このたび8月11日より、『桐島、部活やめるってよ』が公開になります。既にマスコミ試写では「今年の邦画No.1!」と絶賛する声も多く、話題騒然、この夏、最も見逃せない作品です。

本作の監督は、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』以来、数々の話題作を送り出して来た吉田大八。早稲田大学卒で伝説の映画サークル「ひぐらし」の出身である。また、本作でプロデューサーとしてデビューした弱冠26歳の若手プロデューサー枝見洋子も早稲田大学卒。さらに、原作者の朝井リョウは、早稲田大学在学中に、この『桐島、部活やめるってよ』で、第22回小説すばる新人賞を受賞。今年、早稲田を卒業したばかり。

偶然にも、早稲田大学に縁ある3人が作り上げた本作の公開を記念して、2006年以来、早稲田生5万人を対象にした「映画・映像制作人材育成の新教育システム」や全学共通副専攻「映画・映像」で、未来の映画人育成に本気で取り組みつづけてきた早稲田大学とのジョイント企画が実現。安藤紘平早稲田大学教授の全学共通副専攻「映画・映像」特別講座として、早稲田大学の学生に向けて大隈講堂での特別試写会を実施。上映後に吉田大八監督、枝見洋子プロデューサーが登壇、さらには原作者・朝井リョウも飛び入りし、ティーチインを行った。

程 7月3日(火)19:00〜20:00
登壇者  吉田大八 監督(早稲田大学第一文学部卒業、在学中は映画サークル「ひぐらし」に在籍)
枝見洋子プロデューサー(早稲田大学第一文学部卒業、本作で映画プロデューサーデビュー)
安藤紘平(早稲田大学理工学術院基幹理工学部表現工学科教授、映画監督)
原作者・朝井リョウ(早稲田大学文学構想学部卒業)
場所 早稲田大学 大隈大講堂

この日は雨模様にも関わらず、1000人は収容できる大隈講堂が、なんと2階席までぎっしりの大入り満員。主催者の早稲田大学安藤紘平教授も驚くほどの熱気の中で映画の上映は始まった。時折り起こる爆笑!そして場内の空気はどんどん張りつめ、視線はスクリーンに集中!感動のグランドフィナーレの後、主題歌・高橋優が歌う『陽はまた昇る』が流れ、エンドクレジットが終わると場内には拍手が巻き起こり熱〜い試写会になった。

そして上映後のティーチインが、安藤教授の「僕はこの映画がとーっても好きで、皆に見せたくて企画したんです」という言葉でスタート。吉田大八監督と枝見洋子プロデューサーが登壇。企画のきっかけは、「2010年2月に小説が発売されたときにTVでその紹介を見て、そのあと本屋で平積みされてたので読んだらすごく面白くて。映像で見てみたいと思うシーンがあったので、すぐ企画書を書いたんです。それから1ヶ月もしないうちに日本テレビの佐藤貴博プロデューサーが手を差しのべてくれて」と枝見プロデューサー。吉田監督は、モノローグの5章によるオムニバス仕立ての原作から大胆な変更をした理由を「やり方にもよるけどモノローグは映画ではやりづらい。ただ原作の、視点によって同じ風景も違って見えてくるというのはやりたくて、“金曜日”を繰り返すという脚本になっていった」と説明。その話の途中で、原作者の朝井リョウさんが到着!

今年早稲田大学を卒業し、一般企業に就職した朝井さん。残業があったら来られなかった、というこのイベントに、何とかセーフで間に合った。「会社を飛び出してきました!」という身近な“先輩”朝井さんの登場にさらに客席は盛り上がり。映画の感想を問われた朝井さんは「親バカ発言になっちゃうんですけど、すっごく良かった。中には映画化されても不幸に終わっちゃうものもあるのに、小説の核だけがっちり残してくれて、あとはがらっと映画にしてくれて大満足です!」。

このあとは安藤教授のリードで、「不在の桐島を中心に置く面白さ」という話題に。桐島が不在だからこそ、演じる俳優たちも、自分の想像力で何かを加えて“自分固有の桐島”をつくって演技をする、それがとても面白い新しい表現になっている、という安藤教授の分析に、登壇者も観客も大いに頷いていた。

後半は客席から質問や感想も。原作も大好きだという学生からは、「原作ファンとしても良かった。神木隆之介さんが映画部の前田って大丈夫かなと思ったけど、見終わったら素晴らしいと思った」。「完成披露で見て、その後原作読んで、それで今日、映画は2回目」という女子学生は、「映画と小説、おんなじヒリヒリを3回感じてます」。さらに今日は一般にも開放された特別講座という事で参加した高校2年の女子が「高校生の私から見てもリアルだった」と感想を述べた後「学校で運動部なんですけど、映像が好き。将来、映像にすすみたいけど、いまの私がやるべき事は?」と相談。吉田監督が「僕も高校時代は映画なんてほとんど見なかったんだから。今の気持ちに正直になればいいんじゃないかな」とアドバイスした後、今度は、枝見プロデューサー。「好きなものを追求していけば、きっと将来に繋がるって私は信じてます。私はそれで早稲田の映像・演劇に進みました」と話した最後に、「でも、大学で学んだ事で、今役に立っている事って記憶にないんですけどね(笑)」と言いつつも、「好きなものを一緒に追いかける仲間に出会うことができました」と充実した早稲田大学での4年間を振り返り、大盛況のうちに特別講座が終了した。

観客に配られたアンケート集計では、映像の仕事にすすみたい、と○をつけた学生の多くが、映画部・前田に「共感する」という解答。若い世代の圧倒的な支持を得て、『桐島、部活やめるってよ』の公開までの快進撃にさらに期待が高まった。