『蛇イチゴ』(03)、『ゆれる』(06)、『ディア・ドクター』(09)で国内外の映画賞を総なめにし、いま最も注目される映画監督・西川美和。彼女の新境地となる本作の公開を記念し、男女ペア限定「男と女は【謎】」試写会を開催!松さん、阿部さん、鶴瓶さんの撮影現場でのエピソードや、その場に居たもう一人の女優<あの人>との壮絶なシーンについての思い出を語っていただきました。また本日は男女ペア限定の試写会だったこともあり、開演前に場内で「登壇者に聞きたい“男と女について“の相談」を募集。ピックアップした質問に登壇者が答え、既婚者の松さん、阿部さん、鶴瓶さんと、独身の監督が、それぞれの立場でアドバイスをすると、その意見の違いに登壇者も会場も大盛り上がり!「男と女は【謎】」のテーマにふさわしい、語り付くせない内容のイベントとなりました。

映画『夢売るふたり』舞台挨拶付き男と女は【謎】試写会
【日程】8 月27 日(月) 18 時00 分〜一般開場/18 時30 分〜開演
【場所】スペースFS 汐留(港区東新橋1-1-16 汐留FS ビル3F)
【登壇者】松たか子、阿部サダヲ、笑福亭鶴瓶、西川美和監督

■ご挨拶

笑福亭鶴瓶さん(以下、鶴瓶さん):
ども。僕はこの試写を夫婦で観ました。…えらいことになりました(※会場笑)。カップルとか夫婦は避けたほうがいいと思います。その理由は後でわかると思います…。最後まで、ドキドキしてご覧いただければと思います。

西川監督:
今日は大変暑かったですが、わざわざお越しいただきありがとうございます。(鶴瓶)師匠が仰ったとおりですが、この映画をカップルで観ることができるというのは、スゴイと思うんです。映画をご覧になった後の会話というのが楽しみです。

■阿部さんとの初共演について

松さん:
素敵な俳優さんだなと思って、いつか共演できればいいなと思っていたのですが、まさか夫婦役で、映画に出演させていただけることになるとは、自分ではちょっと思いつかなくて。こういう出会い方もあるのだなぁと、おもしろいなぁと思いました。阿部さんは掴みどころの無いような、でもとってもシンプルなような、そんな人。おもしろい俳優さんですね。一緒にお芝居をしていて“楽しい”と思える俳優さんだったので、(撮影期間中は)幸せな数ヶ月でした。

■阿部さんの色気が尋常じゃないと評判ですが、本作の撮影で意識されたことなどは?

阿部さん:
ちょっと…ハードルが高くなっちゃいましたが…。無いですね。色気とか、自信は無いです。今ある自分を出していただけで…。

■鶴瓶さん、西川監督とは『ディア・ドクター』以来2 作目とのことでしたが

鶴瓶さん:
僕が登場する場面は、たまたま激しいシーンでした。激昂するシーンとかがあるんですけど、楽しかったですね、久しぶりに。以前、この映画の撮影に入る前に、西川監督から僕に相談されたことがあったんですよ。

西川監督:
「結婚詐欺の話を書いているんです」と言ったら、師匠が「あ、俺知ってる。その被害者」と。そこで「すいません、ちょっとお話聞かせてください」と、2 人の方とお電話させていただきました。
被害者の人の感情ってすごく複雑で。単に悔しいとか、悲しいとかでは片付けられない思いがあって、何も知らなければ「馬鹿な女の人だな」と思うだけかもしれないけれど、本人に聞くと「ああーそりゃ、金出すなぁ」と…(鶴瓶さん:「愛してはりましたよね」。)そうですね。そのへんはすごく、騙される女性たちに投影したつもりです。

■この作品ならではの見どころは

西川監督:
女性を描いたのが本作で初めてで、特に松さんが演じられた里子というのが自分の内面を出さずに腹の中に抱えて孤軍奮闘している役だったので、セリフにしない、感情を爆発させないで、どうやってこの女の人を描いていこうか、というのが、この作品の勝負どころだと思っていたんですけれど、松さんのお芝居を見ていると「すべてこの人についていけばいいんだ」と思えるぐらい頼もしくて。複雑な個性である里子という役を、これ以上ないぐらい演じきっていただけたと思います。あとは現場で思ったのは、男女のお話を撮影していくと、暴力映画に近くなるんだな、ということ。それぐらい激しいシーンが多くて。阿部さんは、連日連夜、ひどい目に遭わされて。

鶴瓶さん:
ある方と阿部さんのシーンは僕も見たんですが、ホンマに…止まらへんかったもんな、あの人(笑)。終わってもまだ「はぁ、はぁ」って…。凄かったで!痛かったでしょ、アレ?!

阿部さん:
痛かった。だから、セリフには無かったんですが、本当に謝ったんです。そうしたら止まってくれたんですが、ずっと言ってました。「すいません」って(笑)。

西川監督:
あんまり凄くって。普通、暴力シーンの殴られるところなんかは、派手に見えるように効果音を後から足すんですよ。でも今回は全然つけてないです。「ナマの音ってこうなんだな〜♪」って(※会場笑)。

■本日は男女ペアの方限定で試写会、ということで、事前に会場の方から「男と女」に関する悩みを募集しました。

1) 29 歳・女性
付き合って7 年(同い年)の彼がいますが、結婚の話を出しても乗り気じゃありません。実家への挨拶も面倒臭がるなど。その気にさせるいい方法はありませんか?

鶴瓶さん:
今日カップルで来てるってことは「俺のことや」ってわかるでしょ、これ。だからもう解決してるじゃないですか。「言ってよ!」ってアピールで。遅かれ早かれ結婚するんでしょ。(彼女に「結婚しよう」と)言ってあげたらええがな。絶対結婚すべきやと思いますよ。結婚するべきですよ。絶対ケンカはしたらアカン。男は文句言う時はここ(ジャケットの陰)で隠して…ゴニョゴニョと。

2)21 歳・男子大学生
今度、気になる女の子を食事に誘おうと思うのですが。どうアプローチすればいいですか。阿部さん、教えてください。

阿部さん:
し、指名…?普通の男子大学生は、普通に言えないのか…?僕はそんな、食事に誘うタイプではないんですが…。その女の子の好きなものを…って言っても僕その人のこと知らないからな(※会場笑)。いや、大丈夫ですよ。誘えば絶対に来ますよ。21 歳の男性の魅力…“尋常じゃない色気”を出していけば(※会場笑)。後で映画を観ていただければ勉強してもらえると思います。

■松さん日監督はどういう風にアプローチされると嬉しい?
松さん:
相手が引くかも、って思うことを全部やってから、つきあったらいいと思いますけど…。全部やってみて「大丈夫」って子だ
ったら、いい子だと思いますよ!

西川監督:
アプローチされていなくて久しいので…(汗)。松さんが仰るとおり、包み隠さずというのは大事かもしれないですね。

阿部さん:
21 歳男子大学生、自分がずーっと温めてきた一発ギャグなんかを、やってみればいいと思うんですよ。

鶴瓶さん:
本気にするやん!絶対、せんほうがええよ!!!

■最後に
松さん:
これからご覧になって楽しんでいただければいいなぁと思います。どの部分が皆さんの心に響くのか、私達もわからないのですが、ここに来て下さったことに感謝しますし、この物語の二人が幸せなのか、最後まで見守ってあげてほしいなと思います。

阿部さん:
観た後に話し合える、観た人全員違うぐらいの意見がある映画です。男とは女とは、夫婦とは、それぞれ色々な感想があると思いますので、楽しんでください。なるべくなら“尋常じゃない色気”のことは忘れて…(※会場笑)。

鶴瓶さん:
僕の知り合いがこの作品を観たんですが、試写室を出ていく時に色んなお喋りをしていました。ずーっと喋ってはった。そういう、後を引く映画ですので、是非楽しんでいただければと思います。

西川監督:
公開前にこれだけの方がこうやって興味を持ってくださっていること、皆さんのお顔を拝見することができて勇気づけられました。たくさんの方に届くようにと、願っています。登壇者の皆さんが仰ったとおり、映画を観ることで会話したり、コミュニケーションを広げることも、すごく楽しいことだと思いますので、この作品を観た後にそういう時間を持っていただけるといいなと思います。