映画祭5日目の20日(日)。“コンペティション”部門では、ミヒャエル・ハネケ監督の『アムール』とトマス・ヴィンターベア監督の『ザ・ハント』の2作品が、そして、映画祭の会長ジル・ジャコブによる65回記念上映作『ユンヌ・ジャーニー・パーティキュリエール』が正式上映された。
 今日は8時半からの『アムール』の観賞後、コンペの2作品、『アムール』『ザ・ハント』の公式記者会見をパスし、周辺取材に出かけたのだが、生憎の雨で写真が撮れず、仕方ないので開幕日に撮った写真で対応する羽目に! 今年でカンヌ映画祭の取材も19回目だが、これほど悪天候なのは初めての経験だ。この週末になって大きく天気が崩れたのだが、時折、強風と激しい雨に見舞われた上、気温も異常に低いため、冬物のコートを羽織っている人もいるほどだ。それも昼間よりも夕方から夜にかけて雨脚が強くなる。特に今日は最悪で、正式上映が19時半開始の『アムール』と22時半開始の『ザ・ハント』はソワレ用に着飾った観客たちが、横殴りの雨で、そぼ濡れてしまい、実に気の毒であった。

◆ミヒャエル・ハネケ監督のコンペ作『アムール』は
パリの裕福な家庭の“老々介護”の物語!

 カンヌの常連監督であるミヒャエル・ハネケは、エルフリーデ・イェリネクの小説を映画化した2001年の『ピアニスト』でグランプリ&男優賞(ブノワ・マジメル)&女優賞(イザベル・ユペール)の三冠を達成、2005年の『隠された記憶』では監督賞を受賞。そして2009年の『白いリボン』で最高賞パルムドールに輝いたオーストリアの巨匠監督だ。
 3年ぶりの新作となる『アムール』は、病いに倒れた妻を夫が自宅で介護する“老々介護”を通じて、パリの高級アパルトマンに暮らす老夫婦の“愛”の形を描いた作品。夫役は『男と女』の名優ジャン・ルイ・トランティニャン(81歳)、妻役を『二十四時間の情事』で知られるエマニュエル・リヴァ(85歳)というフランスの名優2人が演じている。監督の持ち味である“毒気”&“悪気”を封印した本作は、万人向けの感動作に仕上がっており、絶賛する人も多いのだが、あまりにも現実味に乏しいように思え、首をかしげてしまった。

◆海岸沿いに出現したインターナショナル・ビレッジでは各国の映画機構が自国映画を強力プッシュ!

 映画祭の期間中、各国の映画機構が出展し、自国映画をプロモートするパビリオンが立ち並ぶ映画村(インターナショナル・ビレッジ)が海岸沿いに出現する。
 各国のパビリオンでは、映画のプロモーションを円滑にするため、色々な趣向を凝らしたミニ・カクテル・パーティを行っており(筆者にも、これまでにロシア、エジプト、タイなどの国から招待状が届いた)、人気の交流の場となっている。日本は予算縮小のため、残念ながら2年連続でパビリオンの出展を断念したが、邦画全体のプロモーションを行うジャパン・ブースは例年通りメイン会場パレ・デ・フェスティバルの地下に設置され、積極的にプロモーション活動を行っている。

◆各国セラーのブースが立ち並ぶリヴィエラで、日本の会社がイベント“Sake Night”を共同で開催!

 メイン会場パレ・デ・フェスティバルに隣接する“リヴィエラ”は世界中の映画会社のセラーとバイヤーたちが交渉を繰り広げる映画見本市(マルシェ)の商談の場だ。ここには日本の映画会社やTV局の多くも個別に海外セールス用のブースを出して自社の映画の宣伝と売り込みを行っている。そこで、カンヌ映画祭に参加している日本法人が互いに協力し合って、日本酒や国産ビールやを振る舞い、日本独得の“おつまみ”を提供する恒例のイベント“Sake Night”が、今年も20日の夕方にリヴィエラ内のブース(A11&A14)で開催され、実に盛況であった。
(記事構成:Y. KIKKA)