このたび、7月14日より公開される長編動画『毎日がアルツハイマー』の完成披露試写会が、5月25日(金)、スペースFS汐留にて開催されました。映画の上映後には、関口祐加監督と、元NHK福祉ネットワーク・キャスターの町永俊雄氏によるトークショーが行われ、本作や、アルツハイマー型認知症についてのトークが行われました。

町永「私もこんなおじさんですが、人間って素晴らしいな、と素直に思いましたね。」
関口「2年半にわたって母の姿を動画で発表してきたんですけど、それを1本にまとめるということで、この日を迎えられて本当にうれしいです。ありがとうございました。」

ここで、本作に出演している遠藤英俊先生 (国立長寿医療研究センター・内科総合診療部長)と、新井平伊先生 (順天堂大学院 教授)から送られたメッセージの上映が行われました。

(以下、ビデオメッセージの抜粋)
遠藤「認知症の方の家族は、病気になって医師から診断されたときに、普通の家庭の場合はパニックになったり、混乱したり、本当に困って、大騒ぎしたりということが多いんです。
そんな中で、この映画は、日常の、認知症の方の、ありのままの姿のドキュメンタリーであり、そして泣きがあったり、笑いがあったりという、その生活の中で、ぼくたち医療者や介護職・看護職が、なかなか普段見ることができない姿というものを、映像を通して教えてくれるんだろうなと思います。こういった映画を通してぼくたちが学ぶことはすごく多く、本当にいい映画ができたと思っています。ぜひ、多くの医療関係者の方、介護職の方、家族の方、多くの方に見て頂いて、この映画を通じて認知症のことを知って、そしてどうみんなで支えていくかという事が分かる、見せてもらえるといいなと思っております。」

新井「実は、私はいままでに数多くのアルツハイマー病、認知症の映画やテレビドラマを見たことがありますし、
監修を頼まれたこともありましたが、それらと全然違う、今回の映画には非常に感激して、ぜひ皆さんにも観て頂きたいと思っています。何が違うかというと、いままでのものは全てフィクションなので、大きく2つの点が違うと思います。1つは1年や2年で病気がそんなに進行するわけがないこと、それから、そんなに短い期間で人間が簡単に崩れていく訳ではないことです。この点、今回のドキュメンタリーでは、見事に現実ををうつしています。このようにアルツハイマー病になっても、人間は決して崩れていくものではなくて、ほとんどの機能が残っている。
そして病気と闘いながら日々の苦しみの中で人生を送っている。そんな姿がこのドキュメンタリーで見事にうつされています。私は医学者としてこのドラマが、アルツハイマー病の理解に大きく役立つものと確信していますので、できるだけ多くの方にこの映画を見てほしいと心から祈っております。」(抜粋終了)

町永「お母様のことを映画にしようと思った理由は?」
関口「私は認知症になった母が好きなんですね。つまり、アルツハイマーになる前の母ってすごく真面目でかたくて口うるさくって、いつも怒られてきたんですね。でもアルツハイマーになってからは、すごく性格がさばけて、良いなと思って。ドキュメンタリーの監督っていつも魅力的な被写体を探しているんだと思うんですね、灯台下暗しだったんですけど、ここにすごい被写体がいるみたいな、そういうノリでした。」

関口「大事なのは助けを求める、カミングアウトすることですよね。アルハイマーの母をもっていることをぜんぜん恥ずかしいと思っていないので、でも出来ないことはあるので、助けてほしいと。介護の問題は介護する側の問題、ひとえに私たちの問題で、私たちのやり方ひとつですべてが変わる。一番苦しいのはやっぱり母なんじゃないのかな?という思いの寄せ方だと思います。」

町永「『毎日がアルツハイマー』を撮って、監督は何を感じたでしょうか?」
関口「母を見ていてつくづく感じたのは、アルツハイマーになったからといって人生不幸せなんだろうか、ということ。もうひとつはアルツハイマーじゃないからといって人生幸せなんだろうか。という人生について深く考えさせられましたね。」
町永「今のこの社会って生きづらいんです。そういった、自分らしく生きることが難しい世の中で、もしかしたらアルツハイマーの人たちはね、」
関口「そこにたどり着いたかもしれませんよね。」