リーマンショックを乗り越え、今を懸命に生きようとしている日系ブラジル人の若者たちを追った「孤独なツバメたち〜デカセギの子どもに生まれて」が新宿・K’s cinemaにて公開を迎えました。
公開初日となる5月25日、朝の上映にも関わらず老若男女とわず幅広い年齢層の観客がつめかけました。

—本作が作られた経緯について
2008年、かつて日本人がブラジルに渡って100年、日伯交流100年の記念の年に、TVの取材で日系ブラジル人が多く住む静岡県の浜松に行き、浜松学院大学の津村公博教授が夜の浜松の町で日系ブラジル人の子どもたちに声かけをして調査をしているところに同行したのがきっかけです。そこで出会った青年たちがとても生き生きとしていて魅力的で、津村教授に共同監督していただき「ドキュメンタリー映画を撮ろう」という話になりました。しかし1ヶ月もたたないうちにリーマンショックがおこり、半年間の間に追いかけていた子たちの5人のうち4人がブラジルに帰ることになってしまって、仕事が無くなってしまった子や友人・恋人との別れなどいろんなドラマがありました。でもそれだけで終わってしまってはいけないと思って、1年半後、ブラジルで生活する彼らの元をたずね、この作品が出来上がったという感じです。
彼らはデカセギという悪条件で苛酷な状況に置かれていても生き生きとして前向きで、子どもの頃から自分のことよりも家族のために生きるということを求められて来た子どもたちです。でも彼らはみんな言ってますが、「デカセギに来たことを後悔してはいない」と。デカセギに来て辛い思いをしたからこそ、強く生きられるようになったと言うんですね。マイナスのことをプラスに転じて自分の生きる力にするというところが私はすごくすてきだなぁと感じていて、今の日本の若い人たちも学ぶところがあるんじゃないかなと思っています。

———「孤独なツバメたち」というタイトルについて
渡り鳥のツバメのように日本とブラジルを行ったり来たりして幼いときから育っている子どもたちなので、どこでも適応できるし、どこでも生きられるんだけれども、どこにも居場所がない。そういう矛盾を抱えた人たちです。その生き方は私からすると半分憧れがあるんですが、どこの国でも自由にくらせる強さとその反面ホームを求めている姿に人間としての魅力を感じて、このタイトルをつけました。

なお、出演者たちの今についても報告された。ブラジルで暮している子どもたちは、働きながら大学進学を目指している者もいれば、妻子を得たものの、日本とほとんど物価が変わらないブラジルでの賃金格差から再び日本に「デカセギ」として自ら戻ってきた青年もいて、デカセギが繰り返されている状況である。
なお、上映期間中、中村監督とゲストによるトークショーが行われる予定。詳細は公式HP:http://www.lonelyswallows.comをご覧下さい。