映画祭2日目の17日(木)。“コンペティション”部門で正式上映されたのは、フランスのジャック・オーディアール監督の『ラスト・アンド・ボーン』と、エジプトのユスリー・ナスラッラー監督が昨年の革命(アラブの春)後の日々を描いた人間ドラマ『アフター・ザ・バトル』の2作品。また、個性が際立つ映画作家、ロマン・ポランスキーとウディ・アレンを題材にして撮ったドキュメンタリー2作品が、“特別上映”部門と“カンヌ・クラシック”部門にそれぞれ登場。
 さらには、オフィシャル部門である“ある視点”も本日、開幕し、上映会場の“ドビュッシー”でオープニング・セレモニーが行われた。また、映画祭の併行部門(主催団体が異なる)の“監督週間”と“批評家週間”も開幕!

◆フランスの実力派監督ジャック・オーディアールの『ラスト・アンド・ボーン(錆と骨)』はエモーショナルな骨太作品!

 1980年代から脚本家として活躍し、人気女性ミステリ作家テリー・ホワイトの処女作「真夜中の相棒」を自ら脚色して映画化した1994年の初監督作『天使が隣で眠る夜』でカメラドールを獲得、続く1996年の『つつましき詐欺師』では脚色賞、2009年の『預言者』ではグランプリと、常に高い評価を得てきたジャック・オーディアール監督。今回、“コンペティション”部門に出品された長編6作目『ラスト・アンド・ボーン(錆と骨)』は、カナダの作家クレイグ・デイヴィットソンの短編小説2つを翻案して映画化した。
 姉を頼り、5歳の息子を連れてベルギーから南仏に辿り着いた無骨な男アリ(マティアス・スーナールツ)。やがて“闇格闘技”で日銭を稼ぎ始めた彼は、水族園でチャチの調教師を務めるステファニー(マリオン・コティヤール)と出会うが、ある日、ステファニーが調教ショーの最中に起きた事故で両脚を失ってしまい……。人間の孤独を見つめ、的確に描写するオーディアール監督の演出力は並大抵ではなく、主演の2人も素晴らしい演技を披露。結末は大甘の感もあるが、それさえも許容できるほど高揚感に満ちた秀作で、ロケ撮影されたカンヌ近辺の景観映像も印象的だ。
 朝の8時半からの上映に続き、11時から行われた本作の公式記者会見には、共同で脚色も手掛けたジャック・オーディアール監督、共同脚色者、主演の2人、そしてプロデューサーが登壇した。
 本作を「もっともっとタフでヘビーな物語であった原作をライト化し、ラブストーリーの要素を加味して映画化した」と語ったジャック・オーディアール監督は、背が高くて筋骨隆々なベルギー出身の俳優マティアス・スーナールツの起用について「背丈の低い男優を起用するのが好きなので、自分でもこのキャスティングに驚いている(笑)。この映画は歪んだ人間たちの物語なんだ。ゴミを漁って食べなきゃならないまでの底辺に落ちていた言葉足らずの男が、屈強な肉体で這いあがり、やがて言葉を上手く使えるようになっていくのさ」とコメント。監督の期待に見事に応えて好演したマティアス・スーナールツは、数年前のマイケル・ファスビンダー同様、カンヌから羽ばたき、あっという間にスターの仲間入りを果たすに違いない。今回、“両足”を膝上から切断し、引きこもる女性という難役に挑み、熱演したオスカー女優のマリオン・コティヤールは、「想像力のありったけを駆使して演じたわ」と述べ、特殊効果を駆使した撮影の苦労も語った。

◆“ある視点”部門の開幕作品はロウ・イエ監督による中国・フランス合作映画『ミステリー』

 現地時間17日の19時45分より、映画祭のオフィシャル・セクションである“ある視点”部門のオープニング・セレモニーが、パレ・デ・フェスティバルのドビュッシー・ホールで行われた。開幕作品は『スプリング・フィーバー』で知られる中国の監督ロウ・イエ監督の『ミステリー』(中国・フランス合作)。夫が若い女性とホテルに入るのを見て、夫の浮気と彼が二重生活を送っていたことを知った妻。その後、その浮気相手の女性が車に轢かれて死ぬが、他殺の疑いが浮上し…。主演はハオ・レイとチン・ハオ。
 また、併行部門の“監督週間”(上映会場はJW マリオット・ホテル)では、NY在住のフランス人監督ミシェル・ゴンドリーがブロンクスの高校生の実態を捉えた『ザ・ウィー・アンド・ザ・アイ』が、“批評家週間”(上映会場はミラマー・ホテル)では、今年の“ある視点”部門の審査委員長でもあるティム・ロス主演のイギリス映画『ブロークン』が、それぞれオープニング上映されている。
(記事構成:Y. KIKKA)