この度、第69 回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門(以下、ヴェニス・クラシックス)にて木下惠介生誕100 年を記念し、『カルメン故郷に帰る』(1951 年製作、英題:CARMENCOMESHOME)が上映されました。(現地時間8/31 日(金)17:00より)。
上映に先立ち、ゲストとしてイランを代表する世界的な映画監督であり、同映画祭オリゾンティ部門審査委員もつとめるアミール・ナデリ監督(※)が登壇。プレゼンテーションが行われました。
会場となったSALA PERLA には200名以上の観客が集まり、4K解像度(4096×3112)によるスキャンを取り入れた最高技術によるデジタル修復(上映は2K)で、画・音ともに蘇ったデジタルリマスター版『カルメン故郷に帰る』を上映、作品の上映終了とともに会場には拍手が巻き起こりました。
今回は、長い歴史を誇るヴェネチア映画祭において、新たに創設されたヴェニス・クラシックス(クラシック部門)の記念すべき第1 回目であり、その船出に相応しい、世界的な名作19 作をリマスターしたラインナップが用意されています。木下作品はそのうちの栄えある1 作品として注目を集め、日本からの報道陣はじめ、海外のプレス、各国映画祭関係者が集まり、木下監督作品への関心の高さがうかがえました。カンヌ国際映画祭での選出に続くヴェネチア国際映画祭での選出に、世界各国の配給会社から木下監督作品への問い合わせが集まっており、世界的に関心が高まっています。
この度上映となったデジタルリマスター版『カルメン故郷に帰る』は、今後日本では、「木下惠介生誕100年祭」(11月23日〜12月7日場所:東劇(東銀座)にて日本凱旋上映されるほか、9月26日にBlu-rayとしてリリースされます。

※アミール・ナデリ監督
カンヌ国際映画祭パルムドール受賞監督アッバス・キアロスタミやモフセン・マフマルバフと並び、イランを代表する映画監督。日本映画に造詣が深く、2011 年には西島秀俊を主演に迎え「CUT」を手掛けた。

■アミール・ナデリ氏プレゼンテーションでの主な内容
私が日本で作った映画「CUT」で、小津安二郎監督のお墓を撮影しました。そこには、日本映画のもう一人の巨匠、木下惠介監督のお墓が向かい合っていたのです。この出来事は、新しいスタイルの日本映画を作ろうとしている私にとって、大きな暗示でした。
黒澤明監督と溝口健二監督は日本の歴史を、小津監督は日本の家族を、成瀬巳喜男監督は女性を描きました。その中にあって、木下監督は非常にモダンな人でした。映画界に新しい風を起こし、喜劇、実験的映画、メロドラマ、社会派等、様々なジャンルで映画を作りました。現代的な映画作りをする木下監督は、時代劇にしても、必ず観客は彼の作品だとすぐ分かります。木下映画は、ルネ・クレールやウィリアム・ワイラーを想起させ、色使いや音楽はヴィンセント・ミネリのようです。「日本の悲劇」は、ロベルト・ロッセリーニの作品に近いものを感じます。木下監督の描く女性の性格はとてもモダンで新鮮です。これはとても重要なことです。そして木下監督は60 年代以降の日本の映画監督、例えば相米慎二監督に大きな影響を与えたと思います。ハリウッドと同じように、日本の撮影所システムで、小津監督や溝口監督あるいは成瀬監督のように、木下監督は自らの刻印を映画にはっきりと押した人なのです。
私は日本が好きで、過去の日本映画を愛しています。どうぞ「カルメン故郷に帰る」を皆さん楽しんで下さい。

今後の展開
『カルメン故郷に帰る』デジタルリマスター版の日本での展開予定は、以下の通り
■日本凱旋上映
東京・東劇にて開催される【木下惠介生誕100 年記念祭】(11/23〜12/7)にて凱旋上映が決定!
※第13 回東京フィルメックスとの共催企画(11/23〜12/2)
※本年5 月カンヌ国際映画祭で上映された「楢山節考」デジタルリマスター版と共に日本初上映になります。
■9 月26 日(水)『カルメン故郷に帰る』Blu-ray リリース発売・販売元:松竹(株)映像商品部4,935 円(込)
【今後のデジタルリマスター展開予定】
松竹(株)では、『楢山節考』に続き、『カルメン故郷に帰る』のデジタルリマスター作業(4Kスキャニングによる)を進めています。