現地時間2日、カナダ・モントリオールで開催中の「第36回モントリオール世界映画祭」で映画「遺体 〜明日への十日間〜(英題:REUNION)」のワールドプレミア上映が行われ、君塚良一監督が舞台挨拶、記者会見に登壇、作品に関する想いを語った。

 本作は、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手・釜石市の遺体安置所での出来事をルポルタージュした石井光太氏の「遺体 震災と津波の果てに」(新潮社刊)を原作とし、更に映画制作チームが独自の取材を重ねて映画化。震災直後の混乱状態の中、釜石市民は自らも被災者でありながら同じ町に住む人たちの遺体の搬送、検視、DNA採取、身元確認など辛い役割を担った。犠牲者を一刻も早く家族と再会させてあげたい、その思いひとつで遺体や遺族と向き合ったのである。そこには、犠牲者を単なる「死体」として扱うのではなく「ご遺体」として接するという日本人の死生観が現れている。
モントリオール世界映画祭がワールドプレミアとなった本作。上映には多くの観客が駆けつけ、改めてその関心の高さが感じられた。

【ワールドプレミア上映前の舞台挨拶】
君塚監督が「昨年の3月、日本では大きな地震と津波で2万人近い人が犠牲になりました。この映画は被災地の人たちが犠牲者のために何をしたのかを描いています。報道では伝えきれなかった「真実」を世界の皆さんに伝えたかったのです。日本人の心を感じてください」とコメント。会場からは大きな拍手が沸き起こった。
【上映後の様子】
2回の上映に数百人の観客が集まったが、上映後の客席は深く静かな感動に包まれながらも、すすり泣く声が響いていた。また、劇場外でも監督に思いを伝えようと50人ほどの行列ができた。

観客からは、以下のような感想が監督へおくられた。
「ご遺体に対して、生前のお名前で呼びかけるシーンにとても感動した」
「モントリオールという遠く離れたところに暮らしていて後方支援しか出来なかったが、被災された方に思いを寄せていることを伝えてほしい、と改めて思った」
「この作品を忘れないでいこうと思った。」
「作品を作る勇気に感動した」
「“TSUNAMI”という言葉自体は知っていたが、本当の震災の内側については、この映画を通して初めて知った。」

【ティーチインにて】
Q:英題を「REUNION」にした理由は?
「震災によって離ればなれになった家族がまた再会できるよう実際に多くの人達が頑張りました。そういった日本人独特の死生観を描きたく「REUNION」(再会、再結合などの意味)としました。」

Q:作品を撮る上での想い
「作品のモデルになった被災者の方々には何度もお会いして、『本当の震災の内側を多くの方に知ってほしいので映像化させてほしい』と映像化への想いをお伝えしたのですが、その時に被災者の方より『“真実”を描くのであればぜひ映像化してください。』というお言葉をいただきました。その言葉があったからこそこうやって作品にすることができました。」