第65回カンヌ国際映画祭便り【CANNES2012】5
18日(金)は、一気に空模様が怪しくなり、涼しいを通り越して、冷たい雨に見舞われる肌寒い一日となった。そして、今日から上映作品と公式記者会見の数が一気に増え、我々プレスはスケジュール繰りに四苦八苦することに。まず、カンヌを取材する報道陣には歴然たるヒエラルキーがある(IDバッジの色分けによって優先順位がつけられ、待遇に大きな差がある)のだが、昨年よりワンランク上のバッチ(水玉付きのピンク!)を貰えた今年は、記者会見場への入場も実にスムーズ! とても喜ばしい限りなのだが、残念ながら体は1つなので、泣く泣く見送らざるを得ないモノもあるのが実情だ。ちなみに、本日の報道陣向けの映画上映と公式記者会見のスケジュールは下記の通り(出席したモノは※印)。
08:30〜:コンペ出品作『リアリティ』のマチネ上映 ※
11:00〜:『リアリティ』記者会見 ※
11:00〜:ある視点部門『ビースツ・オブ・ザ・サウザン・ワイルド』のマチネ上映
12:00〜:招待作『マダガスカル3』の上映 ※
12:30〜:コンペ出品作『パラダイス:ラブ』記者会見
13:15〜:ある視点部門『ロランス、エニウェイズ』のマチネ上映
14:00〜:65回記念上映作『ユンヌ・ジャーニー・パーティキュリエール』 のプレス向け上映
14:30〜:『マダガスカル3』記者会見 ※
15:45〜:〈オペレーション・ハイチ〉記者会見
16:45〜:ある視点部門『ビースツ・オブ・ザ・サウザン・ワイルド』のソワレ上映
19:00〜:コンペ出品作『ビヨンド・ザ・ヒルズ』のプレス向け上映(正式上映は19日) ※
22:00〜:コンペ出品作『ビヨンド・ザ・ヒルズ』の2回目のプレス向け上映
22:15〜:ある視点部門『ロランス、エニウェイズ』のソワレ上映 ※
15時45分からの〈オペレーション・ハイチ〉記者会見は、2010年1月に大地震に見舞われ、壊滅的な被害を受けたハイチのために立ちあがり、それぞれに支援活動を続けてきた俳優のショーン・ペン、映画監督のポール・ハギス、モデルのペトラ・ネムコヴァの3人が協力し、カンヌで開催するハイチ支援のチャリティ・イベントの告知を行うというもので、是非とも出席したかったのだが、17時半から“カンヌ・クラシック”部門で上映される『楢山節考』に先立ち、この作品の紹介役であるウルリッヒ・グレゴール氏を囲む会と取材があったために参加を断念。また、同じ“カンヌ・クラシック”部門でデジタル・リマスター版が上映される『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』は別会場にて18時45分からのスタート! こちらの上映前の紹介役は同作に主演したロバート・デ・ニーロとジェームズ・ウッズの名優2人。まさに垂涎モノで、ニュースバリューも高かったのだが、諦めざるを得なかった。さらには、ファティ・アキン監督のドキュメンタリーは14時半からの上映、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督のドキュメンタリーは17時からの上映(2作とも特別上映作品)と、オフィシャル部門だけに限っても、まさにバッティングの嵐が吹き荒れた1日であった。
◆メルヴィル・プポー主演、グザヴィエ・ドラン監督の異色作『ロランス、エニウェイズ』が“ある視点”部門で上映!
弱冠23歳のカナダの気鋭監督グザヴィエ・ドランの長編3作目で、上映時間2時間39分の力作『ロランス、エニウェイズ』が“ある視点”部門に登場。
1990年代。30才となった教師のロランス(メルヴィル・プポー)は、婚約者のフレッド(シュザンヌ・クレモン)に「僕はゲイじゃないが、女性になりたい」と告白する。それも2人の関係は保ったままでと。だが、当然ながらフレッドは困惑し、ロランスの女装姿を見た彼の母親(ナタリー・バイ)は激怒。フレッドは亀裂の入ったとロランスとの関係を修復しようと躍起になるが……。
モントリオール生まれで、子役出身のグザヴィエ・ドランは、過去の監督作2作がともにカンヌ映画祭に出品(デビュー作『マイ・マザー/青春の傷口』は監督週間で、2作目の『ハートビーツ』は“ある視点”部門で上映)された早熟の異才監督。本作でも、衣装やインテリア、小道具etc.にその独自の色彩センスを発揮し、エッジの効いた鮮烈なラブ・ストーリーに仕上げて魅せている(個人的にはタイトスカート姿のメルヴィル・プポーが披露した見事な脚線美にため息!)。
上映前に出演者たちと登壇し、舞台挨拶したグザヴィエ・ドラン監督は、俳優陣と共に中央の座席で作品を鑑賞。上映後には長いスタンディング・オベーションを贈られ、顔を上気させていたのが印象的であった。また新境地を見事に拓いたメルヴィル・プポーにとっても、本作は彼の代表作になるに違いなく、カンヌでの4年ぶりの再会を喜び、言葉を交わした筆者への対応からも本作に対する自信がありありとうかがえた。
朝の8時半から始動した本日の業務は、本作終了後に屯った上映会場ドビュッシーのロビーにて終了。ホテルに帰り着いたのは午前2時に近かった。
(記事構成:Y. KIKKA)