の度、6月9日(土)より大ヒット公開中の映画『シグナル〜月曜日のルカ〜』で、本作の監督を務めた谷口正晃監督と大林宣彦監督との対談イベントを行いました。大林監督の代表作といえば『時をかける少女』。谷口監督は、同作を仲里依紗主演でその名作に新たな息吹を吹き込みました。まだ演技経験が浅い女優さんの演出について、そして映画そのものの魅力、映画愛についてを熱く語っていただきました。

●谷口監督作品の魅力について。映画つくりにおいて大事にしていること—。
大林監督:ふつうは自分が撮った作品をリメイクされるのは嫌なもんなんだけど・・、奥さんと二人で谷口監督が撮った『時をかける少女』を観て泣いてしまいました。谷口監督は古い映画に対してきちんと敬意をもっていて、その上で自分の個性をだしている素晴らしい監督です。『シグナル〜月曜日のルカ〜』がまさにそうだと思います。この映画は古い映画館のお話、フィルム時代の恋、デジタル時代の恋を描いていて、谷口監督らしい作品ですね。

谷口監督:大林監督に、この先映画をやるなら、何かひとつでもこだわりを持った方がいい、と言われたのがとても強く残っていました。そういう意味でこういった作品を撮らせて頂けたことは、映画の神様の存在を感じましたね。
大林監督:僕も映画の先輩から教えてもらったんです。温故知新という言葉が、映画という「創造」の世界において大切なんだと思います。

●大林監督の新作『この空の花』の現場を訪れて—。
谷口監督:僕が昨年、新潟で撮影した時、ちょううど大林監督も新作の撮影のタイミングで、現場にお邪魔させていただきました。先日映画を拝見させていただきましたが、大林監督の撮られる映画はどんどん若返っていかれますよね。
大林監督:よく海外に方に、どうしてあなたみたいな老人が、こんな若々しい映画を撮られるかと聞かれますね。それに対して、僕は、「ベテランの老人だからね!」と答えるんです。

●役者の魅力を最大限引き出す秘訣とは—。
谷口監督:今回の主演の三根さんは演技が初体験だったので、撮影前に1か月間リハーサルをしました。演技する、ということは恥ずかしさが伴うものだと思うのですが、それを取り払うことから始めました。今回、新人の役者さんだからこその切実なものがスクリーンに映っていると思います。彼女はすごく強い目を持っています。

大林監督:実は演技させる方が恥ずかしいんですよね。新人の女優さんというのは、手垢がついていないんですだから自分だけの恋人になるんですよね。惚れなければ映画は撮れない。この子のために死ねる、というくらいの覚悟をもって挑めば、ちゃんと女優さんはそれに対して応えてくれる。映画というのは恋の記憶だと思っています。その一種の「秘密」を発見できることが映画を観る楽しみでもあると思います。他の人では見つけられない部分、自分だけが見出した魅力を撮るという意味で、僕は『時をかける少女』ではその部分をしっかり映し出せたと思います。世の中の男性が嫉妬するくらいの魅力を引き出す、ということが映画を撮る醍醐味ですよね。