TOKYO!』に登場した怪人キャラクター、ムッシュ・メルドを再登場させたり等)をも感じさせる奇抜かつ寓話的な物語で、主演は“アレックス青春3部作”でカラックスの分身を演じた朋友ドゥニ・ラヴァン。共演にはキューバ系アメリカ人女優エヴァ・メンデス、豪州出身の人気歌手カイリー・ミノーグという個性的な顔ぶれに加え、エディット・スコッブ、ミシェル・ピコリらフランスのベテラン俳優を配している。
 物語の主人公であるオスカーは白いリムジンに乗ってパリの街を徘徊する謎の人物。彼はリムジンの運転手であるセリーヌから渡された指示書に従って様々な場所に赴き、銀行家、浮浪者、誘拐犯、殺人者など、色々な役柄の男に成りきって演じていくのだが……。
 12時半から始まった公式記者会見には、白髪の増えたレオス・カラックス監督、ドゥニ・ラヴァン、カイリー・ミノーグ、エディット・スコッブらが登壇。映画製作の準拠について問われたレオス・カラックス監督は「映画製作はまるで島のようなもの。美しくて大きな墓場のあるね」と喩え、ドゥニ・ラヴァンについては、「ドゥニは出会った時よりも1万倍も成長した。30年前、彼は無分別な彫刻だった。それ以来、僕が今まで見たことのないほどの努力をしてきたんだ」と讃えた。一方、一日の物語の中で10役ほどを次々と演じ分けていったドゥニ・ラヴァンは、この難役について、「冷静に我慢し、信頼を寄せて取り組んだのはラストの雌猿と絡んだシーン」だと語った。

◆キューバの首都ハバナの一週間を、7人の監督が描いた短編アンソロジー『7デイズ・イン・ハバナ』に喝采!

 22時半からドビュッシー劇場で上映された“ある視点”部門の『7デイズ・イン・ハバナ』は、旅行や仕事でハバナの街を訪れた外国人や現地で生きる人々など、多彩な登場人物が織りなす人間模様を“曜日”ごとに7人の監督が活写し、エモーショナルな音楽で彩った珠玉のアンソロジーで、本作で監督デビューを飾ったアメリカの個性派俳優ベニチオ・デル・トロが月曜日、パブロ・トラペロ(アルゼンチン)が火曜日、フリオ・メデム(スペイン)が水曜日、エリア・スレイマン(パレスチナ)が木曜日、ギャスパー・ノエ(フランス)が金曜日、ファン・カルロス・タビオ(キューバ)が土曜日、ローラン・カンテ(フランス)が日曜日を、それぞれ担当して演出。出演はジョシュ・ハッチャーソン(月曜日編)、エミール・クストリッツア監督(火曜日編に本人役で登場!)ダニエル・ブリュール(水曜日編)など。22時半からのソワレ上映前には6人の監督たちとエミール・クストリッツアが登壇して挨拶を行い、上映後には会場から熱い喝采が贈られた。
(記事構成:Y. KIKKA)