常に革新的な表現を生み出し、エンターテインメント作品のスタイルに多大な影響を及ぼす堤幸彦監督の最新作『MY HOUSE』。この度、そういった手法を封印し、社会派でモノクロな作品に挑んだ堤監督と、本作の原作者であり、早稲田大学理工学部建築学科卒業後、「0円」で建てる家を提唱し注目を集める建築家/作家の坂口恭平が登壇し、早稲田大学にてティーチインを行いました。映画を見終わった学生や一般の方から直に感想を伝えられ、率直な質問や目からウロコなお話も多く飛び出しました。「何が自由で何が不自由なのか」物にあふれた暮らしの中で“本当に必要なもの”は何か、本作のテーマについても深く掘り下げ、特にこれから社会へと出ていく学生の方々にとっては刺激的で新たな可能性の広がる時間になったのではないかと思います。「家や家族、仕事、人とのつながり」について考える事も多くなった今。本作を通し、それぞれの価値観の違いや多様化する現代の生活について様々な意見が上がりました。

日時:5月8日(火)
場所:早稲田大学 小野記念講堂 (新宿区西早稲田1-6-1)

堤幸彦監督

(坂口さんの)AERAの記事がきっかけで、坂口さんに案内してもらって(映画のモデルになった)鈴木さんの“家”にいったのがこの作品をつくる出発点でした。5年紆余曲折があったけれど今日ご覧いただいてうれしく思っています。もともと社会問題には興味はありました。今までエンタメ色の強い作品をつくってきたけれど、50歳を過ぎて墓場にもっていける作品をつくらなければならない。つくりたいと思ってこの作品をつくりました。≪演出で気を付けたことは?≫白黒の作品にするというのは始めからきめていたので撮影段階からチェックも白黒でしていました。あとは名古屋で撮影したことです。ほぼ初めてのスタッフだったので1から説明しながらやることによって、初めて監督をやる気持ちで出来ました。

≪鈴木さんが「幸福だ」といっていたことをうけて。幸福ですか?≫まだ幸福ではありません。作品を作ったらつくったで結果が気になって安心できず、不安な事ばかりです。いつかその瞬間の為に作品を作り続けることが後々になって幸福と思えるんだと思います。

坂口恭平(原作者)

本を発売する前に監督から連絡頂きました。もともと映画にしたいと思っていて自分で撮ろうと思っていたんですよ。堤監督からオファーがきたのでびっくりしました。(堤監督に)おんぶにだっこでした。

堤監督と色々話してディテールを大切してもらいました。一人の為に家をつくるより、何億人もの人にみせたい。(皆に反対されたけれど)早稲田の一人先生が応援してくれて、自分の作った家は映画で出そうと決めた。法隆寺のように敷石の上に木がのっているような家を建てたい。そして、この作品では“家”のデザインからかいています。