「週刊少年ジャンプ」連載時より、当時の少年誌にはあり得なかった、女性からの熱い支持を受け、シリーズ累計5700万部を突破、TVアニメも大ヒットを記録した国民的コミック『るろうに剣心』。原作のスピリットを忠実に引き継ぎながら、全く新しいオリジナルの作品として完成させたのは、「ハゲタカ」「白洲次郎」そして大河ドラマ「龍馬伝」の大友啓史監督。豪華出演者たちによる生身のリアルなアクションと奥深い人間ドラマの融合によって、日本映画の新たなる境地を開く比類なきドラマチック・アクション・エンターテイメントを作り上げた。今夏一番の話題作として注目度がますますアップしている大ヒットコミックの映画化には、大きな期待が集まる中、本作の公開を記念して大友監督によるティーチイン&質疑応答を実施いたしました。目の肥えた映画ファンが本作をいち早く観ようとかけつけた場で、果たして彼はどんなメッセージを投げかけたのか?

【日  時】 7月9日(月)
【場  所】 ワーナー・ブラザース映画 試写室(港区西新橋1-2-9 日比谷セントラルビル1F)
【時  間】 20:45〜
【登壇者】 大友啓史監督     司会:清水 節(映画評論家)

●ティーチイン

Q:『龍馬伝』も時代劇でしたが、今回は時代劇でもマンガ原作ということで、意識したことはありますか?

大友監督:もちろん原作は知っていました。今までと違った作風なので、最初はなんで自分にオファーが?とは思ったけど、逆に気になったのも本心です。「龍馬伝」で描いてきた幕末を生きたキャラクターたちが、明治ではどう生きていくんだろう…という意味でもね。やったことないジャンルの作品で、当然原作ファンの目も厳しい。そのハードルの高さにはやりがいを感じましたね。

Q:原作者の和月先生もすでに映画をご覧になっているということですが…。

大友監督:最初に和月さんからはCGを使わないリアルな作品に仕上げてほしいと言われました。和月さんとは本当に何度も打ち合わせを重ね、丁寧にキャッチボールをしながら一緒に作っていきました。漫画は自分のペースで読めるのに対し映画は入ってくるもの。漫画と映画の違いを、だれよりも和月さんが一番理解してくれていたからこそ完成した作品です。実は初号で和月先生が隣で観ていたんです。観終わった後手を差し出して「最高です、言うことないです、満足です」と言ってくださって、ほっとしました。(笑)

Q:佐藤健さんの剣心素晴らしかったですね。

大友監督:和月さんと話した時も、剣心は健しかいない!という点で意気投合でした。他作品でご一緒させていただいた際に、身体能力も演技力も一流なのはわかっていましたから。今回はアクションにも相当こだわっていますよ。それも魅せるアクション。ドラマ性とアクションの融合は一番気を使った点でもあります。

Q: 今の日本はリーダーやヒーローを求めていると思いますが、緋村剣心の中に、時代が求めているヒーロー像を描こうとしたのでしょうか?

大友監督:現場の合言葉はマーベルに負けない日本発のヒーローを生み出そう!でした。ヒーローを作るのは本当に大変だけど、でもかっこいいでしょ?僕は不器用でも戦っている人が大好きなんだよね!剣心は新しい時代に刀を捨てきれないけれど、もう人を殺したくないという矛盾した気持ちと葛藤しながら必死に戦っている。それがヒーローと呼べる条件でもあるかなと思っています。

●質疑応答

Q:印象に残っている裏話はありますか?

大友監督:佐藤さんは本当に暇があればアクションの練習をしていました。でも一回だけ、けがをしちゃって…。怒られる!と思ったけど、練習が足りないからけがなんかしちゃって…もっと練習させてください!!って連絡くれたんです。健君自身剣心が大好きで、剣心を裏切れないと勝負をかけて挑んでいる姿に本当に心打たれましたね。彼はアクションがかっこ悪かったら役者をやめるとまで言ってくれて…。監督冥利につきますよ。幸せです。

Q:漫画原作の映画化ということで譲れなかった点は?

大友監督:生身のアクションです。ただのアクションではない、芝居としてのアクションにこだわりましたね。役者さんには苦労をかけたなーとしみじみ思います。(笑)

Q:原作との違いや忠実な点など、意識されたことはありますか?

大友監督:原作のコンセプトは活かしたいと思って作りました。ただ、全部忠実に作ったところでどうしても無理がでてきてしまう。約2時間という時間に収めるためにもキャラクターを減らしたり、素材をかえてみたり、ぎりぎりまで調整していった感じです
役者とキャラクター、双方仲良くしてね!!と思っています。

●最後に大友監督からメッセージをいただきました。

大友監督:時代劇としてではなく、日本にないアクションエンターテイメントを目指しました。細かい点を工夫してチャレンジしながら作りました。そのディテールにも注目していただけると嬉しいです。是非、応援してください!

●上映終了後のイベントということだけあって、場内は大友監督の登場に拍手喝采の大歓迎!質疑応答もヒートアップし、他では聞けない貴重な撮影裏話も盛りだくさんで、場内は異常な盛り上がりに。また、本日の試写会は先日行われた完成披露試写会に続いて2回目、ということで、会場に集まった人々は数少ない試写会のチャンスを得たばかりでなく、大友監督のティーチイン付き試写会という貴重な時間をおおいに楽しんだようだ。